16/11/20

不食に対する好奇心

先々週の覚書では大食いに対するあこがれについて書いたけれど、それとは正反対の「不食」にも興味があるので、今回はそれをテーマにして書いてみる。最近は糖質制限ダイエットが流行していたり、一日一食が健康にいいと勧める医者もいたりして、なんだか食べないことが健康的みたいな風潮になっている。

つい最近までは、一日三食きちんと食べることが健康的な食生活で、一日二食とか一日一食なんていう食べ方はかえって太ってしまうなんて言われていた。それを考えると、ここ最近の風潮はものすごいパラダイムシフトだと思う。なにしろ、現役のお医者さんが自分で一日一食を実践してお勧めしているわけだから、それなりに説得力がある。まあ、中にはヤブ医者もたくさんいるけれど。

しかし、一日一食なんてまだまだぬるくて、一日の食事が青汁一杯だけなんていう人もいるらしい。もっとすごい人になると、まったく食べない人さえいるというから驚きだ。こういう人たちのことを「呼吸だけで生きている人」という意味で「ブレサリアン」と呼ぶらしい。ブレサリアンの存在を知ったのはつい最近のことだけれど、そのときは「どうせインチキだろ」と思っていた。

しかし、ちょっと調べてみると、あながちインチキでもなさそうだということがわかってきた。インドには、何十年も食べずに生きている男子がいて、実際に病院に入ってもらって15日間にわたって徹底的に監視したところ、その間は一度も食事を摂らなかったことが確認されたらしい。日本でもつい最近、俳優の榎本孝明が30日間の断食生活を送ったことで話題になった。

こういう話題に触れると、思わず「本当かよ」と眉に大量のツバをつけまくってしまうのだけれど、メシを食わないということについてウソをついたところで、その人にとっては何の得にもならないから(不食に関する本を出版してガッツリ儲ける、などのレアケースは除く)、本当なのかもしれないなとは思う。5キロのステーキをペロリと平らげる人もいるわけだから、その反対に何も食べずに生きていける人がいてもおかしくない。

いやいや、やっぱり何も食べずに生きていけるなんておかしいって。実際に餓死する人だっているわけだから、人間は食べないと生きていけない生き物なんじゃなないの? 光合成だけで生きていけるということは、植物と同じってこと? だとしたら、人間と植物を分けているものって何? ブレサリアンは植物にもなれるってこと?

そんな感じで、「かすみだけを食べて生きている」ブレサリアンが本当に存在するのかどうかについてはいまだに半信半疑だけれど、本当に何も食べずに生きていくことができれば、それはすごいことだと思う。というか、何も食べずに生きていければ、ものすごくお得だよね。根が貧乏性なので、ついお金の話になってしまうけれど、何も食べなくていいということになれば、ものすごくお得だと思う。

なにしろ、家計に占める一番大きな費用は、住宅ローンを除けば食費だろう。みんな、毎日スーパーのチラシをチェックして、1円でも安く食材をゲットしようと頑張っている。なぜなら、家計に占める食費の割合が非常に大きいからだ。家計を切り詰めようと考えたときに真っ先に頭に浮かぶのは、きっと食費だろう。それほど、食費の負担は大きい。

もし家族全員がブレサリアンになれば、食費はゼロということになる。おお、マーベラス。なんて素晴らしいんだろう。これまで毎月何万円もかかっていた食費がゼロになるのだ。あまった食費は、家族のお小遣いにあててもいいし、家族旅行の費用にあててもいい。旅行に行くとしたら、毎年かなり豪華な旅行ができるだろう。

それから、食事の準備にかかる時間も大きい。毎日当たり前のように食事を作っていると、いったいどれくらいの時間を食事の準備にかけているかということをほとんど意識しないけれど、実際には相当な時間を食事の準備にかけているはずだ。その時間がすべて自由な時間になるというのは大きい。物理的な時間だけでなく、「今日は何を作ろうか」と悩む必要がなくなるのも大きい。毎日の献立に頭を悩ませている主婦にとっては福音だ。

食事をしなくてもいいということになると、食器や調理器具にかかるお金も必要なくなる。ガスコンロを使う必要もないし、食洗機を使う必要もないし、電子レンジを使う必要もないし、オーブンを使う必要もないし、炊飯器を使う必要もないし、さらには冷蔵庫だって使う必要がない。実際の食費と、こうした調理にかかる費用と時間がすべて節約できることになる。

さらに突き詰めて考えてみると、ブレサリアンになれば、失業したときにも安心だ。なにしろ食べる必要がないわけだから、失業した場合に一番頭を悩ませる「これからどうやって食べていこうか」ということを考える必要がないということになる。おお、マーベラス。なんて素晴らしいんだろう。ブレサリアンになれば、リストラなんかにビクビクする必要はなくなる。いつでもホームレスになってやるぜ、くらいの勢いだ。

ただ、食事というのは人生における最大の楽しみの一つだから、それが丸々なくなってしまうのはちょっとどうなんだろうと思う。食事に代わる楽しみを見つけられればいいのだろうが、そう簡単に見つかるだろうか。理想としては、オンとオフのスイッチを切り替えるように、食べたいときには思いきり食べて、不食モードに入ったら食べ物の誘惑は一切はねつける、みたいなことができれば便利だ。



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