15/07/26

「国民の理解が深まっていない」という言葉の本当の意味

いま話題の安保法制に限らず、何か重大な法案が国会で審議されるたびに、偉そうな態度で批評する自称コメンテーターたちがよく口にするのが、「まだ国民の理解が深まっていない」というセリフだ。このセリフを聞くたびに、それは違う、国民の理解が深まっていないのではなく、単に興味を持っていない人たちが多いだけだと思ってしまう。

この「国民の理解が深まっていない」というセリフの根拠は、各種メディアが実施する世論調査の結果なのだと思う。「安保法制についてどれくらい理解していますか」という質問に対して、「よく理解している」、「ある程度理解している」、「あまり理解していない」、「まったく理解していない」という選択肢から答える調査だ。

この調査で「あまり理解していない」、「まったく理解していない」と答えた人が過半数を占めると、自称コメンテーターたちは「まだ国民の理解が深まっていない」というセリフをしたり顔で口にするという仕組みだ。それだけならまだしも、「だから政府は、国民に対してもっと丁寧に説明する必要がある」などと偉そうに言ったりする。

こういうバカなコメンテーターは一度よく考えてほしい。説明するって、いったいどうやって説明すればいいのか。民放のテレビはくだらないバラエティ番組ばかり流しているし、新聞は自社に都合のいいように色を付けて記事を書くしで、どのメディアを使って丁寧に説明すればいいのか教えてほしい。それとも、一日中国会中継を見ていろとでもいうのか。

国民の理解が深まっていない一番の理由は、多くの国民が自分から理解しようという努力をしていないからにすぎない。つまりは、多くの国民にとってはどうでもいいことなのだ。人間というのは、自分にとって興味のないことは理解しようとしない。自分のことだけで精一杯で、安保法制なんかに興味はないという人が大勢いるということだ。

だから、バカなコメンテーターたちは、「国民の理解が深まっていないから、政府はもっと丁寧に説明する必要がある」ではなくて、「理解していない人たちは、もっと自分たちで調べて理解する必要がある」と発言すべきなのだ。ぼーっとテレビを見ていれば、安倍さんがやさしく丁寧に説明してくれるのならばともかく、そういう仕組みになっていないのだから、自分で調べる以外に方法はない。

国民もバカな人が多いから、こういうコメンテーターの発言につられて、街頭インタビューでも、「政府の説明はわかりにくいですね。もう少し丁寧に説明する必要があると思います」などとドヤ顔で答えたりする。自分の怠慢を棚に上げて政府に責任転嫁するな、わかりにくかったら自分で調べろと言いたい。いまの時代、ネットで大概のことはすぐに調べられる。

「国民はそれほどバカじゃない」というのも、コメンテーターがよく口にするセリフだが、申し訳ないけれど、自分も含めて多くの国民はバカだ。バカという言葉に語弊があれば、時事問題に無関心な人が多いと言い換えてもいい。大概の人は自分の生活に精一杯で、集団的自衛権がどうのこうのなんてことには興味がない。

コメンテーターだけでなく、「安保法制についてどれくらい理解していますか」などというくだらない質問をするメディアにも問題がある。むしろ、「安保法制についてどれくらい興味がありますか」という質問にすべきだ。あるいは、両方の質問をしてその結果を対比してもいい。そうすれば、「理解していない」イコール「興味がない」という結果が見えてくるだろう。

「安保法制に関する議論は十分に深まっていると思いますか」みたいな調査もあったけれど、これも相当にくだらない質問だ。いったいどうやったら、それを確認できるというのだろう。断片的なことを伝えるニュースだけを見て、「うん、これで十分でつね」なんて判断できるわけがない。本当に知りたければ、自らが国会議員になって議論に参加するしかないではないか。

ちょっと話が逸れるけれど、NHKが定期的に行っている世論調査でも、とてつもなくくだらない質問がある。それは、「現在の経済政策をどれくらい評価していますか」という質問だ。この質問に対して、「大いに評価する」、「ある程度評価する」、「あまり評価しない」、「まったく評価しない」という選択肢が用意されている。

経済政策というのは、著名な経済学者でさえ評価が分かれるものなのに、一般の国民が簡単に評価できるわけがない。電話でのアンケートで、「現在の安倍内閣の経済政策を評価しますか」なんていきなり聞かれて、「大いに評価します」とか、「まったく評価しません」なんて自信満々で答えられる人なんているわけがない。もしいたら、いますぐ経済学者になるべきだ。

自分だったら、素直に「わかりません」と答えるだろう。なにしろ、経済に関してはまったくのド素人であることを自覚しているから、そう答える以外にない。株価が上がっているのになぜ円安になっているのかすら理解できていないレベルなのだから、それもしかたない。というか、多くの国民がそれくらいのレベルだと思う。つまりは、経済政策を評価しろという質問が無茶すぎるのだ。

メディアは、こういう無茶な質問や、そもそもの前提が間違っている質問をして誤った方向に世論を誘導するのはやめてほしい。これは立派な情報操作だと思う。国民の理解が深まっていないのではなく、無関心な国民が自分で理解しようとしないだけの話だ。そういう無関心さを都合のいいように解釈して世論を操作するのはズルイと思う。



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