17/06/04

弁当男子について語る

NHKで放送されている「サラメシ」という番組が好きで、毎週欠かさず見ている。「サラメシ」とは、「皿に盛ったメシ」のことではなくて、「サラリーマンの昼飯」という意味らしい。しかし、番組にはサラリーマンだけでなく、OLさんや自営業の人や農家の人など、さまざまな人たちが登場する。要は、働く人たちのお昼ごはんをのぞき見しようというコンセプトの番組だ。

この番組を見ていると、自分で弁当を作って職場に持参する、いわゆる「弁当男子」が登場することがあるのだが、自分で毎日弁当を作るなんて大変だなと思いながら見ている。まあ、こういうマメな人というのは、そもそも料理が好きなんだろう。そうでなければ、毎日自分のためにそこそこ見栄えのする弁当なんて作ろうとは思わない。他人のためならともかく、自分のために作るというのは、けっこうすごいことだと思う。

弁当を作る理由としては、健康のためとか節約のためとか、そういったところが主だろうが、弁当男子ってなんだか好きになれない。そんなに若いうちから健康に気を遣わなくてもいいんじゃないの、とか、そんなにチマチマと節約してどうするの、とか、ちょっと否定的に見てしまうところがある。逆の見方をすれば、若いうちから健康に気を遣って節約に励むなんて偉い、ということになるわけだけれどね。

そもそも、お昼を弁当にするくらいのことで、劇的に節約できたりするものだろうか。なんだかんだ言いながら、弁当1食分で2〜300円くらいはかかりそうな気がする。特に、一人暮らしの場合は食材を効率的に使うというのが難しいから、どうしても割高になる。つまり、スケールメリットが働かないということだ。そこそこ見栄えのする弁当を作ろうと思ったら、それなりにコストもかかる。

もちろん、普通に外食するよりは安いけれど、立ち食いソバや牛丼みたいなファストフードなら、弁当と同じかそれよりも少し高いくらいの値段で食べられる。毎日弁当を作る手間を考えれば、お手軽なメニューで外食する方が安いとさえ言える。そんなメニューを毎日食べるなんて健康に悪い、なんて声も聞こえてきそうだが、毎日そんなものを食べている自分はいたって健康なので、おそらく大した問題ではない。

それと、自作弁当にはときめきがないとうのが最大の問題点だと思う。弁当の一番の楽しみは、今日はどんな弁当だろうかとワクワクしながら蓋を開ける瞬間だろう。これが自作弁当となると、何が入っているかはすでに知っているわけだから、蓋を開ける瞬間のときめきなんてまったくない。この点だけでも、弁当なんて自分で作るもんじゃないという結論になる。

また、弁当を持参すると、自席に縛りつられてしまうというのも問題だと思う。もちろん、弁当を持って外に出かけ、気持ちのいい公園のベンチで食べるという方法もあるけれど、会社の近くにそんな恵まれた環境があるというケースはなかなかないだろう。ホームレスが昼寝をしているような小さな公園くらいはあるかもしれないが、ホームレスを横目に弁当を食べても、あまり美味くはないだろう。

一日中パソコンに向かって仕事をしているという場合であれば、お昼くらいは外にでて気分転換をしたいと考えるのが普通だと思うが、弁当を持参するとそういうわけにもいかない。弁当を職場に持ち込んだ時点で、かなりの確率で一日中自席に縛り付けられるということになるわけだ。そんなの全然かまわないという人であれば問題はないけれど、弁当のせいで貴重な気分転換の機会を逃しているような気がしてならない。

などと弁当男子のことをディスってみたけれど、実は自分も一時期弁当男子だった経験がある。あれは30歳くらいの頃だったと思うが、当時はフリーのSEとしてIBMの箱崎事業所に通っていた。この職場では、自分のほかにも何人かのSEがIBMに派遣されていて、IBMの社員と一緒にチームとして仕事をしていた。全員で十数名くらいはいたと思う。

最初のうちは、お昼になると何人かで連れ立って社食に行っていたが、特に気の合う人もいなかったので、付き合いでメシを食べるのが苦痛になり、弁当を持参することにした。外出するという方法もあったけれど、箱崎には何千人もの人が働いていて、昼休みになるとその人たちが一斉にエレーベーターに向かうので、なかなかエレベーターは来ないし、来たら来たで混んでいるしで、エレーベーターに乗るのがかなりストレスだった。

ということで、弁当を持参することにしたわけだ。自分は冷めたご飯は大嫌いなので、普通の弁当箱ではなく、ランチジャーを買った。とはいっても、工事現場の人たちが食べるようなデカいヤツではなくて、かなり可愛らしいサイズのジャーだ。毎朝ご飯を炊いて、朝飯を食べてから、余ったご飯をジャーに詰めて職場に出かけていた。

もちろん、料理なんて全然できないし好きでもないから、簡単なものしか作れない。赤いウインナー、卵焼き、キュウリの浅漬け、ほうれん草のおひたし、といったおかずを毎日のように弁当箱に詰めていた。とりあえず、赤、黄色、緑という3色が揃っていれば、おかず自体は貧相でも、パッと見だけはそこそこ華やかになるかなと考えたのだ。

弁当男子としての生活は1年くらいは続いたと思う。実は、けっこう楽しかったりしたのだけれど、いまさら弁当男子に戻りたいとは思わない。いまは、立ち食いソバや牛丼などを軸にしながら、100円ローソンで税込108円のカップ麺を買って、ホームレスが昼寝をしている公園でカップ麺をすすることもある。低所得のサラリーマンの昼飯なんて、こんな感じで十分だ。



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