13/09/22

リニアモーターカーの必要性について否定的に語ってみる


どうやら、リニアモーターカーの運行が近い将来に開始されるらしい。東京〜大阪間の全線開通は2045年まで待たなければいけないが、東京〜名古屋間は2027年に開通するということだ。このニュースをテレビで見たときには、本当にやるのか、やめておけばいいのに、と思った。おそらく、この試みは失敗すると思う。素人考えではあるけれど、その根拠をつらつらと書いてみたい。

東京〜名古屋間をノンストップで走った場合、運行時間は約40分になるらしい。40分といったら、総武快速線で千葉駅から東京駅までの時間がちょうどそれくらいだ。つまり、千葉から東京に出る感覚で、東京から名古屋まで行けてしまうということになる。さらに、大阪までは1時間ちょっとで行けてしまうらしい。この時間だけ考えると、やっぱりすごいと思ってしまう。

しかし、本当にこれだけの高速な移動手段が必要な人はどれくらいいるだろうか。おそらく、ビジネスの目的で利用する人がほとんどだと思うが、そこまで緊急性を要する仕事がそれほど多いとは思えない。本当に急ぐのであれば、ネットやメールやテレビ会議などの通信技術を利用して仕事をした方がずっと速い。

リニア新幹線の沿線地域にもたらされる経済効果を期待する声もあるようだが、個人的にはどうかと思う。途中駅に決定した自治体では、この経済効果を期待して盛り上がっているらしいが、おそらくそうした効果は期待できないだろう。リニアを利用する人の目的地は、結局のところ名古屋か大阪であって、決して甲府や飯田などではない。わざわざリニアに乗って甲府や飯田を訪れる人なんてほとんどいないだろう。

観光目的でこういう土地に向う人は、そもそもリニアなんて利用しない。聞くところによると、リニア新幹線のルートの80パーセント以上がトンネルになるということだ。トンネルをものすごいスピードで走って目的地に着いたところで、いったい何が面白いのだろう。観光というのは、目的地での観光だけではなくて、そこに移動するまでの時間も含めて観光なのだ。

自分の場合、観光地での散策よりも、むしろそこに移動するまでの時間の方が楽しかったりする。子供の頃の遠足では、貸切バスに乗って目的地に移動する時間が一番楽しかった。車窓から見える景色を楽しみながら、わくわくした気分で友達とおしゃべりをするのが楽しかった。目的地に着かなくてもいいから、このままずっとバスに乗っていたいと思ったくらいだ。

だから、車窓から景色が見えないリニアは、まったく観光向きではない。あっという間に目的地に着いてしまうのでは、駅弁を食べる時間すらない。観光旅行が好きな人は、自分のように移動時間を含めて楽しみたいと考える人が多いはずだから、旅行の移動手段としてリニアを選択する人はほとんどいないと思う。それどころか、ひなびた雰囲気を楽しむために、わざわざローカル線を選ぶ人だっているだろう。

自分も、ローカル線のひなびた雰囲気は大好きだ。座席は、なんといってもボックス席に限る。横一列に並んだ座席では、車窓から景色を眺めることができないからだ。しかし、ボックス席の場合、思いがけず話しかけられたりすることがあるから注意が必要だ。一人で物思いにふけっているときに邪魔をされるのは、あまりいいものではない。

何年か前に、ボックス席に座って景色を眺めていたら、はす向かいに座っていた若い女子にのど飴をもらったことがある。そのときはのどの調子が少しおかしくて、何度か咳払いをしていたのだが、それを見た女子が気を利かせてくれたのだろう。しかし、まったく見ず知らずの他人から食べ物をもらうというのは少しばかり怖い。毒が入っているなんてもちろん思わないけれど、少しばかり躊躇するのは事実だ。

そのときも、いきなりのど飴を差し出されて躊躇したが、無下に断るのも失礼な気がして、お礼を言ってのど飴をもらった。もらったからには食べないといけないと思い、特に食べたくもない飴玉を口に放り込んだ。これをきっかけに何か会話をすべきなのかとも思ったが、相手の女子も特に会話をしたそうな雰囲気でもなかったから、無言のまま車窓の景色に視線を戻した。

そのほかにも、やっぱりボックス席で車窓の景色を眺めていたときに、二人組のおばさんからリンゴをもらったことがある。同じボックス席で自分たちだけ食べるのは気が引けたのだろうか、いきなり八つ切りのリンゴを差し出されたときには少しばかり驚いた。のど飴の場合は個装になっているからまだいいが、リンゴの場合はいきなりむき出しだから、受け取るのはかなり躊躇する。

しかし、このときもやっぱり断ることができず、お礼を言ってむきだしのリンゴを受け取り、そのまま食べた。いまから考えると、このときはおろしニンニクがたっぷり入ったラーメンを食べた後だったから、匂い消しの意味でリンゴを渡されたのかもしれない。もしそうだとすると、なんとも恥ずかしい。ニンニク臭くてごめんなさい、生まれてすみませんと、太宰治な気分になる。

なんだか思い切り話が逸れてしまったので、強引にリニアの話に戻そう。リニアの料金についてだが、従来の新幹線の半分以下の時間で目的地まで運んでくれるわけだから、新幹線の倍以上の料金設定になるのが普通だと思うが、新幹線よりもわずかに1000円ほど高い設定になるらしい。これが本当だとすれば、かなりお得な料金設定だと思う。

しかし、この料金設定で、9兆円という莫大な建設費用をはたして賄いきれるだろうか。あくまでもこの料金でいくということであれば、在来線の運賃が上がってしまいそうで怖い。建設費用は必ずどこかから回収しないといけないわけだから、その回収元がリニアでないとすれば、結局は在来線から回収するしかない。おそらく、何らかの形で在来線に影響するのは避けられないだろう。

ということで、派手に騒いでいるわりには、その導入効果には疑問符が付くというのが個人的な感想だ。途中駅での経済効果や集客効果なんてほとんどないだろうから、結局は、東京、名古屋、大阪という大都市だけにその効果は限定されるだろう。これから人口がどんどん減少してくわけだから、リニアを導入して都市部に人とモノを集中させたら、地方はますます厳しい状況になる。そうまでしてリニアを導入する必要があるのか、ものすごく疑問だ。



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