10/07/19

思い出のミルメーク

今年の梅雨はしっかりと雨が降って、久しぶりに梅雨らしい梅雨だったような気がする。梅雨入りしたと思ったらずっと雨が続き、梅雨明けしたと思ったらいきなり夏空になって、本当に正しい梅雨だった。西日本はゲリラ豪雨が頻発して大変なようだが、関東に限ってはメリハリのついた素敵な梅雨だったと思う。

ということで、暑くなってくると水分の摂取量も当然のように増えてくる。自分は生協で1リットルパックの牛乳を毎週注文しているけれど、翌週の配達日を待たずに3〜4日くらいで1リットルパックが空になる。冬の間はちょうど1週間くらいで飲み切るペースだったから、やっぱり水分の摂取量が増えているのだろう。

そんな牛乳好きの自分だが、毎日飲んでいると多少飽きてくる。そんなときに生協の注文カタログで「ミルメーク」を見つけたので、思わず注文してみた。ミルメークとは牛乳に入れて飲む甘味料のことで、普通の牛乳がいきなりコーヒー牛乳に変身する。自分が小学生の頃には、粉末状のミルメークがよく給食に出てきた。

自分はこのミルメークが大好きだった。ビン牛乳のフタを取って牛乳を一口飲んでから、おもむろにミルメークの袋を切ってビンに注ぎ込む。そのままミルメークを入れると中身が溢れてしまうので、最初に牛乳を一口飲んでおくのがコツだ。こうしてから、細いストローで牛乳を一心にかきまぜる。

情けないくらいに細いストローだからミルメークがなかなか溶けなくて、混ぜている途中で何度もビンを持ち上げて底に溶け残った粉末を確認する。いまから思うと面倒な作業なのだが、当時はそれが楽しかった。何回もビンを持ち上げて、粉末がすべて溶けたことを確認してから飲む牛乳は、いかにもインチキくさい甘さで美味かった。

そのほかにも、カレーが出る日は楽しみだった。もちろん、カレーといっても本格的なカレーではなくて、ベコベコのアルミ容器に入った薄いカレーだ。カレーと言うよりは、カレー味のするスープと言ったほうがいいかもしれない。しかし、いくら薄くてもカレーの味がする以上は立派なカレーで、純粋な少年のハートを鷲づかみにするには充分だった。

それから、揚げパンも好きだった。あのパサパサしたコッペパンはどうしても好きになれなかったのだが、砂糖をまぶしてこんがりと揚げたあのインチキくさい甘さの揚げパンだけは好きだった。直接手で持って食べると油でベタベタになるから、あのインチキくさい先割れスプーンでパンを突き刺して食べていた。

小学生の頃はとにかく食べるのが遅くて、そのせいで給食の時間がプレッシャーになっていた。周りの子たちはペロリと平らげて体育館やグラウンドに駆け出して行くのに、食べるのが遅い自分はいつも最後まで一人で黙々と食べていた。食べ終わった子が一人二人と席を立つたびに、理不尽な焦りだけが大きくなってくる。

自分も早く食べてみんなと遊びたいのだが、あのパサパサしたコッペパンがどうしても喉を通ってくれない。最初はパサパサのコッペパンを牛乳で流し込みながら食べ進めていくのだけれど、いつしか牛乳も飲み終わってしまって、最後は自分の唾液だけを頼りに食べるしか方法がなくなってしまう。こうなると、ちょっとだけ辛い。

そんなこんなで、最後は泣きそうになりながら食べていた記憶がある。というか、実際に泣きながら食べたことも何回かあるような気がする。そのときは、早く食べ終わった子たちに囲まれて、「頑張れ」なんて励まされたりしながら懸命に食べていたような覚えがある。

「頑張れ」という励ましに、偽善的な優しさが子供心にもビンビンと伝わってきて、「これって、励ましているフリして、実はみんな面白がってるだけだよね? 結局はいじめてるだけだよね?」と思いながら食べていたような気がする。食べるのが遅いというだけで、なんだかものすごくダメな人間になったような気分だった。

ということで、いかにしてコッペパンを食べ切るかということは、自分にとって深刻な問題だった。だから、その日の給食に自分の好物が出てくるかどうかは非常に重要だった。好物が出てくれれば、その勢いで苦手なコッペパンも食べ切ることができるからだ。逆に、揚げ出し豆腐とか煮物などの地味な献立の日は憂鬱だった。

ということで、何十年も昔のことを思い出しながら、生協で買ったミルメークを牛乳に溶かして飲んでみた。当時のミルメークは粉末だったが、今回のミルメークはポーションタイプの液状になっている。ドキドキしながら飲んだのだが、普通のコーヒー牛乳だった。でも、やっぱりインチキくさい甘さは当時のままで少しだけ嬉しかった。



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