16/02/14

もっとも割のいいプロスポーツについて考えてみる

先週の木曜日は祝日だったので、なんとなく民放のワイドショーを見ていたのだが、その番組に出ていた元巨人軍の野村の姿を見て驚いた。巨人軍で清原のチームメイトだった野村が清原のために覚せい剤を調達していたということでテレビ局が取材に訪れたわけだけれど、現役時代と比べてあまりの変わりように言葉を失った。

ヒゲは仙人のように伸び放題で、昼間から酒を飲んでいるためにまったくろれつが回らない。また、家の中はゴミがあふれていて、まさにゴミ屋敷になっている。なにしろ、あまりの惨状に、取材に訪れたレポーターが土足で家に上がり込む始末だ。これが、メジャーリーグまで経験したプロ野球選手の姿なのかと思うと、あまりにもショッキングだった。

そのあまりの変わりっぷりに、この際清原のことなんてどうでもいいから、なぜ野村がここまで落ちぶれたのかを取材してほしいと思った。というか、取材したレポーターはそのあたりのことについて興味はないのだろうか。現役時代はそこそこの活躍をしたプロ野球選手の変わり果てた姿を目の前にして、持ち前のゲスな好奇心は刺激されないのだろうか。

巨人時代の野村は主に中継ぎとして活躍し、その思い切りのいいピッチングはけっこう印象に残っている。決して速いボールを投げるわけではなかったけれど、スピードよりは球のキレで勝負するタイプのピッチャーだったと思う。とりあえず、メジャーでの経験もあるわけだから、そこそこの実力はあった。年棒も、1億まではいかないけれど、数千万くらいはもらっていたはずだ。

そういう選手でも、落ちるときはここまで落ちてしまうわけだ。もちろん、覚せい剤容疑で逮捕されたのは自業自得だから、その点については同情の余地はないけれど、職業がプロ野球選手という特殊性も、ここまで落ちてしまった原因の一つではあると思う。なにしろ、プロ野球選手になるような人間は、子供の頃からずっと野球しかやっていないわけだから、つぶしが利かない。

そういう人間が野球界から追放されてしまったら、もうどこにも行きようがない。いまさら新入社員としてサラリーマンになることもできないし、給料は安くて体力的にキツい肉体労働をするのも、数千万円の年棒を稼いでいた人間としては、プライド的にも我慢できないだろう。そうなれば、昼間から酒を飲み、仙人みたいにヒゲを伸ばし、ゴミを部屋の中にため込むくらいしかやることがない。

プロ野球は一見華やかな世界に見えるけれど、本当にスポットライトを浴びて活躍できるのはごく一部の選手だけで、二軍でくすぶって芽が出ないうちに人知れずクビになる選手がほとんどだ。成功すればリターンは大きいけれど、失敗したときのリスクも大きい。プロ野球に限らず、プロスポーツの世界はどこも同じようなものだとは思うけれど。

プロ野球よりもさらに割が合わないプロスポーツがボクシングだ。というか、もっとも割に合わないプロスポーツだと思う。なにしろ、日本チャンピオンになったくらいでは全然食えなくて、ボクシングだけで食べていこうと思ったら、世界チャンピオンになるしかない。しかし、世界チャンピオンになっても、負けてしまえばそれで終わりだ。

それに、日本人が主戦場とする軽量級は、世界的なマーケットで見た場合、ビッグマネーは動かない。軽量級同士の試合をラスベガスのビッグマッチとして見たいというボクシングファンはまずいない。本当に大きなお金をボクシングで稼ぐには、ミドル級以上の階級で何度もタイトルを防衛し、他団体の強いチャンピオンと王座統一戦をやるしかない。

逆に、意外と割がいいのではないかと思うのが、大相撲だ。横綱や大関になれなくても、十両に昇進すればけっこうな収入がある。十両力士の場合、月給として100万円くらいもらえるらしい。このほかにも、懸賞金やタニマチからの支援もあるから、そこそこの金額にはなる。また、引退後の力士のことを考えた相撲協会独自の給与システムもあるから、意外に待遇は悪くない。

もっとも、給料が出る十両に昇進するのが大変ではあるけれど、現在は新弟子検査を受ける日本人はかなり少なくなっているらしいので、期待の若手日本人力士としてデビューすれば、遠藤みたいに人気者になってテレビCMにも出られる。なにしろ、モンゴル勢ばかりが強い現在の状況では、マスコミもファンも強い日本人力士を待望しているのだ。それにうまく乗ることができれば、一気にスターになれる。

しかし、もっとも割のいいプロスポーツは、なんといってもゴルフだろう。なにしろ、選手生命が圧倒的に長い。野球にしろボクシングにしろ相撲にしろ、30台の半ばを過ぎたらもう引退だ。この3つの中で一番選手生命が長いのは野球だろうが、それでもせいぜい20年くらいのものだ。ボクシングなんて、20年も現役を続けていたら体を壊してしまう。

日本で一番プロ選手が多いのがゴルフだから、やっぱり割がいいのだろう。もちろん、割がいいとはいっても、シード選手になれなければ月曜日の予選から参加しなくてはならないし、その費用はすべて自腹だから、トーナメントだけで食べていくのは大変だ。しかし、トーナメントで食べていけなくても、レッスンプロとして食べていく方法がある。ということで、細く長くプロ生活を続けていくのであれば、ゴルフが一番だと思う。



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