16/11/06

大食いに対するあこがれ

ママチャリで近所をポタリングしていたら、大きなサイズの洋服を専門に扱っている店が目に入った。「フォーエル」という名前らしい。大きなサイズの洋服店といえば、電車の中吊り広告でよく目にする「サカゼン」が有名だけれど、フォーエルというお店はこれまでに見たことも聞いたこともない。3Lから8Lまでのサイズの洋服が揃っているらしい。典型的なMサイズの自分としては激しく興味をそそられたので、入ってみることにした。

170センチ58キロの自分がビッグサイズ専門店なんかに入っていいものだろうかと若干ドキドキしながらドアを開けると、入り口付近にいた男女の店員さんに「いらっしゃいませ」と声をかけられてしまった。こちらとしては思い切り冷やかし目的なので、できればひっそりと行動したいのだけれど、あいにく店内に客は一人もいない。大勢のポッチャリさんで賑わっていることを期待していたので、ちょっと残念だ。

それにしても、想像していた以上にビッグサイズだ。なにしろ、マネキンの大きさからして、普通の店とはまったく違う。靴も30センチというサイズになると、ちょっと怖いくらいだ。大きなナメクジに出くわすと思わず後ずさりするけれど、まさにそんな感じ。ベルトも、縄跳びができそうなくらいに長い。ウェストが130センチのスラックスにいたっては、前衛アートかと思うくらいにシュールなシルエットだ。

そんな感じでいちいち感心しながら見ていたら、女子の店員さんに「何かお探しですか?」と声をかけられたので、なんだかあわててしまい、「いえ、すみません、大丈夫ですから」と謝ってしまった。貧相な体格の男子が、「おお、これはすげえ」などとつぶやきながら商品を見ているわけだから、単なる冷やかしなんだろうなと察してほしい。というか、冷やかしで入ってしまってスミマセン。

結局、自分が店にいる間はポッチャリさんの入店はなく、何も買わずに店を出る自分に対して、「ありがとうございました」と声をかけてくれた店員さんに対して後ろめたさを覚えただけの結果になってしまった。一人だけでもいいから、ポッチャリさんに遭遇したかった。それにしても、何をどれだけ食べればあんなにビッグサイズの服を着られるのだろうか。

自分は、YouTubeで大食いの動画を見るのがけっこう好きだったりする。とにかく、大食いユーチューバーの皆さんは気持ちいいくらいの食べっぷりで、想像を絶するようなボリュームをペロリと平らげている。しかし、そういう大食いさんには、サカゼンとかフォーエルのお世話になりそうな人はほとんどいなくて、可愛らしい女子とか普通にイケメンの男子とかが多いのが不思議だ。

こういう大食い動画を見ていると、ちょっとうらやましくなってしまう。自分は、子供の頃は小食で、それがちょっとしたコンプレックスになっていた。小学生のときは、給食を食べきれないことがよくあり、そのたびに「給食は残さず食べましょう」というスローガンのもと、クラスの女子に囲まれて泣きながら給食を食べていた。給食なんて軽くペロリと平らげるくらいになりたいといつも思っていた。

しかし、高校生くらいになると人並みには食べられるようになった。20代の頃は、吉野家に入ると大盛りを注文するのがデフォルトだったし、そば屋さんでは丼物プラスそばというセットを当たり前のように食べていた。ファミレスで日替わりランチを注文して「ライスは無料で大盛りにできます」と言われれば迷わず大盛りにしてもらっていた。なかなかの食欲ではないだろうか。

だが、残念ながら、ハンバーガーを10個食べたとか、牛丼を5杯食べたとか、そういう他人に自慢できるような実績が何もないのだ。無理矢理ひねり出すならば、中学生のときに給食で出された豚汁を調子に乗って5杯くらいおかわりをしたというのが、唯一の自慢だ。そのときは、とにかくお腹が苦しくて、午後の授業が非常に辛かったことを覚えている。

そんな感じで、自分はごく普通の食欲しか持ち合わせていないわけだが、YouTubeで大食いの動画を見るたびに、自分ももう少し大食いになれたらなあと思う。大食いユーチューバーのように、一つのものを延々と食べ続けられるようになりたいということではなく、いまよりも5割り増しくらいの量を食べられるようになったら楽しいだろうなと思っているのだ。

いまよりも5割増しくらいの量を食べることができたら、お店に入って料理を注文するときに、いままでは「これも美味しそうだから食べてみたいけど、食べた後のことを考えるとなあ」などと考えてあきらめていたものを注文できるようになるわけだ。なんだかんだ言っても、日々の生活において食事の楽しみというのは大きなウェイトを占めている。食べる量が増えれば、その分楽しみも増すということになる。

それに、食べっぷりがいい男子というのは、やっぱりカッコいいと思う。自分が女子だったら、ルックスも年収も社会的な地位もほぼ同じ男子が二人いて、食べる量だけが違う場合、どちらを選ぶかとなったら、迷わず食べっぷりのいい男子を選ぶと思う。大食いユーチューバーみたいに、異常な食欲の男子は勘弁してほしいけれど、チマチマと食べる男子よりは、豪快に食べる男子のほうがずっとカッコいい。

問題なのは、そういうカッコいい男子像から、自分自身が年々離れていってしまっているということだ。せめて、若い頃のようにデフォルトで牛丼の大盛りを注文できるくらいにはなりたいけれど、これからも食欲は落ちていく一方なんだろう。そう考えるとちょっと悲しいけれど、ウェスト130センチのスラックスを穿くことを考えたら、いまくらいの食欲でちょうどいいのかもしれない。



今週の覚書一覧へ

TOP