11/05/15

外食産業にはなぜブラック企業が多いのか

それにしても、フーズフォーラスの社長の胡散臭さには驚くばかりだ。ケレン味たっぷりの芝居がかった謝罪会見にしてもそうだが、あの歳で眉毛を細く整えているというセンスからして、限りなく胡散臭い。それなりにイケ面であることは認めるが、企業の社長があんなに眉毛を細くしたらイカンだろう。

あの会見を見て、この会社で働く社員たちはきっと大変だろうなと同情してしまった。あの社長の外見や言動だけで会社全体を判断するのは乱暴かもしれないが、まず間違いなくフーズフォーラズという会社は「ブラック」だろう。薄給や長時間労働は当たり前、陰湿なイジメやパワハラも横行する暗黒の職場だと思う。

この会社に限らず、外食産業にはとにかくブラックな企業が多いと感じる。まあ、自分がそうした企業に入って直接体験したわけではないから、もしかしたらこの感想は間違っているのかもしれないが、いろいろなメディアの情報から判断する限り、外食産業は全体的にブラックな業界だと結論付けてもいいと思う。

テレビでも、急成長中の外食チェーン店の研修風景などをよく放送しているが、こういう番組を見るたびに、外食産業のブラックぶりを改めて認識してしまう。精神論ばかりの社訓を全員で大声で唱えてみたり、大勢の前で自分の決意表明を絶叫したりと、もうそれだけで2歩も3歩も引いてしまうような強烈さだ。

そんな感じで、教育係の上司が若手社員たちを徹底的に威圧しながら研修が進んでいくわけだが、最後には必ず感動のシーンが待っている。最初はオドオドして失敗ばかりしていたダメ社員が研修の最後にはなんとか仕事をこなせるようになると、それまで鬼の形相で叱り付けていた上司が眼に涙を浮かべながらその社員と抱擁したりするのだ。

テレビ向けにショーアップしている部分も当然あるだろうが、実際の研修現場でもあれに近いことはしているのだろうと思う。このあたりのテクニックは、一昔前に流行した自己啓発セミナーのそれとよく似ている。最初は受講生の人格を徹底的に攻撃して破壊し、最後にカタルシスを与えて思考を操作するテクニックだ。

つまり、外食産業とは、マインドコントロールのテクニックで社員の思考を操作する危ない業界だということだ。実際には、こういう研修を行っている企業はごく一部なのかもしれないが、こうした情報が流れてくるのが決まって外食産業だから、業界全体に対してどうしても胡散臭い印象を抱いてしまう。

では、なぜ外食産業にはブラック企業が多いのだろうか。結局のところ、新規参入が容易だというのが一番の理由だろうと思う。カネもコネも学歴もないけれどやる気だけは人一倍あるという若者が起業を決意した場合、いきなり精密機器製造会社や法律事務所や出版社を作るのは難しい。

しかし、飲食店ならばだれでも作ることができる。いや、だれでもできるというのは言いすぎだが(実際、自分には絶対にできないと思う)、カネもコネもない若者にとって比較的ハードルの低い分野であることは間違いない。わずかな初期費用と何名かのスタッフを揃えれば開店できる。極端な話、最初は自分ひとりで切り盛りしたってかまわない。

このように簡単に起業できる外食産業だから、カネもコネも学歴もないけれどやる気だけは人一倍あるという若者が大量に参入してくることになる。そうなると、当然のように生き残りをかけた価格競争が発生する。現在のデフレが、この価格競争をさらに激しいものにする。

価格を下げるために一番手っ取り早いのは人件費の削減だ。かくして、サービス残業や過酷な勤務シフトが当たり前のように横行する結果になる。ネットなどの情報を見るとそれは本当に悲惨で、店長ともなると一日16時間勤務というシフトもそれほど珍しくないようだ。

こうした悲惨な状況がネットなどを通じてもっと明るみに出てくれば、将来的には改善の方向に向かうと思う。しかし、外食産業全体の構造が根本的に改善されなければ、劇的な変化は期待できないだろうとも思う。この先については、高級店と大衆店という二極化が一層進んでいくような気がする。

品質やサービスは一流だが値段も超一流というお店と、ユッケを食べるのも命がけという低価格のお店に分かれていき、そこそこの値段でそこそこのサービスを提供するという普通のお店はどんどん少なくなっていくのではないだろうか。低価格のお店では外国人労働者が増えてきていることを見ても、そのあたりのことが予想される。

こうした傾向がいいことだとは思わないが、それを助長している責任は間違いなく自分たち利用者にある。高いお金は出せないけど、ちゃんとしたものを食べさせてね、という自分勝手な態度を変えない限り、ユッケを食べるのも命がけという危険なお店は絶対になくならない。それなりのサービスを受けたければ、それに見合う価格を支払うのは当然のことだ。



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