15/11/08

脱サラの可能性を探る

このご時世、どんな大企業に勤めていたとしても安心はできない。杭打ちデータの偽装がバレたり、排気ガスのテストで不正なソフトウェアを使ってズルをしていたことがバレたりしたら、会社の信用に傷がつき、業績は一気に落ちる。そうなったら、いつリストラにあうかわからない。大企業でさえそうなのだから、零細企業に勤めている自分なんて、常に不安がつきまとう。

翻訳業界というのは零細企業の見本市みたいな業界で、上場している会社はわずか1社だけだ。翻訳会社は国内に2,000社ほどあるといわれているけれど、そのほとんどが社員数名程度の零細企業だ。10人以上の社員を抱えている翻訳会社ならば、業界内では「まずまずの中堅どころ」みたいな感じで、年商が3億円を超えれば、「けっこうな大手」という感じだ。

そんな業界だから、いつ会社が傾くかもしれないという不安を常に抱えている。なにしろ、自分のカバンの中には、駅に置いてある無料の求人誌がいつも入っているくらいだ。「タウンワーク 社員」をパラパラとめくっては、飲食業やガテン系の仕事の動向を探っている。もちろん、本気でこういう業界に転職したいと思っているわけではないけれど、いつ何がどうなるかわからないから、一応の知識だけは持っておきたい。

この歳になっていまの職を失ったら、まともな会社に転職するのはまず無理だ。システムエンジニアに復帰しようとしても、もう現場からは15年くらい離れているから、使い物にはならないだろう。管理職の経験もないから、プロジェクトマネージャーとして採用される見込みもない。ということは、飲食業やガテン系の仕事しかないということになる。

フリーランスで翻訳の仕事をすればいいじゃないかと思うかもしれないが、フリーなんていう不安定な立場で仕事をする気はいまのところない。どんなにつまらない仕事やキツイ仕事であっても、毎月決まった額の収入が見込める仕事の方がいい。収入が安定しない仕事に就くと、精神的にも安定しないのがイヤなのだ。

しかし、実際に飲食業やガテン系の仕事に就いたら、きっとものすごく辛いだろうと思う。自分の半分くらいの年齢の若造にアゴで使われて、毎日ストレスをためながら仕事のグチばかり言い、それに伴って酒の量が増え、そのうちに肝臓を壊して死んでいくのだろう。自分がどんどんと壊れていく姿が目に浮かぶ。そんな姿を想像するだけでガクブル状態だ。

ならば、思い切って脱サラするというのはどうだろう。自分には商売の才能はまったくないから、難しいことはできない。可能性があるとすれば、やっぱりラーメン屋ということになりそうだ。ラーメン屋なら調理師免許は必要ないから、料理ができない自分でもなんとかなるだろう。ラーメンといくつかのサイドメニューさえマスターすれば、料理についてはとりあえずオッケーだろう。

問題は開店資金だが、居抜きの物件が見つかれば、かなり安上がりになるらしい。絶対に借金だけはしたくないので、いまの貯金だけで開店できる物件を見つける必要がある。あとは細かいノウハウだけれど、図書館で「月刊 飲食店経営」という雑誌を読んでそのあたりのことを勉強している。難しいことばかりだけれど、なんだか面倒そうだということだけはわかった。

まだ勉強中だけれど、自分にはラーメン屋は無理そうだという結論に達しつつある。なにしろ、開店から10年後も営業しているのはごくわずかで、多くの店は3年くらいでつぶれてしまうらしい。いまは空前のラーメンブームだけれど、ブームということは当然新規参入店も多いわけで、もし人気を獲得できたとしても、常に新しい店との競争が続くということになるわけで、一瞬たりとも油断できない。

ラーメン屋が無理だとしたら、コンビニはどうだろうかと考えた。コンビニの場合、本部とフランチャイズ契約を結ぶことになるから、純粋な個人経営というわけではないが、本部のサポートが期待できるから、フランチャイズならではの安心感もあるだろう。細かいノウハウについてはマニュアルに沿って現場で覚えていけばいいわけだから、独学で習得する必要もない。

ということで、コンビニ経営についてちょっと調べてみたのだが、ものすごくブラックな業界だということがわかった。一番ひどいのが、廃棄商品にもロイヤリティがかかるという点だ。廃棄商品は、その仕入れ価格分だけ損することになるのが普通だけれど、コンビニの場合は、廃棄商品も売り上げとして計上されてしまう。

たとえば、80円で仕入れたおにぎりを120円で販売する場合、そのおにぎりが賞味期限切れで廃棄処分になると、実際には売れていないにもかかわらず、小売価格の120円が売り上げとして計上されることになる。この場合、粗利は40円になり、その一部がロイヤリティとして本部に巻き上げられる。店側に一方的に損を押し付ける仕組みになっていて、まさにサギみたいな話だ。

また、仕入れ価格を店側に一切教えないという仕組みになっているという点も問題だ。あるオーナーが無理やり調べたところ、カップ麺の仕入れ価格が140円くらいだったことがわかって驚いたらしい。つまり、一般的なスーパーで売られているカップ麺のほうがまだ安いということだ。だったら、本部から仕入れなくても、自分で安売りスーパーに買い出しに行ったほうがいい。

本部で一括して仕入れているから、スケールメリットが働いて安く仕入れられそうなものだが、そうなっていないということは、おそらく本部側でピンハネをしているのだろう。きっと、本部側でカップ麺を1個100円くらいで仕入れて、店舗には140円くらいの値段で卸しているのだろう。このあたりのことは確たる証拠はないが、かなりあくどいことをしているのは間違いない。

コンビニ経営の問題はこのほかにもいくつかあって、とてもじゃないが脱サラしてまでチャレンジする価値がある商売だとは思えない。コンビニの本部側にとっては、儲ける相手は我々一般的な消費者ではなく、コンビニをフランチャイズ経営するオーナーなのだ。理不尽な会計処理でオーナーからロイヤリティを巻き上げ、不透明な仕組みで仕入れ価格をピンハネする。本当にサギみたいな商売だ。

ということで、ラーメン屋もコンビニオーナーもダメということになると、あとは何があるだろうか。そう考えていたら、コインランドリーはどうだろうかと思い当たった。場所さえよければ、かなりの集客が期待できる。主な仕事は清掃と集金くらいだから、なんだかラクそうだ。しかし、最初の設備投資にかなりお金がかかるのがネックだ。やっぱり、脱サラへの道は遠そうだ。



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