17/03/12

接客業って大変

仙台にあるラーメン二郎がツイッターで客のことを罵倒した件で、ネットはなかなか盛り上がっているようだ。事の経緯を知らないよい子のために簡単に説明すると、初めて来店した客が大盛りの全マシを注文したため、店員が「初めての場合は小の方がいい」と再三注意したにもかかわらず無視され、あげくには半分以上残して「こんなの食えるわけねーよ」と捨て台詞を吐いたので、それにキレてツイッターで罵倒したという流れだ。

この件について、ネットでは意見が分かれているようで、再三注意されたにもかかわらず悪態をついて残してしまう無礼な客の方が悪いという意見もあれば、お金を払っている以上は、自分が注文したラーメンをどうしようが自分の勝手だという意見もあって、まあ、どちらの意見にも一理あるわけで、どちらか一方が一義的に善で、どちらか一方が一義的に悪であると断定することはできない。

個人的な意見としては、半分以上残したあげくに悪態をついたこの客はたしかにクソ野郎だと思うし、このクソ野郎に対応した店員さんも相当頭にきたのだろうとは思うけれど、やっぱりツイッターで客のことを罵倒するのはよくないんじゃないだろうか。いまは、一般人が独り言のつもりでつぶやいた一言が、次の日にはいきなり全国的なニュースになってしまう時代だ。油断したらいけない。

自分にも何度も経験があるけれど、頭にきたときには、その気持ちをすぐに出したりしてはいけない。感情のままにものを言ったり書いたりすると、ほとんどの場合は後悔することになる。それができれば苦労はしないと言われそうだが、少し時間をおくだけで、怒りというものはけっこうおさまる。それでもおさまらない場合は、なるべく理論的に筋道を立てて自分の怒りを相手に伝えるべきだろう。

そうはいっても、接客業の人たちは大変だと思う。なにしろ、毎日朝から晩まで笑顔で客に接しなければならない。横柄な客に対しても頭を下げなければならないし、前の晩に激しい夫婦喧嘩をしたときだって、客の前では何事もなかったかのように愛想よくふるまわなければならない。考えただけでも大変そうだ。自分だったら、たぶんストレスですぐに死んでしまうと思う。

接客業ではないけれど、宅配業者の人たちも大変だと思う。最近は、アマゾンがらみの件で宅配業界の過酷さが注目されているけれど、利用者の側が便利さばかりを求めて、実際にものを運ぶ人たちの苦労にまで考えが及んでいない。当日配送だとか、細かい時間指定だとか、そんな宅配ばかりが増えてしまえば、そりゃあ現場の人間が根を上げるのも当然だ。

何かにキレた宅配業者の人が、道路に荷物を叩き付けている動画がアップされて話題になったことがあったが、あの人もきっと、過酷な仕事にストレスがたまりまくっていたのだろう。宅配で一番困るのが、時間指定で届けたにもかかわらず、不在だった場合らしい。時間を指定しておきながら不在というのは、ちょっと頭にくるだろう。その分、ほかの荷物にもしわ寄せがいくわけだし、迷惑なことこの上ない。荷物を叩き付けたあの人も、そんな感じで怒っていたのかなと想像したりする。

それと、カーディーラーの店員が、車で店を出ていく客を見送る姿をよく見るけれど、あれも大変だなと思ってしまう。なにしろ、客の車が見えなくなるまでずっと頭を下げ続けているのだ。あんなことをされて喜ぶ客がいるのか、ちょっと疑問だ。店員としても、マニュアルでそうなっているから嫌々お辞儀をしているだけで、本心から客に感謝している人なんていないだろう。もしいたらごめんなさい。

一日中客に頭を下げ続けている接客業の人たちは、きっとものすごいストレスをため込んでいるのだと思う。もしかしたら、そういう人たちが、二郎で悪態をついた客みたいになってしまうのかもしれない。根っからの明るい性格で、まったく裏表のない接客業の人も当然いるだろうが、仕事中は愛想がよくても、私生活ではガラリと変わるという人は少なくないと思う。

自分の場合、学生の頃に雀荘と喫茶店と洋服売り場でバイトをしたことがある。接客業と呼べる仕事をしたのはそれくらいで、それ以外は、割のいい深夜のバイトとか肉体労働系のバイトばかりしていた。接客業なら素敵な出会いがあるかも、という下心があったのだが、ずっと客に頭を下げ続けるというのは思った以上にストレスになるということに気付いて、それ以来接客業は避けてきた。

最近は便利になりすぎて、お金さえ出せばその分の(あるいはそれ以上の)サービスを受けて当然だと思っている人が多いけれど、これからの時代、そういう考え方では世の中が回っていかなくなると思う。これから労働人口がどんどん減っていくなかで、待遇の悪い接客業の仕事をしてくれる人たちは貴重な存在だ。だれもやりたがらない割に合わない仕事をしてくれているわけだから、ありがたいことだ。本当におつかれさまです。



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