14/11/30

またまた裁判を傍聴してみた

引き続き絶賛有給消化中につき、また千葉地裁で裁判を傍聴してみた。裁判には、新件、審理、判決という3種類がある。新件とは、これが最初の裁判という意味で、審理とは、裁判が複数回にわたる場合の2回目以降の裁判のことで、判決とは、文字通り判決公判のことを指す。判決公判は、簡単な裁判なら5分くらいで終わる。

とりあえず、前回の覚書で書いた裁判の判決公判について書いておこう。まずは、夫婦そろって覚醒剤の所持と使用の罪で被告となった事件だが、奥さんは1年6か月、旦那は2年6か月の求刑に対して、奥さんは1年6か月(執行猶予3年)、旦那は2年6か月(執行猶予5年、保護観察処分付き)という判決になった。

奥さんの判決については予想通りだったが、旦那が執行猶予付きの判決になったことには驚いた。執行猶予5年で保護観察処分付きというのは、執行猶予付きの判決としては最も重い判決ではあるけれど、実刑判決に比べれば天国と地獄くらいの違いがある。あの白々しい反省の弁と更生への決意が、少しは効果をあげたということだろうか。

次に、追いすがる専務をクルマで引きずって重傷を負わせた不動産会社社長の傷害事件について書いておこう。この裁判は途中で時間切れとなったため、求刑については傍聴していないのだが、懲役1年(執行猶予3年)という判決になった。予想通り執行猶予付きの判決になったが、これは当然だろう。これで実刑判決になったら、被告があまりにもかわいそうだ。

ということで、今回は強盗殺人未遂事件の裁判について書いてみたい。これまでは、覚醒剤、傷害、詐欺といったしょぼい裁判ばかりを傍聴してきたわけだけれど、今回の事件はかなり派手だ。法廷も、傍聴席が46席もある大きな法廷で、しかも裁判員裁判だ。殺人などの重大な事件を裁くのが裁判員裁判だから、派手な事件を傍聴したかったら、裁判員裁判を探すのが手っ取り早い。

被告は50台半ばの男子で、事件当時は麻雀荘を経営していた。被害者はその麻雀荘に通う客で、事件当時はゲーム機やゲームソフトを扱う会社を経営していた。被告が被害者から総額4400万円もの金を借りたが、この金を返せなくなったことに困った被告が、友人に被害者の殺害を依頼した。その友人は、被害者の顔面を拳銃で撃ったが、被害者は奇跡的に一命を取り留めたという事件だ。

事件後、被告は付き合っていた女性と一緒に沖縄へ逃亡するが、10年間にわたる逃亡生活の末に逮捕され、今回の裁判となった。実行犯である男については、すでに懲役12年という判決が確定し、現在は刑務所で服役中だ。法廷に出廷した被告は、なんだかしょぼくれた貧相な感じの男で、こんな凶悪な犯罪を犯すような人間にはとても見えない。

この事件では、犯行現場で金品の強奪があったわけではないから、強盗殺人未遂ではなく、単なる殺人未遂ではないかと思ったのだが、事件の動機が借金を帳消にすることであるのは明白なので、強盗殺人未遂ということになるらしい。なるほど、たしかにこの事件を単なる殺人未遂として裁くのは、被害者にとってはかなりの不利益になるだろう。

弁護人の冒頭陳述では共謀の事実を否定し、被告の無罪を主張した。これまで傍聴した裁判では、すべて被告が事実関係を認めていたから、事実関係を争う裁判を傍聴するのはこれが初めてということになる。弁護人の冒頭陳述を聞きながら、心の中で「キターーーーー!!」と叫んでいた。この裁判なら、検察官と弁護人との丁々発止のやり取りが見られるかもしれない。

しかし、盛り上がったのは冒頭陳述の場面だけで、その後は検察官による退屈な証拠説明が延々と続き、途中からはウトウトしてしまった。事件の現場や使用された拳銃についての説明があるのだが、その資料はこちらの手元にはないから内容がよくわからないし、実行犯はすでに服役しているわけだから、実際の事件現場や凶器についての説明をされても意味がない。

そんな感じで、初日の裁判はまったく盛り上がりを見せないまま閉廷となった。せっかく面白そうな裁判なので、翌日も朝から千葉地裁に出かけた。この日は、被害者とその奥さんが証人として証言台に立った。遠目で見ただけだが、被害者の男性はとても顔面を拳銃で撃たれたとは思えないくらいに元気そうな様子だ。

しかし、実際には終始耳鳴りに悩まされ、右目の視力は大幅に低下し、片方の聴力は失われ、鼻血が止まらないという状態らしい。それにしても、顔面を拳銃で撃たれながら脳に何の障害も起きていないというのはすごいことだと思う。被害者を手術した医者も、わずか1ミリでも弾道がどちらかに逸れていたら、深刻な障害が残るか命を落としていただろうと言っていたらしい。

被害者の証言によると、被告には何度も金を貸していて、その総額が4400万円にも膨れ上がったらしい。驚くべきは、それほど多額の金を貸したにも関わらず、借用書を作っていなかったということだ。被告のことを信用していたからだと証言していたが、それにしてもその無防備さには驚いてしまう。きっと、被害者はかなりのお人よしなのだろう。

被害者は、被告以外にも複数の人間に金を貸していたというから、やっぱりお人よしなのだと思う。なにしろ、義理の兄に借金をしてまで、被告に金を貸しているくらいだ。実行犯である男にも350万円を貸していたというから、どれだけお人よしなんだろうと思ってしまう。これだけ親切にしていたにもかかわらず命を狙われてしまったのだから、気の毒と言うほかにはない。

被告と実行犯は同級生で幼なじみだったが、被告と実行犯は親分と子分といった関係で、被告の命令を実行犯の男が素直にきくといった感じだったようだ。借金に悩んで自殺を口走る被告のことを心配し、その貸主である被害者を殺せば被告が助かると考えた実行犯の男が単独で行った犯行だというのが被告の主張だ。

赤の他人である自分が聞いても、なんとも無理のある主張だと感じたが、被害者も「100パーセント、いや120パーセント被告が計画した犯行だと思います」と証言していた。しかし、事件直後の被害者は、被告が関与しているとはまったく思っていなくて、病院に来た刑事の話を聞いて「もしかしたら」と考え始めたらしい。やっぱり、底抜けにお人よしのようだ。

2日目の裁判は被害者とその奥さんの証人尋問で終わった。期待した検察官と弁護人との激しいやり取りは見られなかったが、十分に面白い裁判だった。しかし、まだまだわからないことだらけだ。たとえば、被告は被害者からの借金のほかにも借金があり、総額で1億ほどの借金を抱えていたらしいが、なぜそれほど多額の金が必要だったのだろう。

また、堅気の人間である被告がどのようにして拳銃を入手したのか、殺人を依頼された実行犯の男はなぜ頼みを断れなかったのかなど、わからないことが多い。そのあたりは、これからの裁判で明らかにされていくのだろうが、残念ながら明日から普通の会社員に戻るので、これ以上この裁判を傍聴することはできない。

最後に、これから裁判の傍聴をしてみたいと考えているあなたにいくつかアドバイスを。最初は、覚醒剤の新件を傍聴することをお勧めします。1回の裁判で結審するので、裁判の流れを理解するにはもってこいだと思います。裁判員裁判を傍聴する場合は、「新件」ではなく「審理」を傍聴することをお勧めします。裁判員裁判の新件はあまりにも退屈です。途中から傍聴しても、意外にすんなりと理解できるはずです。



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