10/12/05

今年読んで面白かった本を紹介してみる

気付いてみればもう12月だ。いつも同じことを書いているような気がするが、本当に時間が経つのが早くて嫌になる。この覚書にはファイル番号として1からの通し番号を付けているのだが、この覚書が今年の46本目だ。毎週この覚書のファイル番号を付けるたびに、改めて時間の経過の早さに驚いている。

ということで、そろそろ今年のまとめといった感じのネタについて書いておこう。今年のベストセラーは、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッグに溺れたら」とかなんとかいう長ったらしいタイトルの本らしい。出版不況といわれているこの状況で170万部も売れたというからすごい。

以前の覚書でも書いたような気がするが、自分はベストセラーと呼ばれる類の本はまず読まない。よほど興味のある分野の本なら別だが、「もし高校野球の女子マネージャーがドラ息子に恋したら」だの「巻くだけダイエット」だのといった本にはまったく興味がないので、いくらベストセラーでもまったく読もうとは思わない。

そもそもベストセラーになる本というのは、内容が優れているからという場合ももちろんあるが、荒唐無稽な「トンデモない」内容の場合も少なくないと思う。あるいは、出版社の宣伝がうまいから売れるという場合もあるだろう。つまりは、本当に素晴らしい本だけが売れるとは限らないということだ。

そういった一過性のブームに乗せられるのはどうかと思うので、自分が興味のある分野の本については、ネットでその本の評価を確認するなどして、ある程度の時間が経ってから読むようにしている。すぐに読みたいと思えるような本でなければ、この方法でもまったく問題はない。

ということで、今年もベストセラーなどには目もくれず、相変わらず図書館通いを続けている。そこで、今年読んで面白かった作品をいくつか紹介してみようと思う。まずは洋書から紹介すると、今年の一番はモームの「Of Human Bondage」だ。詳しい感想は4/14の覚書に書いてあるが、とにかく性悪女のミルドレッドが素晴らしい。

次点は、カズオ・イシグロの「Never Let Me Go」だ。この作品を読むまでは、イシグロ氏のことを「雰囲気だけで中身はスカスカの作品を書く作家」などと失礼なことを思っていたのだが、この作品を読んでその認識は変わった。ものすごく繊細な人間観察のできる作家だということがわかったからだ。

次に邦書についても紹介してみよう。邦書については、常に洋書の倍くらいは読んでいるのだが、洋書は圧倒的にフィクションが多いのに比べて、邦書はノンフクションを読むことが多い。洋書についてもノンフィクションを読みたいのだが、図書館にはノンフィクションの洋書がほとんどないのだ。

ということで、今年読んだ邦書(というか翻訳だけど)のベストは「暗号解読」というノンフィクションだ。これはサイモン・シンというイギリス人が書いたもので、太古から現在、そして未来の暗号までを詳しく解説した内容になっている。これを読めば、暗号がどのように発展してきたのか、そして現在は暗号がどのように利用されているのかがよく理解できると思う。

正直なところ、内容が複雑でよく理解できない部分もあるが(特に、量子暗号についてはさっぱりわからなかった)、そのあたりは読み流しても十分に楽しめると思う。特に、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけてのドイツ対イギリスの暗号解読合戦は面白かった。解読不能と思われた暗号を執念で解読していく過程は、文句なく面白い。

次点は、これもサイモン・シンが書いた「フェルマーの最終定理」という作品だ。フェルマーの最終定理とは、「3 以上のn について、xn + yn = zn となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせはない」という定理のことだ。わかりやすく言うと、ピタゴラスの定理であるx2 + y2 = z2 は成立するが、これを3次元の立体にすると成立しなくなるということだ。

フェルマーは17世紀のフランス人で、この定理を証明したと豪語していたのだが、実際の証明はどこにも記されていない。つまりは、この定理を証明できるかという意地の悪い挑戦状を他の数学者たちに叩きつけたわけだ。それから360年もの長きにわたって、数多くの数学者がこの定理に挑んでは跳ね返されてきた。

そして、1995年にようやくこの定理が完全に証明されるのだが、そこに至るまでの過程をドラマチックに描いたのがこの作品だ。自分のような数学オンチでも楽しく読むことができたのは、この作者の文章力と構成力のおかげだろう。また、翻訳臭をいっさい感じさせない青木氏の翻訳もすばらしい。

この2冊は翻訳書なので、正確には洋書ということになる。なので、純粋な邦書についても紹介しておきたい。ものすごくいまさらな感じだが、東野圭吾の「容疑者Xの献身」が面白かった。東野圭吾は多彩な作家で、本格的なミステリーからおバカな小説まで、その作風は本当に幅広い。

また、この人はしっかりと人間を描ける作家なので、単なるミステリーという枠を超えた重厚な作品を楽しむことができる。「容疑者〜」についてもそれは同じで、不器用な天才数学者の石神が非常に魅力的に描かれている。肝心のミステリーの部分も優れているが、こうした人間描写もすばらしい。

そんな感じで、今年もそれなりの量を読んだのだが、他の人にも紹介したいと思えるような本はあまり多くない。改めて考えてみると、つまらない本を読んで無駄にした時間もかなり多いと思う。ということで、何かお勧めの本があったら紹介してください。できればノンフィクション系でお願いします。



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