16/07/24

なぜ稀勢の里は優勝できないのか

この覚書を書いている時点では、名古屋場所の結果はまだ出ていないけれど、優勝は日馬富士で間違いないだろう。稀勢の里が優勝する可能性も5パーセントくらいは残っているが、期待するだけムダだと思う。稀勢の里が豪栄道に勝ち、白鵬が日馬富士に勝てば優勝決定戦になるわけだから、稀勢の里が優勝する確率はそこそこありそうに感じるけれど、実際にはそんなことはない。

豪栄道は7勝7敗だから、どんな手を使っても勝ちたいと思っているはずだ。稀勢の里の優勝だとか、そんなことは豪栄道にとってはどうでもいいことで、なにがなんでも勝ち越したいと思っているだろう。だから、立ち合いから思い切って変化することも十分に考えられる。今場所は松鳳山に立ち合いの変化で派手に負けているから、稀勢の里としてもそのあたりのことを頭に入れておく必要がある。決して楽な相撲にはならないだろう。

一方、白鵬にとって今日の取り組みはまさに消化試合みたいなものだから、まったくモチベーションが上がらない。親指を痛めているらしいから、おそらく無理はしないだろう。頑張って勝っても意味がないとなれば、多少手を抜くのが人情というものだ。決して八百長というわけではないが、なんかやる気でないし、無理して勝っても意味ないし、みたいな感じの相撲になるだろう。

ということで、今場所も稀勢の里が優勝するのはきわめて難しい。そもそも、13日目の日馬富士との直接対決に負けた時点で、優勝の目はなくなったといってもいい。優勝を争っている相手に負けて、優勝できるわけがない。今場所に限らず、先場所も13日目に全勝同士で白鵬と対戦して負けたし、その前の場所も白鵬に11日目に全勝をストップされて優勝を逃している。

稀勢の里に関しては、こんなパターンばかりだ。ここは絶対に勝たなければいけないという重要な一番を、ほぼ間違いなく落とすというのが稀勢の里なのだ。その代わり、だれも期待していないようなところで鬼のような強さを見せたりすることもある。どうしてその強さをここ一番というときに発揮できないのかと、毎度ながら本当に歯がゆく思ってしまう。

今場所も、日馬富士との直接対決に負けたときに、「明日の白鵬戦はきっと勝つだろう」と思っていたら、そのとおりになった。このあたりのチグハグさが、いかにもキセノンらしい。予想としては、白鵬には圧倒的な勝ち方をするだろうと思っていたのだが、実際には土俵際での突き落としという際どい勝ち方になったが、それでも勝ちは勝ちだ。この土俵際での突き落としは、キセノンの得意技といってもいいだろう。

実力的には十分強いと思うし、優勝できるチャンスも何度もあったのに、結局一度も優勝できていないということは、結局は弱いということになる。とにかく、ここ一番で勝てないというのが致命的だ。白鵬にしろ日馬富士にしろ、ここ一番での集中力にはすごいものがある。やっぱり、横綱になる力士にはそれなりの理由があるのだと納得させられる。

鶴竜にしても、横綱に昇進したときの集中力はすごかった。たしか、二場所続けて白鵬と日馬富士の両横綱に勝ったはずだ。日馬富士はともかく、それまでまったく勝てなかった白鵬に連勝したわけだから、鶴竜の集中力もすごいと言うしかない。ついでに言えば、琴奨菊が大関に昇進したときにも、二場所続けて白鵬に勝っている。このあたりの集中力があるからこそ、優勝もできたのだろう。

それに比べてキセノンは、千秋楽で琴奨菊に勝てば文句なしに大関昇進という大事な相撲に負けてしまった過去がある。このときは、取組前からキセノンの大関昇進が決まっていたからいいようなものの、キセノン以外の力士だったら昇進は見送りになっていただろう。実際に、琴奨菊は3場所通算の勝ち星が32勝で大関昇進を見送られ、次の場所で12勝して大関に昇進した。

これほど相撲協会からひいきされて、横綱昇進のチャンスを何度ももらっているにもかかわらず、ここ一番で勝ちきれないキセノンだけれど、たしかにここ数場所は強くなったという感じはする。そのきっかけは、間違いなく琴奨菊が優勝したことだろう。あの優勝でキセノンのやる気に火が付いたのだと思う。琴奨菊が優勝した次の場所は、キセノンだけでなく豪栄道も優勝争いに絡んできたくらいだから、大関陣にとっては相当な刺激になったに違いない。

しかし、やる気だけではなかなか優勝できないということを、ここ3場所のキセノンを見て痛感した。たしかに相撲に安定感が増して一皮むけたという感じはあるけれど、ここ一番で勝てないという弱さを克服できない限り、優勝にはほど遠い。今場所は早い段階で鶴竜と琴奨菊が休場し、両横綱が相次いで星を落とすという絶好の展開だったのに、肝心のキセノンがこの体たらくではどうしようもない。



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