12/12/02

ロードバイクの文化人類学

なんだか急に寒くなってきた。寒くなると、血の巡りが悪くなるせいか、覚書のネタが浮かばなくなる傾向がある。実は一年中ネタに困っているということは隠しつつ、今回はロードバイクに関することについてツラツラと書いてみたい。ネタに困ったときは、とりあえず自分の趣味について書いておけばなんとかなる。

最近は本当にロードバイクが流行しているようで、どこを走ってもローディーと遭遇しないことはない。休日の荒川サイクリングロードなんてローディーで満員だし、千葉のどんな山奥を走っても、必ず何人かのローディーとすれちがう。自分の愛好する趣味が世の中に広がっていくというのは嬉しいことではあるけれど、これだけ流行すると、「もうそろそろいいんじゃね?」という気もしてくる。

ただ、一口にローディーと言っても、実はさまざまなタイプが存在する。大きく分けると、積極的にいろんなレースに参戦してガンガン走るタイプと、マイペースでのんびりと走るタイプとが存在する。レース志向のタイプの人たちの中でも、ヒルクライム派の人もいれば、タイムトライアル派の人もいるし、のんびりタイプの人たちの中でも、ロングライド派の人もいれば、ポタリング派の人もいる。

最初にロードバイクを買った時点では、自分がどの方向に向かっていくのかということは、もちろんわからない。しかし、おおよその傾向として、社交的な人というのは、レースタイプの方向に向かっていく傾向があると思う。逆に、自分のように人付き合いがヘタな人間は、最終的にのんびりタイプになる傾向が強い。

なぜならば、社交的な人というのは、いろんなロードバイク愛好者の集まりに積極的に参加するからだ。ロードバイクのショップには、愛好者が集まるクラブやサークルがあるし、ネットでも、そうしたサークルはすぐに見つかる。社交的な人は、一緒に走る仲間を見つけるために、こうしたクラブやサークルに参加するわけだ。

いろんな人たちと一緒に走るということになれば、当然いろんな情報が入ってくるし、刺激も受けるだろう。各地で開催されるレースや大会の情報も入ってくるだろうから、自分も出てみたいと考えるのは自然なことだ。一人で出場するのはちょっと、という場合でも、仲間と一緒に参加することで、そうした心理的なハードルも簡単に超えることができる。こうして、バリバリの走り屋が誕生するわけだ。

一方、人付き合いがヘタな人は、そもそもサークルに入ろうなどとは思わない。こういう人は、ショップでロードバイクを買うのでさえ、かなりの勇気を振り絞っているのだ。忙しそうに仕事をしていたり、常連さんと楽しそうに話しているスタッフをつかまえて、自分は初心者なのですが、どんなバイクを買ったらいいですかと尋ねるのは、かなりの勇気を必要とする。

中には、「いま忙しいんだよ、見りゃわかんだろ。お前みたいなド素人の相手をしてるヒマなんてねえんだよ。わかったらとっと帰れ、このボケ!」みたいなオーラを出しているスタッフもいて、結局何も買わずにショップを出てきたことも一度や二度ではない。こんな調子だから、普通の自転車屋さんはともかく、いまだにロードバイクのプロショップは怖くて入れない。

さて、こういう小心者の人間が勇気を振り絞ってロードバイクを手にした場合、後の行動は簡単に推測できる。まずは、普段着のまま、近所のサイクリングロードに出かけ、その切れ味鋭い乗り心地に感動する。徐々に走行距離を伸ばしながら、次に一般道へとデビューする。ここで、最初の挫折が待ち受けている。

それは、脇をビュンビュンと走り抜けていくクルマだ。正直、最初にロードバイクで交通量の多い車道を走ったときには怖かった。大型のダンプが脇を走り抜けていくときは、いまだに怖い。この怖さに挫折してしまうと、ロードバイクから離れてしまうか、交通量の少ない道路をゆっくりと流すポタリング派へと移行していくわけだ。

この洗礼になんとか耐えた人は、それからさらに走行距離を延ばしていく。それと同時に、装備やウェアも本格的になってきて、ぱっと見ただけでは、本格的なローディーと変わらなくなる。一日に100キロくらいは平気で走れるようになり、調子に乗ってヒルクライムに挑戦したりするのもこれくらいの時期だ。

ここで、本格的に走りに目覚めた人は、レースやイベントに参加する方向へと向かっていく。いくら内向的な人でも、一度目覚めたアスリート魂を抑え込むのは難しい。レースやイベントへの参加がきっかけで仲間ができ、ここでようやくサークルやクラブに加入するというパターンもある。社交的な人と比較すると、少しばかり遠回りになるが、この場合もバリバリの走り屋が誕生することになる。

しかし、いくら走ってもそれほど速くならない人は、人と競うということはあきらめて、マイペースで走ることを選ぶようになる。こうして、後ろから走り屋のローディーにサクッと抜かれても、まったく気にせず自分のペースを守って走るのんびりタイプが誕生するわけだ。改めて言うまでもなく、自分はこのタイプの人間だ。

そもそも、大勢で走って何が楽しいのだろうと思ってしまう。自転車のいいところは、いろんなことを考えながら、周囲の景色を楽しみながら、自分のペースで走れるところにあると思っている。それなのに、何が悲しくて周りのペースに合わせて走らなければならないのか。これは自転車のイベントにしても同じことで、他人と競ったり、一緒に走りたいなどと思ったことは一度もない。

ということで、ロードバイクに乗らない人から見ると、街中で派手なウェアを着てロードバイクに乗っている人は、みんなバリバリの走り屋に見えるかもしれないが、実際にはいろいろなタイプの人がいるということだ。むしろ、自分のようにマイペース派の人が多いと思う。みんながみんなバリバリの走り屋では、こちらとしてもなんだか落ち着かない。




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