14/07/13

高校野球を観戦しながら感じたこと

夏の甲子園大会の地方予選が全国で始まったらしい。一年で一番暑い時季にカンカン照りの屋外で野球をするというのだから、選手たちはもちろんのこと、審判や競技役員、ひいては応援する人たちにとっても大変だ。そんな大変さにもかかわらず、昨日は近所の野球場に出かけて、千葉県大会の一回戦を観戦してきた。

いま住んでいるマンションの向かいに京葉工業という県立の高校があるのだが、この高校の野球部がとにかく練習熱心なのだ。平日も夜の8時くらいまで部員たちの声が聞こえるし、休日も朝早くから大きな声で練習しているしで、いったいいつ休んでいるのかと思うくらい熱心に練習している。これだけ練習しているのだから相当な強豪校かと思いきや、予選は毎年一回戦か二回戦負けで、あまり強くないらしい。

この高校に限らず、どこの学校でも野球部の練習量というのは群を抜いて多い。自分は、高校生のときは柔道部だったが(中学生のときは野球部)、柔道部の練習時間なんて1〜2時間くらいで、ほかの運動部に比べても練習時間は短かった。しかし、自分たちが帰る頃にも野球部の連中はまだ練習していて、これからが練習本番といった感じさえ漂わせていた。

まあ、野球部の練習時間が長くなるのも無理はない。なにしろ、基礎的な打撃練習や守備練習のほかにも、さまざまな状況を想定した連携プレーやサインプレーなど、練習しなければならない課題は山ほどある。団体競技というのはこれがやっかいなところで、自分の技術だけを伸ばせばいいというものではなく、チームとしての総合力を伸ばさなければ意味がない。

それに比べて、柔道などの個人競技は楽なものだ。他人のことなんて関係なく、自分が強くなることだけを考えて練習すればいいだけのことだ。団体戦で負けたとしても、その分個人戦で勝てばいい。野球などの団体競技では、個人戦なんてもちろんないから、いくら自分一人が頑張ったところで、ほかのメンバーがヘタクソならばそれでおしまいだ。

そんな感じで、この工業高校も練習時間だけはやたらと長い。いまのマンションに住んで約10年にあるが、毎日のように野球部員の声を聞いているとなんだか情がわいてきて、応援したくなってしまう。そこで大会の日程を調べたところ、運よく土曜日の第一試合が近所の野球場で行われることを知り、自宅から30分くらいママチャリを漕いで応援に向った。

600円の入場料を払ってバックネット裏の席に座ると、朝8:45からという開始時間にもかかわらず、そこそこの観客が入っている。一塁側と三塁側の両端にそれぞれの学校の応援団が陣取り、太鼓やトランペットなどの鳴り物で元気よく応援している。まだ一回戦だというのに、こういう鳴り物入りで応援したりするのかと、少しばかり驚いた。

まあ、いつも一回戦で負けているような弱小校だったら、一回戦が事実上の決勝戦みたいなものだから、ここで応援しなくていつ応援する、みたいな感じなのだろう。場内アナウンスもきれいな声のウグイス嬢が担当し、4人の審判のほかにも何人も補助の係員がいて、かなり本格的だ。当たり前だが、河川敷でよく見る草野球とはまったく違う。

そんな感じで試合が始まったが、最初のイニングの攻防を見て、これは京葉工業の勝ちだなと感じた。最初のイニングはどちらも0点だったが、バッテリーの力が京葉工業の方がやや上だと感じたからだ。野球は8割方ピッチャーの力で決まるから、そのピッチャーをリードするキャッチャーの力も同じくらい重要だ。その予感は的中し、2回裏に京葉工業の打線が爆発して一気に8点が入った。

京葉工業はこれで勝ったと思ったのか、3回からはピッチャーを替えたり、ランナーが出ると代走を出したりで、頻繁に選手を交代する。ウグイス嬢はそのたびに、守備位置の変更と打順の変更をアナウンスしなければならないから大変だ。選手交代のアナウンスが終わらないうちに打順が進んだりすると、打者のアナウンスも同時にしなければいけないから、聞いている方としても混乱する。

相手の九十九里高校もピッチャーを交代し、3回裏は0点でしのいだが、4回裏につかまって5点を失ってしまう。ちょうど中間に上がった打球を追いかけてセンターとライトが交錯してしまい、二人ともしばらく立ち上がれず、その間にバッターが一気にホームまで返ってしまうというランニングホームランまで飛び出して、勝負ありという感じになった。

この回も京葉工業は頻繁に選手を交代し、ウグイス嬢もてんやわんやの大忙しだ。正確に数えていたわけではないが、ベンチ入りしている20人の選手をすべて使い切ったのではないかと思う。ピッチャーも3人を登板させ、ものすごい強豪校なのかと思わせるような贅沢な選手起用だ。一方の九十九里高校は15人くらいしかベンチ入りしておらず、選手層の薄さはいかんともしがたい。

こうなると、九十九里高校の方を応援したくなるのが人情というもので、逆転は無理としても、なんとか1点でも返してくれと思いなが見ていたのだが、その願いもむなしく5回表の攻撃は3人であっさりと終わり、この時点でコールドゲームとなってしまった。ヒットも2〜3本くらいしか打てず、結果としては惨敗という形で終わった。

試合後に泣き崩れる九十九里高校の選手たちを見て、きっと彼らなりに一生懸命この日のために練習してきたんだろうなと思うと、なんだかこっちの胸まで熱くなってくる。適当に練習しているだけなら、試合に負けても涙なんて出ないだろう。負けて泣くのは、一生懸命に練習したものだけに与えられた特権なのだ。

自分のことを振り返ってみると、試合に負けて悔しい思いをしたことはもちろん何度もあるけれど、泣くほど悔しい思いをしたことはないような気がする。個人競技の場合、負けても自分の責任だと割り切れるけれど、団体競技の場合は、自分のせいでチームに迷惑をかけてしまった、みたいな思いもあの涙には含まれているのだろう。

団体競技はいろいろと面倒なこともあるけれど、九十九里高校の選手たちの涙を見て、ああいう風に泣ける団体競技というのも悪くないかもしれないと感じた。何か忘れていたことを思い出させてもらった感じで、自分もこれから頑張っていこうと思った。まあ、そう思ったのはほんの一瞬だけで、結局はこれまでどおりにいい加減な感じでダラダラと生きていくわけだけれど。



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