11/11/06

ロードバイク乗りの不思議な習性

今年は例年に比べてかなり暖かいようで、11月に入っても最高気温が20℃を超える日が続いている。普通なら、この時季くらいになると冬用のバイクジャージに衣替えするのだが、今年はまだ夏用のバイクジャージでも充分に走れる。ロードバイク乗りとしてはありがたい気候だが、そろそろ寒くなってほしいような気もする。

ということで、今回はロードバイクに乗る人たちの不思議な習性について書いてみたい。一つの趣味に深くはまってしまうと、その趣味には興味のない人から見たら不思議に思える行動を取ってしまうもので、たとえば、ホームの先端で大きなカメラをかまえて、入線してくる電車を写している鉄道ファンなどがそうだ。正直、こんなことをして何が楽しいのか、さっぱりわからない。

しかし、自分たちロードバイク乗りにしたって、ロードバイクに興味のない人たちの目には、相当に不思議な生き物として映っているのだろうと思う。実際、自分でロードバイクに乗る前は、ローディーたちのことを冷ややかな視線でながめていた。あんなおかしな格好で自転車に乗ってよく恥ずかしくないものだ、くらいに思っていたのだ。

おそらく、ローディーに対する感想で一番多いのが、あのピチピチジャージに関するものだと思う。たかが自転車に乗るくらいで、なぜあんなにド派手で恥ずかしい格好をしなければいけないのか、といった感想が多いと思う。自分も以前はそうだったからよくわかる。自分は絶対にあんな恥ずかしい格好だけはしないぞと心に誓っていた。

しかし、そんな誓いもどこへやら、いまではすっかりピチピチ君たちの仲間入りをはたしてしまった。バイクジャージを着ると走りやすいということも当然あるのだが、ある程度走り込んで体力が付いてくると、やっぱり本格的に走りたくなるのだ。カジュアルな格好でガシガシ走ってもかまわないけれど、やっぱりバイクジャージを着たほうが気合いが入る。

ピチピチジャージという高い壁を一度越えてしまうと、もうカジュアルな格好をしてロードバイクに乗ろうという気にはならない。以前はあんなに恥ずかしいと感じていたピチピチジャージが、なんだかカッコよく思えてくるから不思議だ。いまではバイクジャージのまま、ラーメン屋でもコンビニでも平気で入ってしまう自分がいる。

ただ、いまだに最後の一線を越えられない壁があって、それは「エチケットパンツを脱ぎ去る」という壁だ。エチケットパンツというのは、あのピチピチしたレーサーパンツの上に穿く短パンのことで、モッコリ感による不快な感じをほかの人に与えないようにするためものだ。ほとんどのローディーがピチピチなままで堂々としているが、この壁だけはどうしても越えられそうにない。

さらに驚くべきローディーの習性として、「すね毛を剃る」という行為がある。なんと、ローディーは男子であってもすね毛を剃っているのだ。もちろん、すね毛がボーボーのままレーサーパンツを穿いている人もいるが、気合いの入ったローディーはすね毛をきれいに剃っている人が多い。いろんなスポーツがあるけれど、男子がすね毛を剃るスポーツなんて水泳とロードバイクくらいじゃないだろうか。

なぜすね毛を剃るのかといえば、プロの選手たちが剃っているから、それを真似しているだけのことだ。そのプロ選手にしたって、実用的な理由があって剃っているわけではなく、単純に見た目がきれいだというだけの理由で剃っているのだと思う。脚にケガをしたときに手当てがしやすいから、みたいなもっともらしい理由もあるが、おそらくは後付けの理由だろう。

ちなみに、自分は剃っていない。なぜならば、夏でもロングタイツを穿いているからだ。夏にロングタイツと聞くと「暑そうだなあ」と感じるかもしれないが、実は意外に涼しい。むしろ、素肌をさらして走っていると、日に焼けた肌が熱を持ってくるから、かえって暑く感じる。だから、自分の場合は真夏でも長袖にロングタイツという格好で走っている。

こうした外見に関することだけでなく、「距離感が壊れる」という不思議な習性がローディーにはある。天気のいい休日ともなると、ローディーは喜び勇んでバイクにまたがり、そのまま一日中ペダルを回し続ける。100キロくらいでは全然物足りなくて、200キロくらい走ってようやく満足するという人たちばかりだ。

こうなると、完全に距離感がおかしくなる。たとえば、50〜60キロくらいの距離ならば、電車に乗るよりも自転車に乗った方が早いな、などと考えてしまうのだ。冷静に考えれば、絶対に電車に乗った方が早いに決まっているのだが、50〜60キロなんてあっという間の距離くらいにしか感じられなくなってくる。

駅まで歩いていって電車に乗り、混んだ車内で吊革につかまり、人混みに飲み込まれながら何回か電車を乗り換えて、なんていうストレスの溜まる移動手段を選ぶより、いきなりバイクに乗って走った方がずっと手っ取り早い、みたいな考え方になってくるのだ。ローディーにとって、100キロに満たない距離というのは、近所の公園を散歩するくらいの感覚だ。

こんな感じで、ロードバイク乗りには、普通の人にとっては理解しがたい不思議な習性がたくさんある。最近は自転車ブームらしく、街中でも派手なローディーをよく見かけるようになってきたが、ピチピチのレーパンから覗くすねがツルツルに剃り上げられていたとしても、どうか生暖かい視線で見守っていただきたい。



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