16/09/25

ものすごくいまさらながらに「模倣犯」を読んでみた

ものすごくいまさらだけれど、宮部みゆきの「模倣犯」を読んでみた。2001年に出版された作品で、発行部数が420万部というものすごいベストセラー作品だ。自分は、すぐにベストセラー作品に飛びつくようなタイプの人間ではないので(特に、怪しげなハウツー本や自己啓発的なビジネス書などは積極的に無視する)、この「模倣犯」についても特に読みたいとは思っていなかった。

ただ、それだけ売れるということはそれなりに面白いのだろうから、機会があれば読んでみたいとは思っていた。しかし、図書館で「模倣犯」を探しても貸出し中だったり、下巻だけ置いてあったりで、なかなか上下巻そろっているということがなかった。予約をしてまで読みたいとも思わなかったし、予約件数もすごいことになっているだろうから、積極的に予約しようとも思わなかった。

そんな感じで、「いつか機会があったら読んでもいいかなリスト」に載っていたのが「模倣犯」だったわけだけれど、この前図書館で面白そうな本を物色しているときに、たまたま「模倣犯」の上下巻がそろっていたので、借りることにした。手に取ってみると、ずっしりと重い。それもそのはずで、上下2段組で印刷された総ページ数は、上下巻合わせて1400ページ以上もある。

実際に読んでみた感想としては、たしかに面白かったけれど、ラストがイマイチしょぼいような気がした。これだけの極悪非道なことをした犯人には、それに見合うだけの精神的な苦痛を与えてほしかった。犯人をもっと精神的に追いつめてから逮捕するという流れにしてほしかった。このラストでは、それまでに積み重なってきた犯人に対する憎悪がまったく解放されず、カタルシスを感じることができない。

そういう弱点もあるけれど、全体的にはよくできていると思う。これはミステリーではあるけれど、犯人は最初からわかっているので、純粋に謎解きを楽しむといういわゆる「本格」ミステリーではなく、登場人物それぞれの心情を綿密に描写した小説で、ちょっとした純文学として読んでも充分に楽しむことができる作品だと感じた。

しかし、この小説のすごいところは、週刊誌で5年間もの長きにわたって連載されていたという点だ。ミステリーということで、最初からかなり細部にいたるまでストーリーは組み立てられていたのだろうが、これだけの長期連載になると、すでに書き終えた部分との整合性がとれなくなってしまう箇所があちこちで出てきそうな気がする。書き直すわけにはいかないから、辻褄を合わせるのが大変そうだ。

ミステリーの場合は、特にストーリー内での伏線が重要になってくるから、そうしたことにも気を配りながら書かなければならない。書き下ろし作品なら、途中であれこれいじることができるけれど、連載の場合はそうはいかない。書いてしまったものはもう直すことはできない。そういう意味で、ミステリーというジャンルは、連載には向いていないんじゃないかと思う。

読む方としても、いよいよ事件解決で種明かしという頃になると、ストーリーの途中で巧妙に仕組まれた伏線のことなんて忘れてしまっているから、「あれ、これって何のことだっけ?」みたいになってしまう。週刊誌なんて、読んだらそのままゴミ箱に直行だから、読み返して確認することもできず、モヤモヤしたままなんとなく納得するしかない。やっぱり、ミステリーは連載向きではない。

そもそも自分は、ミステリーが苦手だ。頭が悪いので、ちょっと複雑なトリックだったりすると、とたんに理解できなくなる。なにしろ、小学生に大人気の「名探偵コナン」ですら理解できないくらいだ。何度か読み返せば、なんとか納得できるくらいのレベルなので、最近の小学生は頭がいいなと感心する。それにしても、「名探偵コナン」はいろいろな面であまりにも無理やりすぎて、トリックうんぬんよりもそっちの方が面白い。

それはともかく、連載に向いているのは歴史小説だと思う。基本的には、史実にしたがってストーリーが展開していくわけだから、後戻りする必要はないし、歴史上有名な人物が主人公なら、その生涯についてある程度の知識はあるはずだから、途中で読み逃すことがあったとしても、それほど問題なく読み続けることができる。ラストの謎解きもないから、途中の伏線も気にする必要はない。

ということで、「模倣犯」についてはラストが少し(というか、かなり)残念だったけれど、十分に読み応えのある作品だった。毎日2〜3時間くらい読んでも、たっぷり2週間は楽しめるから、コストパフォーマンス的にもかなりお得だと思う。大きな活字で行間を広く取り、句点のたびに改行してページ数を稼ぐようないまどきのインチキくさいベストセラーを読むよりも、何十倍もお得だと思う。



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