13/07/07

居心地の悪さを感じる瞬間

いよいよ選挙戦が始まった。今回は大方の予想通り、与党の圧勝という結果になるだろう。いい加減にねじれ国会が解消されないと、いろいろと話が遅くてしかたない。というか、そもそも参議院なんて必要ない。参議院選挙のたびにタレントや著名人が立候補するが、こういうのを見ると、参議院というのはこういう人たちの単なる受け皿でしかないのではないかと思ってしまう。

相変わらず少数政党が多いのもうんざりだ。「少数政党が多すぎて」でも書いたけれど、政治で一番重要なのはいかに頭数を揃えるかということだから、少数政党の存在意義なんてほとんどない。しかも、緑の党だとかみどりの風だとか、いつの間にか似たような名前の政党ができている。比例代表の投票で、横着して「みどり」とだけ書いた場合、この票はどちらの政党に入るのだろう。

さて、最近の蒸し暑さのせいで、自分のくせ毛が手に負えない感じになってきたので、髪の毛を切ってみた。この前切ったのが去年の12月だから、もう半年以上も伸ばしっぱなしだったことになる。基本的に美容院が嫌いだからということもあるけれど、ダラダラと伸ばしてバッサリと切った方がコストパフォーマンスがいいから、つい間が開いてしまう。それに、一気にバッサリ切った方が気分的にもさっぱりする。

金曜日の朝は大荒れの天候で、ときおり吹く突風にあおられて傘がダメになり、駅に着くまでにかなり濡れてしまった。当然のように髪の毛も爆発してしまい、その日は一日中憂鬱な気分だった。もうこのあたりが限界だなと判断し、土曜日の朝イチで近所の美容室に出かけた。いつもこんな感じで、前日や当日の朝に髪を切ろうと思い立つので、予約してから店にいくという習慣がない。

開店直後に行きつけの店に入って、カットなんですけど、いますぐできますかと尋ねたことろ、今日はすべて予約でいっぱいですと断られてしまった。この店は、経営状態が心配になるほどいつも空いていたから、まさかこんな展開になるとは思っていなかった。もうすぐにでも切ってもらいたかったので、この店はあきらめて、すぐ隣の店に行ってみた。

この店にも以前に何度か通ったことがあるのだが、若干料金が高いのと、店長さんがちょっと苦手なタイプの男子だったこともあり、いつの間にか足が遠のいていた。受付の若い女子にいますぐカットできますかと訊いたところ、大丈夫という返事だった。やれやれと安心して鏡の前の椅子に座り、半年くらい伸ばしていたので、その分だけバッサリやっちゃってくださいとお願いした。

その日は、自分が苦手なイケメンの店長さんではなく、受付で対応してくれた若い女子にカットしてもらった。カット中はよけいな世間話をしてくることもなく、ベタベタとしたウェットな接客が大嫌いな自分にとっては、好感度の高い接客態度だ。自分が美容院嫌いなのは、カット中によけいな世間話をしてくることが多いからというのが一番の理由だ。だから、黙々とカットだけしてくれれば、好感度はおのずと高くなる。

カットを終えて料金を払うときに、カードを作りますかと女子に訊かれた。またこの店に来るかどうかはわからないが、カードを作らないというのもなんだか失礼な気がして、はいお願いしますと答えた。名前や誕生日などを書かされるのは面倒だけれど、まあそれくらいはしかたない。髪を切って気分もさっぱりしたことだし、ここは気持ちよく対応しておこう。

などと考えていると、ではこちらをどうぞと言って、女子がカードを渡してくれた。あれ、名前とかは書かなくていいのかなと思ってカードを見ると、すでに「永橋新吾」という手書きの名前が入っているではないか。どうして自分の名前を知っているのか訊こうかと思ったが、なんだか訊かない方がいいような気がして、そのまま店を出た。

しかし、どうして自分の名前を知っていたのかと考えると、なんだか少し怖い。以前に何回か通ったことがあるといっても、もう何年も前のことだ。今日カットしてもらった女子にしても、見覚えがあるようなないようなで、記憶が定かではない。客として通っていた自分がその程度の記憶しかないのに、毎日大勢の客を相手にしているお店の人が、数年前に何回か通っただけの客のことを覚えているものだろうか。

しかし、こちらからは自分の情報については一切話していないから、やっぱり自分のことを覚えていたのだろう。そう考えると、なんとも言えない居心地の悪さを感じてしまう。この居心地の悪さをうまく説明するのは難しいけれど、自分という人間が、他人の記憶の中に存在しているという事実がなんだか怖いというかイヤなのだ。

これと似たようなことは、以前に通っていたラーメン屋でも経験したことがある。その店には月に2〜3回くらいのペースで通っていて、いつも麺固めで注文していたのだが、その日はたまたまノーマルで注文してみた。すると、店の若い男子スタッフから、あれ、今日は麺固めでなくて大丈夫ですか? と訊かれてしまった。このときも、同じような居心地の悪さを感じた。

月に2〜3回のペースとはいえ、自分の顔は覚えられているだろうなとは思っていたが、面と向かってはっきりとその事実を伝えられると、途端に居心地が悪くなる。結局、この店からは自然と足が遠のいてしまった。もちろん、こんな自分にも行きつけのお店は何件かあるが、正直なところ、常連として認識されるというのは、自分にとってあまり嬉しいことではない。

基本的に、あまり目立ちたくないのだと思う。たとえば、職場でのことを例にすると、夕方に仕事を終えて帰るときに、お先に失礼します、という挨拶をしたときにはじめて、ああ、今日はアイツいたんだ、全然気付かなかった、と周囲の人間に思われるくらいの状態が理想だ。いるのかいないのかわからない、だから、だれからも気にされない、というくらいの存在感の薄さを目標としている。

まあ、そんなことを心配しなくても、実際にまったく目立っていないとは思うが、どんなに気配を消しているつもりでも、美容院の女子やラーメン屋の男子などの記憶に残ることは避けられないようだ。こんなことを考えるなんて、かなり自意識過剰なのだろう。若い頃からそうした傾向はあったけれど、最近になってますます強くなっているような気がする。



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