15/06/21

安保法制について真面目に考えてみる

安保法制の議論がなんだか熱くなってきた。というか、いままではなんとなくこのまま与党が押し切るのかと思っていたら、最近では形勢逆転で、野党の方が優勢になってきたようだ。そのきっかけとなったのが、憲法審査会に参考人として呼ばれた長谷部教授の発言だ。自民党から推薦されたにもかかわらず、堂々と「この法案は違憲です」と発言したものだから、自民党の立場がなくなってしまった。

長谷部教授を選んだのは自民党の船田さんらしいが、その人の主義主張くらいはちゃんと事前に調べておけよと言いたくなる。少なくとも、「この法案は違憲ではないと言ってください」くらいの念押しは、事前にしておくべきだった。この失態をなんとか挽回しようとして、菅さんが「集団的自衛権を合憲だと言っている学者もいっぱいいる」なんて言ってしまったのも失敗だった。

この発言を民主党の辻元議員から突っ込まれ、集団的自衛権を合憲だと言っている憲法学者は、実際にはわずか2〜3人にすぎないことがバレてしまった。ここまでくるともう開き直るしかないようで、「憲法との整合性は完全にとれている」など、お前たちの理論は憲法学者の理論よりも優先されるのかと突っ込みたくなるような開き直りを見せている。

ということで、なんだかグダグダな展開になっているけれど、自分としては今回の安保法制については賛成だ。自分たちの国を自分たちで守れなくて何が主権国家だ、という思いがある。だから、集団的自衛権の行使を可能にする今回の法案については賛成なのだけれど、そのやり方はちょっとマズイよね、とも感じている。

集団的自衛権が合憲か違憲かと聞かれれば、やっぱり違憲だと思う。むしろ、どう解釈したら合憲になるのか、頭の悪い自分でも納得できるように説明してもらいたい。それくらい明らかに違憲だと思う。集団的自衛権の行使に賛成する自分でさえ違憲だと思っているわけだから、ほとんどの憲法学者が違憲だと考えているのは当然のことだ。

しかし、集団的自衛権が違憲だというならば、そもそも自衛隊は合憲なのかという話になる。憲法9条には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書かれているから、高度な軍事力を備えたいまの自衛隊は明らかに違憲だと思う。その自衛隊が行使する個別的自衛権は合憲で集団的自衛権は違憲だというのも、なんだかおかしな話ではないか。

こういう根本的なところを無視して、集団的自衛権は違憲だなどと非難するのはどうかと思う。どうせ議論するなら、自衛隊の存在そのものについても徹底的に議論してもらいたい。でも、いまさら自衛隊が違憲だなどと言い出す人はいないだろう。それは、自衛隊が日本にとって必要な存在であるからだ。だから、憲法の解釈を捻じ曲げて自衛隊の存在を認めたわけだ。

今回の安保法制についても同じことで、集団的自衛権が合憲か違憲かをベースに議論するのではなく、集団的自衛権が日本にとって必要かどうかということをベースに議論してほしい。だれがどう見たって、集団的自衛権が違憲であることは間違いないわけだけれど、「だから絶対にダメ」という論法では、日本はこの先何もできなくなってしまう。

そもそも、戦後の混乱した時期にアメリカ主導で作られたクソみたいな憲法を、いつまでも後生大事にありがたがっている必要はない。こんな憲法に縛られていては、日本はいつまでたっても真の主権国家にはなれない。時代の変化に合わせて、憲法も柔軟に変えていけばいいと思うのだが、これがなかなか難しい。

今回の安保法制では、そもそも憲法改正の議論が先にあるべきだというのは、多くの人たちが考えていることだろう。どう考えても無理のある解釈をこねまわすよりも、真正面から憲法改正の議論をすべきだというのは、たしかに正論だと思う。しかし、簡単に憲法が改正できればだれも苦労しないわけで、憲法改正が難しいから、こういう無理筋な理屈で法案を通そうとしているわけだ。

最初から無理矢理な感じがしていたけれど、今回の長谷部教授の違憲発言によって、自民党の理論は完全に破綻してしまった。こうなってしまった以上は、違憲であることを素直に認めた上で、「でも、集団的自衛権は必要だよね」という方向に持っていった方がいい。法律的に正しいかどうかではなく、現実的に必要かどうかということを議論してほしい。

すべての国が軍隊をなくして日本のような平和憲法を制定すれば世界は平和になるだろうが、そんな夢みたいなことは絶対に実現しない。他国からの侵略を防ぐためには、絶対に自前の軍隊が必要になる。自分だって戦争には反対だけれど、最初から戦う意志さえ見せないのと、いざとなったら戦うぜという意志を見せるのとでは、他国に与える印象はまるで違ってくる。

そもそも、アメリカに一方的に守ってもらうばかりで、アメリカが戦争に巻き込まれても知らんぷりというのではマズイだろう。これが、人口が数百万人の小さな国だったらともかく、日本は1億人を超える人口を有する大国なのだから、一方的に守ってもらうばかりというのはものすごく恥ずかしい。恥ずかしいというか、情けなくなる。

違憲だから絶対にダメとがなり立てる野党の議員は、このあたりのことをどう考えているのだろうか。いまの状態で、本当にいいと思っているのだろうか。今回の安保法制に頭から反対している人たちを見ていると、どうしてそんなに硬直した考え方をするのだろうと思ってしまう。何度も言うけれど、正しいかどうかではなく、必要かどうかということをベースに議論してほしい。



今週の覚書一覧へ

TOP