11/03/26

風評被害という名の人災

原発の騒ぎはまだまだ収まりそうにもない。収まるどこか、日を追うごとに事態が深刻になっているようにさえ見える。なにしろ、関東の水からも放射性物質が検出されたというのだから、穏やかではない。ここに来て、買い占めの嵐がカップ麺やレトルト食品だけにとどまらず、ペットボトル入りの水にまで広がっている。

水だけでなく、野菜や牛乳などの被害も深刻だ。福島や茨城の野菜から基準値を超える放射性物質が検出されたというニュースが流れたとたんに、こうした地域からの野菜や牛乳の出荷がストップされてしまった。出荷されたとしても、こうした地域の野菜は市場ではほとんど値がつかないらしい。

自分たち酪農家は少しも悪いことをしていないのに、と言いながら原乳を廃棄する男性がニュースに出ていたが、本当に農家にとっては辛いことだと思う。毎日出社しさえすれば日銭を稼げるサラリーマンとは違って、農家にとっては農作物だけが金を稼ぐ手段なのに、それを奪われてしまってはまさに死活問題だ。

一口に福島や茨城などとは言っても汚染されていない地域だってあるはずなのに、同じ県内だというだけでどこの店でも野菜を仕入れてくれないのだから辛い。そもそも、汚染されているといってもごく微量で、それこそバカみたいに大量に食べなければ何の影響もない。

自分だったら、福島県産だろうが茨城県産だろうが気にせずに食べる。むしろ、こうした地域の野菜と関西方面の野菜が並んでいたら、積極的に前者の野菜を手に取る。柳井社長みたいにポンと10億円を出すなんてことはとてもできないから、せめてこうしたことで被災地を応援したいと思っている。

しかし、肝心の野菜が被災地からまったく入荷されないのだから、応援のしようがない。どこの売り場でも、被災地からの野菜は完全に消えてしまった。自分のように考えている人は決して少なくないと思うのだが、こういう場合は必ず一部のヒステリックな人たちの声のほうが大きく響いてしまう。

大多数の良識ある人たちが「いくらでも食べるから、被災地から野菜や牛乳をどんどん入荷してくれ」と言ったところで、一部のヒステリックな人たちが「放射能に汚染された食品なんてとんでもない、万が一のことがあったら補償してくれるのか」と言えばそれでおしまいだ。弱腰の流通業界がこうした声に逆らえるはずがない。

同じ被災地でも、汚染されていない地域の食品だけはきっちりと区別して出荷してほしいと思う。そうでなければ、農家の人たちがあまりにもかわいそうだ。一部の自分勝手な消費者のために、何の罪もない農家の人たちが泣かなければいけないなんて、あまりにも理不尽すぎる。

そもそも、福島にある原発のおかげで、自分たち関東に住む人間はこれまで快適な生活を送ってくることができたわけだ。それなのに、原発事故が起こったら、もう福島の野菜は一切食べませんなんて、自分勝手すぎるとは思わないのだろうか。被災地の人たちのことを少しでも思う気持ちがあったら、無理してでも食べろと言いたい。

大丈夫、汚染された野菜を食べたって死にはしない。専門家の話によれば、こうした野菜を食べるよりも、タバコを吸うほうがはるかに健康には害があるということだ。もしも、こうしたヒステリックな人たちの中に愛煙家がいるとすれば、その人はかなりマヌケなことをしていることになる。マヌケというよりも単なるバカだ。

政府にしても、もっと正確な情報を出して一部の無知な消費者を啓蒙すべきだと思う。まあ、こういう無知な人たちは、政府や専門家が何を言ったところで「信用できないから」という一言で終わりだろう。信用できないなら自分で正確な情報を調べるべきなのに、それもしないでただ不安におびえているだけだからタチが悪い。

こういう人たちは、自分たちの無責任な言動が被災地の農家の人たちの生活を脅かしていることを自覚し、さらには風評被害という名の人災を引き起こしているのは自分たちだと自覚すべきなのだが、それを期待するのは無理だろう。きっと、そこまで頭が回るような人たちではないだろうから。

こうなったら、地震発生以降すっかり表舞台に顔を見せなくなった管さんの出番だろう。その昔、O157の風評被害を抑えるために記者会見の場でカイワレをワシワシと食べたように、今回も被災地の牛乳をゴクゴクと飲みながら野菜をワシワシと食べてもらいたい。管さんにできる仕事はきっとそれくらいだろうから。



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