11/07/03

熱中症の入り口を覗いた日

梅雨明けはまだ先らしいが、本格的に暑くなってきた。先週の水曜日には、都内で今年初めての猛暑日になったらしい。たしかにこの日は暑かった。あまりの暑さに、もしかしたらこのまま溶けてなくなってしまうんじゃないかと思うくらいに暑かった。というのも、このクソ暑い日にわざわざロードバイクに乗ったからだ。

たまたまこの日に休みを取っていた自分は、朝起きてきれいに晴れた青空を目にした瞬間に、思わずバイクジャージに袖を通してしまった。今年は梅雨入りが早くて、週末になるといつも雨に降られていたからなかなかロードバイクに乗れず、かなりフラストレーションが溜まっていたのだ。

そうは言っても、最高気温32℃という天気予報を見たときには一瞬だが躊躇した。湿度も相当に高く、蒸し暑い一日になるらしい。なにしろ自分は軟弱者だから、真夏日にロングライドに出かけたことはこれまでほとんどない。暑い中を走っても辛いだけで楽しくないから、そうしたことは一切避けてきた。

しかし、これまでに溜まったフラストレーションには勝てず、ついついビアンキ君にまたがって走り出してしまった。朝のうちはまだ涼しいだろうと思っていたのに、いきなり暑い。信号待ちで止まると、顔に当たる日光が暑いのを通りこして痛いくらいだ。走っている方が風が当たるからまだ涼しい。

じっとしているよりも動いていた方が涼しいというのもすごいが、とにかく走り出した以上はペダルを回し続けるしかない。今日のところはアップダウンのある内陸部は避けて、フラットな内房の海岸線を走る作戦でいこうと決めた。こんな日にヒルクライムなんてやったら、もしかしたら死ぬかもしれない。

そんな感じでタラタラと走り、昼飯にしようと思ってバイクを止めた。日焼け止めを塗りなおそうとして顔をさわってみると、ザラザラとした感触が指にあたる。なめてみるとしょっぱい。どうやら、ものすごい勢いで身体から塩が噴き出しているようだ。失った塩分を補わなければいけないという言い訳で、ラーメン屋に入った。

節電のためなのか、店内の空気は微妙にぬるい。汗が引かないうちに運ばれてきた熱々のラーメンをすすると、また汗が噴き出してくる。塩分を摂っている端から塩分を排出するとは、なんとも非効率だ。というか、こんな暑い日に熱々のラーメンを食べること自体が間違っているような気がする。

あまりにも暑いので、食事の後はラーメン屋の隣にあるコンビニで涼ませてもらうことにした。ラーメン屋のぬるい空気とは違って、コンビニの店内は気持ちよく冷えている。30分ほど立ち読みをして汗が引いたところで外に出ると、さらに気温が上がっているように感じる。

そのまま道を南下していくと、「マザー牧場 この先の信号を左折」という看板が目に入った。何を思ったのか、その案内のとおりに信号を左折してマザー牧場に向かう自分がいた。今日はフラットな海岸線を走ろうと決めていたのに、なぜか身体が勝手にヒルクライムへと向かおうとしている。

いったいこのときの自分は何を考えていたのか、いまでもよくわからない。暑さのせいで思考能力が低下していたとしか思えない。マザー牧場にはこれまでに何回も登っているが、貧脚の自分は冬でも汗だくになるのに、こんなに暑い日に登ったらいったいどうなるのだろうか。もしかしたら死ぬんじゃないだろうか。

一度登り出してしまったら、頂上にたどり着くまでは絶対にバイクからは降りないというのがロードバイク乗りの悲しい性で、ゼーゼーとあえぎながら坂を登っていく。何が楽しくてこんな暑い中を息を切らせて坂道を登るのか自分でもよくわからないが、とにかく走り出したからには、頂上までノンストップで登りきるしかない。

もう少しで頂上が見えるところまで来たときに、なんだか頭が痛くなってきた。めまいがしたり吐き気を感じるほどではないが、ほんの少しだけ気分が悪い。なるほど、これが熱中症の入り口なのか、などと考えながら、なんとか坂を登りきった。すぐに自動販売機まで走り、500ml のスポーツドリンクのボタンを押す。

この調子であと2〜3キロ走っていたらヤバかったかもしれないと思いながら、よく冷えたスポーツドリンクを一気に飲み干した。どこか涼しい場所で休みたいところだが、あいにくどこにも日陰がない。しかたないから、そのままバイクに乗って一気に坂道を下る。噴き出した汗に強い風が当たって涼しい。

この日は、おそらく4〜5リットルくらいの水分を摂ったと思う。冬に走るときには1リットルくらいの水分補給で充分だから、この日はいかに大量の汗をかいたかがわかる。喉の渇きを感じるたびに、バイクを止めて自販機でドリンクを買うわけだから、いったい何のために走っているのかよくわからない。

夕方4時くらいに、「現在の気温 34℃」という道路脇の電光掲示が目に入った。ということは、ヘロヘロになりながらマザー牧場への坂を登っていたときには、35℃くらいあったのかもしれない。朝の天気予報では最高気温32℃という予想だったから、まさか猛暑日になっているとは思わなかった。どうりで暑いわけだ。

そんな感じで、猛暑の中を180キロほど走った。家に帰って速攻でシャワーを浴びて体重計に乗ってみると、体脂肪率が7.6パーセントと表示された。おお、なんだかものすごい数字だ。体脂肪率だけならイチローに迫る勢いではないか。まあ実際には、大量に水分を摂ったから、その分だけ体脂肪率が低く表示されただけのことだが。

ということで、意図せずに猛暑日のロングライドを体験してしまった。さすがにマザー牧場のヒルクライムは辛かったが、それを除けば意外に楽しかった。今回の経験で、「35℃ならば、マザー牧場まではオッケー」という基準ができたので、今後は真夏日のロングライドが増えそうな悪寒がする。



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