11/01/23

問題文を読まずに選択肢だけで正解を導き出す方法

どうやらセンター試験が終わったらしい。一年で一番寒いこの時期に大事な試験があるというのは、受験生にとってはなにかと大変だ。自分も、共通一次試験を受けたときには雪が降って寒かったことや、二次試験の前日に39度近い熱が出て死にそうになったことを思い出す。なにはともあれ、体調にだけは注意してもらいたい。

ということで、今回はセンター試験の攻略法について書いてみたい。このタイトルにもあるとおり、マークシート方式の試験では、問題文を読まずに選択肢だけで正解を導き出す方法が存在する(ただし、国語の試験に限る)。今年の現代文の試験で以下のような設問があったので、これを例に考えてみよう。

1. 身体との関係が安定した空間では人間の身体が孤立することはないが、他のひとびとと暮らすなかで自然と身に付いた習慣によって、身体が侵蝕されているということ。

2. 暮らしの空間でさまざまな記憶を蓄積してきた身体は、不自然な姿勢をたちまち正してしまうように、人間の身体はそれぞれの空間で経験してきた規律に完全に支配されているということ。

3. 生活空間のなかで身に付いた感覚によって身体が規定されていしまうのではなく、経験してきた動作の記憶を忘れ去ることで、人間の身体は新しい空間に適応し続けているということ。

4. バリアフリーに作られた空間では身体が空間から疎外されてしまうが、具体的な生活経験を伴う空間では、人間の身体は空間と調和していくことができるのでふるまいを自発的に選択できているということ。

5. ただ物理的に空間の内部に身体が存在するのではなく、人間の身体が空間やその空間にいるひとびとと互いに関係しながら、みずからの身体の記憶に促されることでふるまいを決定しているということ。

本文をまったく読まずに、この5つの選択肢だけを読んでどれが正解かわかるだろうか。このくらいのレベルの問題であれば、正解を導き出すのはそれほど難しくない。要は、一番それらしい選択肢を選べばいいだけのことだ。こういう選択肢には悪文が多いが、その中でも理論的に筋が通っているものを選べば自動的にそれが正解になる。

まず1番の選択肢だが、これは「身体が侵蝕されている」という部分を見ただけで不正解だとわかる。身に付いた習慣によって身体が侵蝕されるなんて、いったい何が言いたいのかさっぱりわからない。こういう意味の通らない悪文は不正解だと考えてまず間違いない。

2番については、「不自然な姿勢をたちまち正してしまうように」の部分がおかしいように感じるが、絶対に間違いだとまでは言い切れない。とりあえず、この選択肢については後回しにしよう。

3番については、「経験してきた動作の記憶を忘れ去ることで」の部分が明らかにおかしい。新しい空間に適応するためにそれまでの動作の記憶を忘れなければならないなんて、そんなバカな話があるわけがない。これが正しいとすれば、新しい空間に移動するたびに人間の身体は退化していくことになる。

4番については、「バリアフリーに作られた空間では身体が空間から疎外されてしまう」の部分がおかしい。バリアフリーというのは身体に優しい空間でなければいけないはずなのに、「身体が空間から疎外されて」しまったら、そもそもバリアフリーの意味がない。従って、これも不正解。

これで、残った選択肢は2と5だけになった。5もかなりの悪文ではあるが、文章自体に矛盾はないように見える。2については、やはり「不自然な姿勢をたちまち正してしまうように」の部分が気になる。夜に眠れないときなど、わざと不自然な姿勢を取ることもあるが、そのときに自分の身体が「たちまち正す」というようなことはない。

こうして見ていくと、一番正解らしいのは5番の選択肢ということになる。解答を確認してみると、正解はやっぱり5番だった。ということで、選択肢だけでも充分に正解を導き出せることがわかった。この問題だけが特別易しいのではないかと思う人もいるかもしれないので、もう一問だけ見てみよう。

1. 木造家屋を再利用したグループホームという空間では、人のふるまいが制約されているということとひきかえに、伝統的な暮らしを取り戻す可能性があるということ。

2. 木造家屋を再利用したグループホームという空間では、多くの入居者の便宜をはかるために設備が整えられているので、暮らすための手がかりが豊富にあり、快適な生活が約束されているということ。

3. 木造家屋を再利用したグループホームという空間では、そこで暮らす者にとって、身に付いたふるまいを残しつつ、他者との出会いに触発されて新たな暮らしを築くことができるということ。

4. 木造家屋を再利用したグループホームという空間では、空間としての自由度がきわめて高く、ひとびとがそれぞれ身に付けてきた暮らしの知恵を生かすように暮らすことができること。

5. 木造家屋を再利用したグループホームという空間では、さまざまな生活歴を持ったひとびとの行動基準の多様性に対応が可能なため、個々の趣味に合った生活を送ることができるということ。

1番については「伝統的な暮らしを取り戻す」の部分が怪しい。グループホームで伝統的な暮らしを取り戻す必要があるだろうか。2番については、「多くの入居者の便宜をはかるために設備が整えられている」という部分がおかしい。木造家屋なのに設備が充実しているわけがない。なので、これらは除外。

3番については、特におかしなところはない。とりあえずこれを正解の候補として残しながら4番に進むと、これも特に矛盾はない。5番については、「個々の趣味に合った生活」の部分が怪しい。常識的に考えれば、グループホームで個人が好き勝手な生活ができるとは考えにくい。なので、これも除外。

ということで、正解の候補としては3番と4番が残った。さて、どちらが正解だろうか。ここからは、本文のテーマを推測することがポイントになる。グループホームに関する設問だから、本文ではおそらく他者とのつながりについて触れているだろうと予想できる。グループホームの機能性については重要なテーマではないだろう。

要するに、グループホームに住むことによっていまでは失われてしまった他人とのつながりを取り戻すとかなんとか、そういったいかにも常識的というか道徳的なテーマになっているに違いない。試験問題に使われるような文章だから、大したヒネリはないと考えてもいいだろう。ということで、正解は3番。

どうだろう、こうして見てくると、意外に簡単だと感じないだろうか。結局は、選択肢の文章があまりにもマズイからこういうことになるのだと思う。まあ、すべての選択肢を正解っぽく書いてしまっては受験生にとっても辛いだろうから、これくらいのレベルの文章でちょうどいいのかもしれない。



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