14/08/03

松屋のプレミアム牛めしを食べてみた

牛丼チェーンの松屋が、「プレミアム牛めし」という新しいメニューを始めたらしい。これまでは並盛の牛めしが290円だったが、この新しい牛めしは380円だ。価格としては90円の値上げだが、率にすると3割の値上げということになる。これまで、お互いに競うように低価格路線で勝負してきた牛丼業界だが、ついにその傾向にも変化が訪れたようだ。

松屋によると、これまでの牛めしでは冷凍肉を使っていたが、新しい牛めしではチルド肉を使用するらしい。素人としては、冷凍肉とチルド肉がどう違うのかよくわからないが、要はカチコチに凍った肉ではなく、凍る寸前の温度で冷蔵された肉ということらしい。もっと簡単に言うと、冷凍肉よりチルド肉の方が美味いということらしい。

なにはともあれ、実際に食べてみようと思い、松屋に向った。食券を購入して店員さんに渡すと、店員さんは「プレミアム牛めし一丁」と厨房に向って大きな声をあげる。なんだかものすごく恥ずかしい。たった380円の牛めしごときで、「プレミアム牛めし」と大きな声で読み上げられるのは、事前に予想していた以上に恥ずかしい。

「プレミアム」というちょっとすかした横文字と、「牛めし」といういかにも大衆的な食べ物の名前を組み合わせると、なんとも恥ずかしい響きになってしまう。「プレミアム」とは言っても、以前の価格に戻ったにすぎない。自分が上京して初めて食べた吉野家の牛丼がたしか380円くらいだったと思う。つまりは、30年前の価格に戻ったということだ。

そもそも、牛丼の価格を大幅に値下げして現在の流れを作ったのは松屋だ。いまから15年くらい前に、それまで400円だった牛めしの価格を一気に290円に下げたことが始まりだ。この動きに同業他社も素早く反応し、それからは泥沼の値下げ合戦が繰り返されてきた。その間にはアメリカ産牛肉のBSE問題などもあり、牛丼の価格には多少の変化もあったけれど、基本的には低価格路線で進んできた。

この低価格路線を積極的に展開して売り上げを伸ばしてきたのがすき家だ。今回の消費税の増税でも、それまでの牛丼並盛280円という価格を270円に下げて、さらに低価格路線で勝負する姿勢を打ち出している。しかし、そのあまりにもブラックな労働環境が問題視され、最近になって、労働環境を改善するように第三者委員会からお叱りを受けたらしい。

そんなことはともかく、肝心のプレミアム牛めしの味はというと、たしかに美味しくなっていた。なんといっても、肉の柔らかさがこれまでの牛めしとはまったく違う。味覚オンチの自分にもはっきりとわかるくらい、肉の質は向上している。これまでの牛めしの肉は、固くて筋っぽくてイマイチだったが、それに比べれば大きく進歩したことは間違いない。

しかし、このプレミアム牛めしを目当てに松屋に通うかと考えてみると、きっとそんなことはないと思う。なぜならば、これまでの値下げ競争にすっかり慣れてしまい、牛丼という食べ物は多少味がまずくても安ければいいという考え方ができあがっているからだ。もちろん、味がいいに越したことはないけれど、そこそこの味でさえあればいいという感覚だ。

ただし、いくら値段が安いからといって、すき家のようなブラック企業が提供する牛丼は食べたくない。味や値段という問題以前に、月に100時間以上の残業を平気でさせるような企業なんて、その存在自体が許せない。すき家で働く人たちの労働条件は本当に過酷で、こういう人たちの労働力を搾取して肥え太っている経営陣が許せない。しかし、自分は共産主義者ではないので、こういう批判はやめておこう。

自分としては、今回のプレミアム牛めしの登場で松屋ファンになるということはないけれど、牛丼業界にとっては、この松屋の戦略は歓迎すべきものだと思う。値下げの繰り返しでは、すき家のようなブラック企業が増える一方だ。これで、お互いに体力を削りあうだけの不毛な値下げ合戦には、はっきりとピリオドが打たれたと考えていいだろう。

ということで、吉野家ファンの自分としては、これからも吉野家の牛丼を食べ続けていくことになると思う。残念ながら、今回のプレミアム牛めしの登場により、松屋に通う回数はさらに減ることになりそうだ。せめて、「プレミアム牛めし」という恥ずかしいネーミングさえやめてもらえれば、多少はリピートしてもいいのだけれど。



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