18/01/14

傍聴メモより

去年の話になるが、年末は27日から休みに入った。なので、世間一般の企業と比べて2日ほど早い仕事納めということになる。カレンダーの並びがいい年は、クリスマスから年末年始の休みに入ることもあったりして、いろいろと問題の多い会社ではあるけれど、勤務形態が思い切り緩いことと、年末の休みに入るのが早いということが、数少ないメリットではある。



連休初日の27日は、いつものように一日がかりで大掃除をした。28日は、ほとんどの企業が仕事納めを迎える日なので、役所などの公的な機関も同じように仕事納めだろうと思い、久しぶりに千葉地裁に出かけることにした。仕事納めの日の裁判所というのは、いったいどんな様子なのか、興味があった。文字通り年に一度のチャンスなので、この機会を逃す手はない。

千葉地裁に着いて刑事裁判が行われる8階に上がってみると、清掃をしているおばさん以外にはまったく人気がなく、閑散としている。フロアを一周してその日の公判予定を確認したところ、たったの1件しか予定されていない。ならば7階はどうかと考えて7階に下り、一通りチェックしてみたのだが、わずかに5件ほどの公判が予定されているだけだ。

ならば、民事裁判のフロアも確認しようかと思ったが、この調子では民事裁判も同じことだろうと考え、少ない刑事裁判でなんとかやりくりすることにした。最初に行われるのは、道路交通法違反の裁判だ。道路交通法違反の裁判なんて、普段は見向きもしないのだが、今日ばかりはほかに傍聴すべき裁判もないので、選択の余地がない。

傍聴室に入ると、何人かの女子中学生が傍聴席に座っている。社会科見学として傍聴に来ているのだろうが、おそらくはせっかく初めて傍聴するのだろうから、もっと派手な裁判を傍聴させてあげたかった。まあ、千葉地裁は田舎の裁判所だから、東京地裁のように派手な裁判は少ないけれど、強盗殺人などの派手な裁判もたまにはあるので、そういう裁判に当たればラッキーだったのに。

被告席には、スーツ姿の若い男子が座っている。スーツ姿で出廷するということは、拘置所から移送されたわけではなく、自宅から出廷したということだろう。拘置所から出廷する場合は、原則としてスーツを着ることは認められておらず、スエットやジャージなどを着て裁判を受けることになる。これは、ベルトやネクタイなどが自殺の道具として使われることを防ぐためだ。

この男子の場合、逮捕→拘留→起訴→裁判という通常の流れではなく、取り調べを受けてから一旦解放され、裁判が始まるまでの間は自宅で待機していたということだろう。道路交通法違反などの軽微な罪の場合は、いちいち拘留なんてしないのが普通なのだろう。それにしても、拘留の必要がないほどの微罪なのに、わざわざ裁判をするというのは、いったいどんなケースなのだろうか。

そんなことを考えながら傍聴していると、だいたいの内容がつかめてきた。この23歳の男子は、以前に一度無免許運転で捕まったことがあり、その後免許を取得したが、今度はスピード違反で捕まった。無免許運転の前歴があったため、一発で免許取り消しとなったが、その後も免許を取り直すことなく運転を続けていたところを捕まったということらしい。

仕事は介護施設の派遣社員で、最寄り駅までは自宅から徒歩40分、駅から職場までは徒歩30分、電車は1時間に1本程度ということで、通勤手段としてはクルマ以外は考えられず、どうせ見つからないだろうと考えてつい無免許運転を続けたということのようだ。まあ、それはそうだろうなと、傍聴していて思わず納得してしまったが、どうにも退屈な裁判だ。

しかし、なぜ無免許運転を続けたのかという検察官からの質問に、借金を返すために免許取得費用を抑えたかったと被告が答えたあたりで、少し興味をそそられた。聞いてみると、以前に起業したことがあり、最初は順調だったものの、共同経営者にいいようにやられて、最終的に400万円の借金を背負うことになったらしい。その借金を返すために介護施設の夜勤職員として働き、いまでは借金を完済したということだ。

この話を聞いて、いろいろな疑問が沸いてきた。現在が23歳ということは、18歳とか20歳くらいで起業したということになるが、その若さでどこから資金を調達したのだろうか。400万の借金を背負うくらいだから、それなりの規模の事業だったわけで、ある程度の資本金がなければ起業なんてできないだろう。それに、介護職の派遣社員という仕事で、短期間のうちに400万円という多額の借金を完済できるものだろうか。

検察官には、そのあたりのことを鋭く突っ込んでほしかったのだけれど、本筋とは関係ない話だからなのか、華麗にスルーされてしまった。まあ、この若い女性検察官は、自分がエレベーターに乗り合わせたときに、「何階ですか?」と優しく尋ねてくれてちょっと印象がよかったので、ぬるい突っ込みは許すことにしよう。その検察官が7階で下りたときにも、自分に向かって軽く会釈してくれたことだし。

ということで、検察からの求刑は懲役7か月ということになった。無免許ならば罰金刑が妥当だろうと思っていたので、この求刑にはちょっと驚いた。無免許程度のことでも、裁判所に呼び出されて懲役刑を求刑される可能性があるわけだ。この男子の場合、無免許の前歴があったことが大きく影響したのだろう。判決では間違いなく執行猶予が付くだろうが、けっこう厳しい求刑だなと思った。



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