16/01/17

軽井沢で起きたスキーバスの事故について考えてみる

軽井沢で起きたツアーバスの事故について、犠牲者となった乗客のすべてが大学生だったということで、なんとも言えないやるせなさを感じてしまう。しかも、早稲田とか都立大とか農工大とか、それなりに優秀な大学の学生が亡くなっているというのが辛い。偏差値で命の軽重が決まるわけではないけれど、若くて優秀な人間を一度に失ってしまうのは大きな損失であることは間違いない。

今回の事故では、運転手が二人とも亡くなってしまったため、事故の詳しい原因はだれにもわからない。いろんな憶測が飛び交っているけれど、だれもそれを証明することができない。ということで、マスコミは旅行代理店やバス会社の経営者に攻撃の的を絞って報道している。運転手の健康診断を実施していなかったとか、出発前の点呼をしなかったとか。

たしかに、健康診断や点呼は規則で定められていることだから、こうしたことをサボるというのはよくないことには違いないけれど、健康診断や点呼を行っていれば今回の事故は起きなかったのかといえば、そんなことはないだろう。はっきり言って、こんなことはごく些末な問題で、とりたてて大きく報道するほどのことではない。問題の本質はもっと別のところにある。

今回の事故を起こした運転手は、57歳と65歳の男性だったらしいが、この年齢を見ただけで、この業界のブラックさみたいなものが伝わってくる。還暦を過ぎた年齢の人間が、体力を要求される深夜バスの運転を任されているわけだから、どう考えても健全な業界ではない。大型バスを運転した経験はないけれど、肉体的にはキツイものがあるだろうことは想像がつく。

バスの運転手という仕事は、キツイわりに報酬が低いので、いまの若い人たちには人気がないらしい。それはそうだろう。だれも、キツくて給料の低い仕事をしたいとは思わない。それが、未来のある若者であればなおさらだ。結局、こういう割の合わない仕事というのは、ほかに選択肢のない人たちのところに回っていくような仕組みになっている。

なぜ給料が安いかといえば、過当競争でツアーの価格を下げざるを得ないからだ。今回のツアーでは、バス会社は旅行代理店から19万円で請け負ったらしいが、これは法律で定められている最低価格の27万円を大幅に下回る金額だ。最低価格のさらに3割引きなんて、そもそも利益は出るのだろうか。どうやら、ものすごくブラックな業界らしい。

最初にこのニュースを聞いたときには、深夜の事故ということもあり、きっと居眠り運転だったんだろうと思った。しかし、詳しい状況を知るにつれ、どうやらそうではないらしいということがわかってきた。単調な一本道で居眠りするならわかるが、つづら折りの峠道を越えて下り坂にさしかかったときに事故が起きたということは、居眠りが原因というのは考えにくい。

ここで気になるのが、高速道路を通らずにわざわざ一般道を通ったということだ。単純に考えるのであれば、高速料金を浮かせようと思って一般道を通ったけれど、それだと時間的に厳しくなるため、下り坂にさしかかると同時にスピードを上げた結果、事故につながったということではないか。なにしろ19万円で請け負っているわけだから、わずかな高速料金を浮かそうと考えても無理はない。

もしそうだとしたら、わずかな高速料金のために大勢の若い人たちが亡くなったことになるわけで、どうにもやりきれない。ただ、今回の事故で不思議に思うのは、もう一人の運転手はいったい何をしていたのかということだ。一部の乗客が「尋常ではない」と感じるくらいの運転だったわけだから、横にいたもう一人の運転手も当然それに気づいたはずだ。あるいは、眠っていたのだろうか。

ということで、今回の事故を受けてさらに規制を強化すべきだという意見があるけれど、どんなに規制を強化したところで、業界全体の構造が変わらない限り、また同じような事故が起きるのは間違いない。その労働に見合うだけの対価を得られるような構造に変えていかないと、表面的な規制だけを強化したところで、おそらく効果はないだろう。

関係ないけれど、夜中からどうにも体調がよくない。ぞくぞくするような悪寒が走り、体の節々が痛い。熱もすでに38度を超えている。いままでの経験からすると、このまま39度を超える熱が出て、何日かはしんどい思いをしそうだ。今日はおとなしく寝ていることにしよう。今日はセンター試験の2日目だけれど、自分が受験生でなくてよかった。こんな体調で試験を受けたら惨敗間違いなしだ。



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