11/06/26

世界遺産について考えてみる

小笠原諸島と平泉が正式に世界遺産として登録されたらしい。おめでとうございます。平泉はともかく、小笠原には以前から行ってみたいと思っているのだが、なにしろフェリーで25時間30分もかかるから、気軽に行ける場所ではない。むしろ、海外に行く方が気軽に行けそうな気がする。

しかし、今回の世界遺産登録で、こうした交通手段も改善されるだろう。なんたって世界遺産だから、観光客が急激に増えるのは間違いない。高速船を投入するくらいの投資なら、すぐに元手は回収できるだろう。そうすれば島の人たちの暮らしだって便利になるし、何と言っても経済が潤うことになる。

日本のあちらこちらで、世界遺産登録に向けた活動を進めている場所があるようだが、どこもこうした経済的なメリットを期待して活動しているのだろう。自分の故郷である佐渡でも、佐渡金山を世界遺産にしようと活動しているらしい。石見銀山の例もあるから可能性としてはあるのかもしれないが、まあ難しいだろう。

どうして皆が必死になって世界遺産の登録を目指すのかといえば、当然ながら観光収入を期待してのことだろう。なにしろ、「世界遺産」だ。英語で言うと「World Heritage」だ。なんたってワールドなヘリテッジなわけですよ、奥さん。そんじょそこらの遺産とはわけが違いますから。

ということで、「世界遺産」という名前が付くだけで、一気に知名度が上がって観光客が殺到するものらしい。一般人はこういう権威付けにからきし弱くて、どこぞのタイヤメーカーが適当に星を付けただけのレストランに喜んで出かけたりする。まあ、自分もそういう人間の一人なのだけれど。

世界遺産もこれと同じで、ただ「世界遺産」という名前が付いただけなのに、それ自体の価値が一気に上がったように感じてしまう。実際には昔からそこにあるし、中味は何も変わっていないのに、「世界遺産」という名前が付いただけでものすごくありがたいものに感じてしまうものらしい。

これまでにもテレビ番組や旅行雑誌などで散々目にしているはずなのに、そのときには特に興味を示さず、世界遺産に登録された途端に喜んで出かけていき、「やっぱり世界遺産は違うわね、なんて素晴らしいんでしょう」みたいな感じでありがたがったりするわけだ。なんと単純なことだろう。

まあ、観光客を迎える方としてはそんな客の心理なんてどうでもよくて、要は大勢の観光客に来てもらってたくさんのお金を落としていってもらえればいいだけのことだ。そのためにこれまで頑張って活動してきたわけだから、晴れて登録されたら、今度は頑張って回収するだけのことだ。

観光開発が進んで環境破壊につながるとか、遺産の維持管理が大変だとか、いくつかのデメリットもあるだろうが、経済的なことを考えればメリットの方が圧倒的に大きいと思う。特に、過疎化が進んでいるような地域の場合、世界遺産に登録されれば一気に逆転ホームランみたいな感じだろう。

しかし、個人的に心配なのが、このまま世界遺産がどんどん増えていくと、それに伴って世界遺産の価値が落ちていくということだ。現在は全世界で900件を超える遺産が登録されているらしい。単純に考えると、世界遺産の数がこの倍になれば、それぞれの遺産の価値が半減するということになる。

このままの勢いで世界遺産が増えていけば、もしかしたら自分が住む稲毛地区も世界遺産に登録されるかもしれない。何と言っても、稲毛には知る人ぞ知る「稲毛海浜公園」がある。まあ、知らない人はまったく知らないと思うが、ここはゲイのハッテン場として全国的にも有名な場所なのだ。

稲毛に引っ越してきたばかりのとき、そんなことはまったく知らずにこの公園を散歩したことがあるのだが、そのときはまったくそんな怪しい気配は感じなかった。しかし、そういう場所だと知ってから改めて散策したときには、なるほど、それっぽい男子があちこちにいることに気付いた。

こういう人たちは、もう目を見ただけでそっち方面の人だとわかる。普通の人ならば、周囲の景色を楽しみながら歩くのが普通なのに、こういう人たちは男子とすれちがうたびにちらちらと表情を確認するから、ああ、この人はきっと自分と同じ趣味の人かどうか確認しているんだな、とピンとくる。

なんだか話が思い切り脱線してしまったが、このまま世界遺産が増え続ければ、稲毛海浜公園みたいな場所だって登録されないとも限らないということだ。そうなれば、この遺産はAランクでこっちの遺産はCランクだね、みたいな感じで、同じ世界遺産の中でもランキングみたいなものができてくるだろう。

そもそも、1,000近い世界遺産があるいまだって、そうしたランキングみたいな概念は存在する。失礼な話かもしれないが、エジプトのピラミッドやマチュピチュの遺跡と比べたら、熊野古道や石見銀山は地味だ。歴史的な価値や文化的な価値は同じなのかもしれないが、観光スポットとしての集客力では比較にならない。

ということで、このまま世界遺産を増やし続けていけば、相対的に世界遺産自体の価値も落ちていくという矛盾が発生する。とりあえず、どこかで上限を設けて、世界遺産の価値を維持する必要があるのではないだろうか。そうしないと、いつ稲毛海浜公園が世界遺産に登録されないとも限らないし。



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