10/12/19

スーツに関する諸問題

新しいスーツを買おうと思い立った。なにしろ、春夏用のスーツと秋冬用のスーツを一着ずつしか持っていないので、サラリーマンとしてはどうかと思ったわけだ。いまの会社はカジュアルな服装でオッケーなのだけれど、やっぱりサラリーマンの正しい服装はスーツ姿だと思う。

いま着ているスーツは一応ブランド物で、イージーオーダーで作ったものだ。お値段的にもそれなりの金額を支払ったのだが、そうそう何着も買えるものではない。とりあえずこのスーツにはエースとして頑張ってもらうことにして、新しく買うスーツには中継ぎ的なポジションで頑張ってもらおう。

ということで、どこにスーツを買いに行くべきかで頭を悩ませた。これまでは、デパートに入っているブランド店で買っていたのだが、この歳でブランド物のスーツを買うのもなんだか恥ずかしい。やっぱりオヤジとしてはオヤジっぽい店で買うのが正しい姿だろう。そう考えて、近所のコナカに出かけた。

自分の中では、コナカやAOKI、青山などの店は「オヤジ御用達の店」というイメージがある。若い頃は、こういう店でスーツを買う人のことを心の中で笑っていた。なんだかものすごくオヤジっぽいような気がしていたのだ。しかし、自分もついにこうした店に足を運ぶような歳になったわけだ。

そんな感慨を抱きながら店に入ったのだが、たくさんスーツがあって、どれがどういうスーツなのかよくわからない。そこで、店員さんをつかまえて、「紺無地のスーツを探しているんですが、適当なヤツありますか? こういう普通のスーツがいいんですけど」と言って、自分が着ていたスーツを指差した。

紺無地ですとこのあたりになりますが、と言って店員さんが見せてくれたスーツを着てみると、ウエストのあたりが細くなっていて、いかにもいまどきの若い衆が好きそうな細身のシルエットだ。しかも、自分の大嫌いなサイドベンツが入っている。あのヒラヒラとした感じがたまらなく嫌いなのだ。

ノーベントのスーツはありますか? と聞いてみたところ、申し訳ありませんが、ノーベントのものは一着もありませんと言われてしまった。どうやら自分が知らないうちに、世の中のスーツはすっかりベント入りのムーブメントに飲み込まれてしまったらしい。しかたがないのでコナカで買うのはあきらめて、AOKI に行ってみた。

店員さんをつかまえて、「紺無地のスーツありますか? できればノーベントで、ウエストを絞ってないヤツがいいんですけど」と聞いてみたが、やはりここでもノーベントのスーツは一着もないという返事だった。おそらく、洋服の青山に行っても結果は同じだろう。しかたないので、なるべく自分の好みに合うものをAOKI で探すことにした。

できるだけストンとしたシルエットのスーツを出してもらって着てみると、これならなんとかなりそうだと思えた。センターベントが入っているが、サイドベンツよりはずっとマシだ。スラックスも穿いてみようと思ってサイズを聞いてみると、なんとウエストが82cmだということだ。

自分のサイズは73cmなので、10cm近くも詰めなければならない。さすがに10cmも詰めたらおかしいですよね、と聞いてみると、やっぱり見た目がおかしなことになるという。だったら、ジャケットとスラックスを別々に買えないか訊ねたところ、セットでしか販売できないらしい。まあ、「スーツ」というくらいだからバラ売りできないのは当然だ。

しかたがないので別のスーツを探してもらうと、76cmのものならセンターベントでそれほど細身ではないものがあるらしい。73cmのスーツはないということなので、とりあえずウエストを詰めればいいかと思いながら、試着室に入った。しかし、いざスラックスを穿こうとすると、ノータックであることに気付いた。

自分としては、ノータックのスラックスというのは問題外だ。ルーズシルエットが大流行したバブル期を過ごした人間としては、ウエストを絞ってさらにノータックのスラックスというタイトシルエットのスーツはあり得ない。この歳になって、いまさら若者の真似をしようなんて気にはなれない。

ということは、コナカやAOKI という店はいつの間にか若者向けの店に変わってしまったということなのだろう。これにはかなり驚いた。まさか、腹回りに貫禄が出てきたオヤジ連中が、コナカやAOKI の細身のスーツを好んで着るとは思えない。店内を見回すと、やっぱりそれなりに若い客が多い。

なんだか困ってしまって、「ちょっとこういう若者向けのスーツは無理だなあ。自分みたいなオヤジはどうすればいいのかな?」と聞いてみると、それならばオーダーで作るしかありませんねと言われてしまった。安さを求めてこういう店に来ているわけだから、いまさらオーダーしろと言われても困る。

いい加減に疲れてきたので、今日のところはスラックスだけ買って帰ろうと思い、紺無地のツータックのスラックスを探してもらった。しかし、73cmのサイズは在庫が数えるほどしかない。76cmのものでそれっぽいのが1本だけあったので、とりあえずウエストを詰めてもらうことにして買った。

それにしても、細身のシルエットが大流行している割には、ウエストのサイズはそれほど細くないというのがよくわからない。自分は体格の割には肩幅が広いらしく、サイズをジャケットに合わせるとウエストのサイズを犠牲にしなければならないので、スーツを買うときにはいつも困ってしまうのだ。

ということで、散々探した挙句に、買ったのはスラックス1本だけという徒労に終わった。いったい、世の中のオヤジ連中はどこでスーツを買っているのだろうか。まさか、オヤジ連中すべてがオーダーでスーツを作っているわけではないだろう。オヤジ連中の一員として頭を悩ませる今日この頃です。



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