13/12/15

漢字検定を徹底的に否定してみる


今年の漢字は「輪」に決まったらしい。なんでも、東京五輪の開催が決定したことがその理由ということだ。そのほかにも、「倍返し」の「倍」や、「今でしょ」の「今」などが候補に挙がったらしい。毎年のことながら、はっきり言ってバカじゃないかと思う。これでは、流行語大賞とどう違うのかよくわらないし、そもそも漢字一文字で世相を表現するなんて無理がある。

こういうバカなことをして喜んでいるのは、日本漢字能力検定という団体らしい。ということで、今回は漢字検定について徹底的に否定してみたい。漢字検定には、1級から10級まであり、さらには準2級と準1級もあるから、合計で12段階のレベルが設定されている。受験料目当てでわざと細かいレベル分けをしているのが見え見えで、これだけでも徹底的に否定したくなる。

まずは最難関の1級についてだが、毎回2,000人弱の受験者があり、合格率は10パーセント前後といったところだ。どんな問題かというと、読み問題としては、「舟楫」、「闃然」、「雲鬢」などの難解な漢字が並ぶ。それぞれ、「しゅうしゅう」、「げきぜん」、「うんびん」と読むらしいが、その意味を連想することすらできない。中には、「軋轢」や「瓦礫」といった比較的やさしい漢字もあるが、その割合はわずかなものだ。

四字熟語の問題も同じような感じで、「英明闊達」や「判官贔屓」といったやさしい熟語はごく一部で、「偕老同穴」、「斗量帚掃」、「哭岐泣練」などの意味不明な熟語が延々と出題される。ここまでくると単なる絵合わせみたいなもので、その知識を何かに応用するという領域ではなくなる。そもそも、こうした難解な漢字を応用できる分野なんて最初から存在しない。

実際には、こうしたマニアックな1級を受験する人は少ないようだけれど、それにしてもマニアックすぎるとは思う。実生活においてまったく役に立たないことに膨大な時間をかけて取り組むわけだから、ご苦労さまとしか言いようがない。はっきり言わせてもらえば、時間と情熱をかける対象を間違っている。まあ、その人にすれば趣味でやっているのだろうから、他人がどうこう言うことでもないけれど。

1級と準1級は完全に趣味の世界で、実用性という観点から見た場合は、2級がその最高峰のレベルになると考えるべきだろう。2級の読みの問題を見てみると、「醜悪」、「顕著」、「露呈」など、ごく常識的な漢字が並ぶ。一般的な教養を持つ社会人であれば、読みの問題についてはほとんど正解できるくらいのレベルだ。そういう意味では、良問が出題されているといってもいいだろう。

しかし、中には意味不明の問題もある。たとえば、部首を答える問題がそれだ。「弔」、「囚」、「碁」の部首をそれぞれ答えなさいという問題に対して、いったいどれくらいの人が正しく答えることができるだろう。正解はそれぞれ「弓(ゆみ)」、「口(くちがまえ)」、「石(いし)」らしいのだが、そんな部首なんて初めて聞いた。というか、そもそも部首ってなんだっけ?

これが漢字検定の最も悪いところで、実用性という観点ではまったく意味のない問題を、ことさら意味ありげな感じで出題してくる。部首なんて知らなくても、日常生活においてはまったく困らないし問題にもならない。部首を知っていて何か得することなんてありますかと、逆に質問したいくらいだ。部首をいくら覚えたところで、その人の国語力が上がるわけではないと断言してもいい。

ネット上では、社会人としては2級くらいは持っていないと、みたいな意見もあるようだが、そんなことはない。いま自分が2級を受けたら、間違いなく不合格になるだろうが、だからと言って社会人失格の烙印を押されるなんてこれっぽっちも思わない。自分は翻訳会社に勤めているから、普通の社会人と比べて文章を書く機会は圧倒的に多いけれど、漢字を知らないことが原因で支障をきたしたことなんて一度もない。

部首の問題よりさらに意味がないのが、書き順の問題だ。一番簡単な10級(小学1年程度)の問題を見てみると、「雨」の縦棒が何画目になるかという問題がある。自分の場合は2画目だが、正解は4画目らしい。そんなの、1画目だろうが5画目だろうが、個人の自由にさせてやれよと言いたい。その人にとって一番書きやすい書き順がその人にとっての正解であって、絶対にこれが正解という書き順なんて存在するわけがない。

だいたい、どういう根拠があって書き順が決まったのか、それすらよくわからない。よくわからないまま、これが正しい書き順だと教えられても、はいそうですかと素直に従う気にはなれない。そんな感じだから、小学校の授業で書き順を習ったときにも、こんなことを覚えて何の意味があるんだろうと、子供心に思ったものだ。

日本人である以上、漢字との付き合いは避けて通ることはできないわけだから、常識的な知識だけは身に付ける必要があるが、まったく目にする機会のないマニアックな漢字や、覚えてもまったく役に立たない知識などは、勉強するだけ時間のムダだ。そんなことに時間と情熱を注ぐくらいなら、昼寝をしたほうがまだマシだ。役に立たない漢字の知識なんて、それくらいの価値しかない。

いまの時代はすべてコンピュータまかせで漢字を入力できるから日本人がバカになってしまう、なんていう意見もあるようだけれど、そんなこともないと思う。コンピュータがあれば、漢字なんていう面倒なことに頭を使う必要がなくなるから、もっとクリエイティブなことに頭を使えるようになって、むしろ好都合だとさえ思う。結論としては、漢字検定なんて意味がないということだ。



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