10/08/22

初任給54万円の価値

野村ホールディングスの新卒社員の初任給が54万円になるらしい。この不景気にもかかわらず破格の給料だ。給料が54万ということは、ボーナス抜きで計算しても年間で650万円くらいになる。これにボーナスを合わせると、いったいいくらになるのだろうか。両手両足を使っても数え切れないくらいの年収になるのだろうか。

20歳そこそこの若者がそんなに稼ぐとはすごいことだ。20年以上社会人として働いてきた自分の給料とほとんど変わらないではないか。などと、こんなところでつまらない見栄を張ってもしかたがないので正直に書くと、自分の給料よりも激しく多い。どれだけ多いのかは言いたくないくらいに多い。

そうは言っても、特にうらやましいとは思わない。これは負け惜しみでも何でもなくて、純粋にそう思う。高い給与には大きな責任が伴うから面倒だという後ろ向きな理由もあるが、一番の理由は証券会社という商売が嫌いだからだ。どんなにきれいごとを言ったところで、結局は投資家から金を巻き上げるだけの商売だ。

証券会社にとっての利益は、結局のところ投資家からどれだけの金を出させるかで決まる。投資家が得しようが損しようが、証券会社にとっては大差ない。なにしろ、どれだけ損しても元本保証の義務はないし、売買手数料は必ず懐に入ってくる。なんともヤクザな商売だ。

証券会社の社員になって破格の給与をもらうということは、とにかく頑張って投資家から金を出させろと命令されているようなものだ。自分だったら、いくら高い給与をもらったとしても、そんな仕事をしたいとは思わない。仕事をするからには、やっぱり少しでも社会に貢献できていると誇れるような仕事をしたい。

証券会社で働いて54万円をもらったとしても、喜ぶのは自分と会社とほんの一握りの儲かった投資家だけだ。儲かる人がいれば必ず損する人がいるのが世の常で、多くの人が投資で損をしている。そうして稼いだ54万円には、社会的な価値がどれほどあるのだろうか。

証券会社も嫌いだが、個人投資家と呼ばれる人種も嫌いだ。デイトレ一本で稼いでいると自称する人たちがネット上でデイトレのテクニックなどを自慢げに紹介しているのをよく見るが、よく恥ずかしくないものだと思う。中には堂々と素顔まで晒している人もいるくらいだ。

デイトレだけで食べていけるというシステムがこの社会に存在する以上、デイトレが悪いことだとは思わないし、デイトレだけで食べていくというのはすごい才能だとも思う。自分には絶対にできないことだ。しかし、こういう人たちを尊敬する気にはなれない。むしろ軽蔑する。

証券市場に金を流通させるという意味では多少の意義があるのかもしれないが、社会に対してはほとんど何も貢献していない。それにも関わらず、デイトレで稼いでいますと自慢するのはどういう神経なのだろう。真面目にものづくりに励んでいる人たちに対して恥ずかしくはないのだろうか。こういうことは裏でコソコソやっていてほしい。

さらに言えば、証券会社に限らず銀行も嫌いだ。大手の銀行に勤めてエリート面したところで、やっていることは単なる金貸しだ。低い金利で金を預かり、高い金利で金を貸して、その利ざやで稼いでいるだけのことだ。自分でものを作り出すなんてことは一切せずに、ただ客の金を回して儲けているだけだ。

バブルの頃は金を借りてくださいとお願いしていたのに、バブルがはじけると一斉に回収に走り、経営の危ない中小企業には金を貸そうとしない。銀行の経営が危なくなっても誰も責任を取ろうとせず、恥ずかしげもなく公的資金の投入を要求する。なのに、銀行員の厚待遇は相変わらずだ。いったい、何様のつもりだろう。

おっと、思いつくままに書いていたら少し悪く書きすぎてしまった。この覚書を読んでくれる人の中にも、もしかしたら証券会社や銀行に勤めている人もいるかもしれないので、とりあえず謝っておこう。いろいろと好き勝手に書いてしまって、どうもごめんなさい。気を悪くしないでください。

ということで、お金を直接商品として扱う商売は嫌いだ。そういう意味では、大きな証券会社も都市銀行もサラ金も商売の本質的には同じだと思っている。自分だったら、そういう仕事に就きたいとは思わないし、誇りも持てないと思う。だから、そういう仕事で高い給料をもらっている人のことも少しもうらやましいとは思わない。



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