11/12/18

カーブの思い出

やっぱり今週もネタ枯れだったりする。何か面白いネタはないものかとあれこれ考えたのだが、いっこうに思い浮かばない。こんな場合、以前ならば無理矢理にでもネタをひねり出して書いていたのだが、画期的なネタ枯れ対策を考案したいまとなっては余裕だ。今回も、前回にならって単語カードを適当にめくってみよう。

ということで、今回のお題は「curb」に決定した。これは、「抑制する」とか「食い止める」といった意味の単語だ。ちなみに、「carve」は「掘る、刻む」という意味で、「curve」は「曲がった」という意味になる。どの単語も見た目が似ているのでまぎらわしい。せっかくなので、この3つの単語をまとめて覚えておくといいよ。

それはともかく、今回のお題は前回のお題である「continence(自制)」と若干かぶっていて、なんだか難しい。単語カードには何千という単語がストックされているから一生ネタ枯れに苦しむことはないだろうと思っていたのだが、意味が重複する単語を考慮すると、ネタとして使える単語は意外に少ないのかもしれない。

そんな意外な弱点が露呈したところで、本題に入っていこう。しかし、このお題ではいくら考えても面白い展開にはなりそうにないので、今回は「curve」をネタにすることしよう。カーブといえば、やっぱり野球だよね。自分は運動神経はあまりよくないが、子供の頃は野球少年だった。まあ、当時はそれくらいしか遊びがなかったということもあるけれど。

休みの日は、小学校のグラウンドに行けば、必ず何人かが集まって野球をしていた。そこに混ぜてもらってよく遊んだものだ。もちろん、将来の夢はプロ野球の選手になることだった。入団する球団まで具体的に決めていて、近鉄に入ることを目標にしていた。実は圧倒的に巨人ファンだったのだが、入る球団は近鉄と決めていたのだ。

なぜかと言えば、巨人は人気球団だから、入団できたとしても活躍できるとは限らない。その点、パリーグの近鉄ならば人気がないから、入団してすぐに主力選手として活躍できるだろうという計算があったのだ。小学生にしてこの計算高さは我ながらすごいと思うが、そもそも自分にそんな力などないということにまでは考えが及ばなかったらしい。

もちろん、ピッチャーとして活躍することを夢見ていた。なんといっても、野球で一番カッコよくて目立つのはピッチャーだ。ということで、頑張ってピッチングの練習をするわけだが、そのうちに変化球を投げてみたくなるのは、だれしも同じだろう。そこで、「ONの野球教室」みたいな本をおじいちゃんに買ってもらったような記憶がある。

ピッチャーでもない王さんと長嶋さんがピッチングについて解説するという、いまから考えるとなんとも不思議な本だったが、当時のONの人気は絶大で、とにかく「ON」の名前さえ付けておけば売れるという時代だったのだ。自分も、長嶋さんの「巨人軍は永久に不滅です」という名台詞をテレビで見て感動した一人だ。まだ小学2年生くらいだったと思うが、鮮明に覚えている。

早速、ONの教えに従ってカーブを投げてみたのだが、これが見事に曲がらない。カーブだけでなく、シュートやスライダー、ナックルボールやフォークボールまで試してみたが、もちろんまったく変化しない。普通のストレートでさえヒョロヒョロ球なのに、おかしな変化球を投げると、さらにヒョロヒョロ球になってしまう。

中学生になったら野球部に入ったが、やっぱり変化球を投げられるようにはならなかった。先輩たちもストレートばかりで、カーブを投げられる人はいなかったと思う。さらには、他校との試合でも、カーブに遭遇した記憶はない。きっと、カーブを投げられる人なんていなかったのだろう。つまりは、それほどレベルの高い魔球だということだ。

しかし、高校生になって友人たちと草野球をしたときに、ものすごいカーブを見てしまった。ある一人の友人が、目の前でカーブを披露してくれたのだが、それはものすごいカーブだった。ドロンと曲がる「ションベンカーブ」ではなく、本当に鋭く変化する魔球だった。おお、なんてすごい魔球なんだと、かなり興奮したことを覚えている。

驚くことに、彼は野球部の選手ではなかった。なにかの運動部に所属していたかどうか、そのあたりの記憶は定かではないが、とにかく独学でカーブを覚えたらしい。やっぱり、彼も「ONの野球教室」を読んで練習したのだろうか。自分のようにすぐにあきらめてしまったのではなく、人知れず猛特訓をしたのだろうか。

まだカーブへの憧れを捨て切れていなかった自分は、彼に投げ方を教わろうかとも思ったのだが、それもなんだか悔しくて、彼の投げるカーブに、「ふーん、なかなかやるね」程度の冷めた視線を送ってしまった。心の中では、「うおお、コイツすげえーよ!」と大絶賛の嵐なのだが、思春期特有の妙なプライドのせいで、素直に感情を表現できなかったのだ。

結局、一度もカーブを投げることなくこの歳になってしまった。実は、いまだにカーブに対する憧れはもっていて、チャンスがあれば投げてみたいと思っているのだが、そんな機会はまったくない。カーブを投げたいというだけで、どこかの草野球チームに入るなんて面倒だ。きっと、一度もカーブを投げることなく死んでいくんだろう。なんだか心残りだ。



今週の覚書一覧へ

TOP