11/11/27

祝・稀勢の里大関昇進

ついに、稀勢の里(ネット上での愛称はキセノン)の大関昇進が決定した。昇進の目安となる3場所合計33勝には勝ち星がわずかに1つだけ足りなかっただけに、この昇進にはいろいろと批判も出るだろうが、とりあえずキセノンファンの自分としては嬉しいニュースだ。でも、やっぱり最後はスッキリと勝ってほしかった。負けて昇進なんて、なんだか複雑な気分だ。

キセノンファンとしては、もちろん大関昇進は嬉しいのだが、上位陣に対する対戦成績がよくないのが非常に気になる。日馬富士にも琴欧州にも把瑠都にも琴奨菊にも大きく負け越しているし、今場所にしたって琴欧州にラッキーな勝ち方をしただけで、他の大関陣にはすべて負けているのだ。だから、最後の琴奨菊にだけは絶対に勝ってほしかった。

とりあえず、ここまでの道のりは長かった。新十両から新三役までは、そのしこ名のとおりにものすごい勢いで駆け上っていったから、新入幕の頃から注目していた自分は、ひさしぶりに期待できそうな力士が登場してきたとワクワクしたものだ。しかし、そこからはピタリと勢いが止まってしまった。

気が付くと、平幕と三役を行ったり来たりする「エレベーター力士」になりかけていて、ファンとしてはなんともイライラの募る時期が長く続いた。去年の最初の覚書で、「今年も大関に昇進できなかったら、このままエレベーター力士になってしまう可能性が高い」と書いたが、結局去年はいいところなしで終わったので、もうダメかもしれないと密かに思っていた。

しかし、そう思いかけたところで、白鵬の連勝記録を止めたりしたものだからタチが悪い。ふがいない相撲が続いて、「もうキセノンのことなんて応援してあげないんだからね!」と思った途端にものすごい強さを見せたりするものだから、なかなかスッパリとキセンファンをやめることができない。よくわからないが、こういうのをツンデレというのだろうか。いや、違うか。

キセノンのどこが好きかというと、とにかくガチンコに徹しているところがいい。とかく八百長の噂の絶えない角界にあって、どの関係者も口を揃えるのが、「稀勢の里だけは絶対にガチンコだ」ということだ。魁皇、千代大海、琴光喜というロートル大関のかなり怪しい相撲を見せられているだけに、やっぱりガチンコ力士は応援したくなる。

貴乃花親方がやたらとキセノンに肩入れしているのは、知る人ぞ知る事実なのだが、現役時代をガチンコ一筋で貫き通した親方にしてみれば、同じガチンコ道を貫き通すキセノンには自然と肩入れしたくなるということだろう。また、同じ中卒の叩き上げというところにも、親近感を覚えているのかもしれない。

そう、キセノンはいまの時代には珍しく、中学を卒業してすぐに鳴門部屋に入門したのだ。以前は中卒で相撲部屋に入門するのが当たり前だったが、いまでは学生相撲を経験してから幕下付け出しでデビューするパターンが増えている。

相撲に詳しくないよい子のために説明すると、相撲の番付には6つのレベルがあって、下から序ノ口、序二段、三段目、幕下、十両、幕内となる。関取と呼ばれて大銀杏を結えるのは十両からで、幕下以下の番付の力士は十両以上の力士の付き人をしなければならず、待遇面でも給料面でも、幕下と十両とでは天と地ほどの差がある。

中卒で入門した場合、序の口から始めて地道に番付を上げていくわけだが、学生相撲やアマチュアの大会で優秀な成績を収めた場合は、優遇措置としていきなり幕下からデビューすることができる。これが、幕下付け出しというシステムだ。勝ち越しを続ければ3場所くらいで十両に上がることもできるから、下積みを嫌う若い衆にとっては魅力的なシステムだ。

なんだか説明が長くなったが、キセノンの場合は、その恵まれた体格を活かして学生相撲を経験してからデビューするという選択肢もあったのに、あえて中卒で入門するという道を選んだわけだ。泣かせるじゃないか。もっと泣かせるのが、中学の卒業文集に書いた次の文章だ。

「天才は生まれつきです。もうなれません。努力です。努力で天才に勝ちます」

なんとも泣かせるじゃないか。この文章を読んだ瞬間に、努力とはまったく無縁の自分は、一気にキセノンファンになってしまったというわけだ。

また、相撲内容がまっすぐなのも見ていて気持ちがいい。負けが込んだりすると、勝ち星ほしさに立ち合いで変化する力士も少なくないが、キセンノンに限って、そういう姑息な相撲は一切ない。逆に、そこを相手力士に利用されて立ち合いに変化され、コロリと負けてしまう相撲も少なくない。このあたりは、見ていてなんとも歯がゆい。

勝つときは圧倒的な強さで勝つから気持ちがいいのだが、負けるときはあっさりと負けるのが困る。キセノンの場合、足が長いこともあって、腰が高い。だから、相手に簡単に懐に入られる。琴奨菊などは理想的な力士体型で、足が短いから下半身がどっしりと安定していて、相撲にも抜群の安定感がある。

また、脇が甘いのも気になる。立ち合いで安易に張り差しにいって、簡単に双差しを許してしまう相撲が少なくない。今場所の豪栄道との取り組みがまさにそれだった。張り差しという戦法は、横綱や大関が格下の相手に用いる戦法なのだから、そこまで大物感を出すのは早いと思うのだが、なかなか張り差しをやめる気配はない。

この調子で書いていくと、なんだか止まらなくなりそうなのでこのあたりにしておこう。とにかく、外野からはいろいろな声が聞こえてくるだろうが、そんなことは気にせず堂々と胸を張って大関に昇進してほしい。「地位が人をつくる」という言葉のとおり、大関になれば大関にふさわしい実力が付くものと信じている。頑張れ、キセノン!



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