独習のライティング 


英語の4技能(リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング)のうち、最も難しいのはライティングだと思います。英語を話すことには抵抗のない人も、英語を書くとなると抵抗を感じてしまう場合が少なくないようです。相手を目の前にしたスピーキングの場合は、多少くだけた言い方でもコミュニケーションが成立するのに対して、文字だけでこちらの意図を伝えなければならないライティングではそうした曖昧さが許されないため、同じアウトプット型の技能であっても抵抗を感じる人が多くなるのだと思います。日本語であっても、簡潔で読みやく理論的な文章を書くのは簡単なことではありません。これが英語ならばなおさらです。ライティングの学習を始めるのは、充分なボキャブラリーを習得して大量のリーディングをこなしてからでも遅くはありません。英語学習に余裕が出てきたら、ライティングにも挑戦してみてください。


 まずは和文英訳から

ライティングを独習する場合、何から始めればいいのか迷うかもしれません。英語で日記を書くことを勧める人もいますが、自分の考えをいきなり英語で書くのは、英文を書きなれていない人にとってはかなり高いハードルに感じられるかもしれません。ここでは、和文英訳から始めることをお勧めします。訳すべき文章が最初にあるというのは、やはり安心します。和文英訳で充分にトレーニングしてから、英語の日記やエッセイを書き始めても遅くはありません。

和文英訳を行う際のソースについてですが、これは自分の興味のあるものでかまいません。たとえば、大学受験用の英作文の問題集でもいいし、自分の好きな作家の小説でもかまいません。とにかく最初は、英語を書くという行為に慣れることが大事です。自分の場合は、そのときたまたま読んでいた阿刀田高の短編小説の英訳から始めました。いろいろと頭をひねりながらヘタクソな英文を書いたのですが、1つの短編を訳し終わったときには何とも言えない達成感がありました。そのときに初めて、ライティングはなんて楽しい作業なんだろうと感じました。

とにかく、まずは自分の手で英文を書いてみることです。最初からきれいな英文を書く必要はないし、書けるはずもありません。積極的に多くの英文を書いているうちに、自然と洗練された英文が書けるようになってきます。英文を書くという作業は、実際にやってみると意外に楽しいものだということがわかると思います。まずは、その楽しさがわかるまでライティングを続けてみてください。


 ライティング学習はパソコンで

ライティングの学習を始める場合は、パソコンを使うことをお勧めします。もちろん、辞書と文法書を参照しながらノートに英文を手書きしてもかまわないのですが、この方法だと辞書とノートを行ったりきたりする余分な時間がかかってしまうため、できればパソコンを利用したほうが能率は上がります。英文法を詳しく解説したサイトやお気に入りのWeb辞書をブラウザで開き、必要に応じてそれを参照しながらテキストエディターなどに英文を書いていく方法であれば、必要な情報はすべて1つの画面上で参照できるため、辞書や文法書とノートを往復する時間を短縮することができます。実際に試してみるとわかりますが、手書きによるライティングというのは意外に面倒なものです。こうした煩わしさをパソコンによって少しでも軽減することで、ライティングの学習意欲を高めることができます。

また、手書きの文章よりもパソコンで入力した文章のほうが上手に見えるという効果もあります。よく見るとヘタクソな文章であっても、パソコンの画面から入力された文章はなんだかそれなりに見えるものです。これをヘタクソな手書きの文字で書いてしまうと、実際の内容以上にヘタクソに見えてしまうため、ライティングに対する意欲がなくなってしまうことも考えられます。細かいことのようですが、こうした見た目というのも、学習を続けていく上では意外に重要な要素になります。


 表現に迷ったらとにかくググる

ライティング学習で一番頼りになるのは、実は辞書でも文法書でもなく、Googleなどの検索エンジンです。もちろん、わからない単語や正しい文法を調べるために辞書や文法書は必要ですが、実際の用例はあまり載っていません。実際の用例を参照するには、ネット上に公開されている大量の英文をググるのが一番効果的で確実な方法です。

たとえば、「カード1枚あたりに保存できる画像数は、 カメラの機種および被写体の必要メモリー量によって異なります」という文章を訳す場合を考えてみます。この場合、「画像数」は "the number of images" だとすぐに浮かびますが、「カード1枚あたりに保存できる」の部分は、
"can be saved to a card" なのか "can be saved in a card" なのか "can be saved on a card" なのか迷います。早速それぞれの表現をググってみると、"can be saved to a card" が一番多くヒットしました。どうやら、カードに保存する場合の前置詞には "to" を使うのが一般的なようなので、ここではこの表現を採用することにします。

同じように、「メモリー量」も "memory amount" なのか "amount of memory" なのかで迷います。そこでこれらの表現をググると、"amount of memory" のほうがヒット数が多いため、こちらのほうが一般的な表現だということがわかります。しかしこの場合は、"amount" に冠詞を付ける必要があるのかどうかでまた迷います。そこで、"by amount of memory" と "by an amount of memory" と "by the amount of memory" でそれぞれ検索すると、一番ヒット数の多かった "by the amount of memory" が最も一般的な表現だということがわかります。

ただし、検索結果のヒット数をそのまま信用してはいけない場合もあります。たとえば、2つの検索語のヒット数がそれぞれ1,000件と10,000件だった場合でも、そのまま10,000件のほうを選択してはまずいことがあります。それぞれのページを最後まで確認してみると、実際のヒット数は100件と50件だったりすることがよくあるからです。ヒット数が数十万件などの大きな数字の場合は、その数字をそのまま信用しても問題ありませんが、10,000件以下の小さな数字の場合は、安易に大きな数字のほうを選択することは危険です。こうした小さなヒット数の場合は、とりあえず最初の数ページを確認したほうが安全です。

こうした要領で、迷ったときにはそれぞれの表現をネット上で検索してヒット数の多い表現を採用した結果、"The number of images that can be saved to one card varies depending on the model of a camera and the amount of memory required for a subject" のような英文になりました。この方法であれば、それほどおかしな文章になることはありません。自分が仕事で和文を英訳する場合も、この方法で作業をしています。仕事中に文法書を参照することは滅多になく、もっぱらグーグル先生に頼って作業をしています。膨大な実際の用例を瞬時に探すことができる検索エンジンは、どんなに優れた文法書よりもはるかに重宝します。表現に迷ったらとにかくググることです。


 受動態よりは能動態で

英文を書く場合は、なるべく簡潔でわかりやすい文章を書く必要があります。どんなに高度な表現を使っても、わかりにくい文章であれば読む人には伝わりません。英文を書く場合にはつい気の利いた表現を使いたくなりますが、元の文章が読みにくかったりしたら、せっかくの気の利いた表現も笑われるだけです。英語のノンネイティブが書く英文に気の利いた表現は必要ありません。まずは確実に相手に伝わる英文を書くことを心がけてください。

わかりやすい文章を書くという意味では、受動態よりも能動態を使ったほうがストレートに意味が伝わると思います。自分の場合も、受動態で書かれた英文はなんだか回りくどいような感じがしてあまり好きではないため、英文を書くときにはできるだけ能動態で書くようにしています。たとえば、「中国の四川省で大きな地震が発生し、多数の死者が出ています」といった文章の場合、"Thousands of people were killed in China's Sichuan province by a strong earthquake." ではなく、"A strong earthquake killed thousands of people in China's Sichuan province." のほうがよりストレートな文章になります。英語には無生物主語の文章が多いというのも、このあたりに理由があるのだと思います。

ただし、受動態にすることによってその行為を受けた人や物を強調したいという場合には、受動態を使ってもまったく問題はありません。受動態と能動態のどちらが適しているかは、多くの英文を読んだり書いたりすることによって自然に判断できるようになります。ライティングは、実際に学習を始めるまでが大変ですが、一度始めてしまえば、後は英文を書く量に比例して上達していきます。英文を書く際は、自分が読み手の立場になってわかりやすい文章を書くように心がけることが大事です。




 ライティング独習の心得

 まずは和文英訳から始めるべし
 読み手の立場になって、簡潔でわかりやすい英文を書くべし
 表現に迷ったら、迷わずグーグル先生に相談すべし


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