10/02/28

トヨタバッシングの疑問点

日本が誇る超優良企業のトヨタが、いまアメリカでものすごいバッシングにさらされているらしい。なにやら電気制御系に不具合があるやらないやらで豊田社長がアメリカ議会に呼び出され、調子に乗った議員たちから一斉に攻撃されているようだ。こういうノリはいかにもアメリカらしくて腹が立つ。

さらに、トヨタのレクサスに乗って怖い思いをしたというアメリカ人女性が証人として公聴会に出席し、レクサスがいきなり暴走し始めたときのことを涙ながらに証言した。感極まったこの女性は、「強欲なトヨタよ、恥を知れ」とまで言ったとか。いや、恥を知るべきはむしろあなたの方ではないのか。

この女性の話を簡単にまとめると、「高速道路に乗ったところで車が急加速し、ブレーキを踏んだりギアをバックに入れたりしたが一向に減速しないため、このまま死んでしまうと思い、最後の電話を車内から夫にかけた。そのうち徐々に減速して止まった」というものだ。

この証言でまずおかしいと感じるのは、「電話を車内から夫にかけた」という部分だ。160キロの猛スピードで走っているときに、冷静に携帯電話を取り出して番号をプッシュできるものだろうか。それ以前に、パニック状態にありながら、家に電話をかけようなどという考えが浮かぶものだろうか。

これではまるで、ミステリー小説によく出てくる「ダイイングメッセージ」だ。ダイイングメッセージとは、瀕死の被害者が犯人の名前を知らせようとして、自分の血で壁や床に犯人の手がかりになるメッセージを書き残すというアレだ。これは作り話だから許される状況であって、実際にダイイングメッセージを残した話など聞いたことがない。

もう死ぬかもしれないという状況であれば、自分が助かろうとすることに必死で、自分が死んだ後の捜査が楽になるように手がかりを残しておいてやろうなんて悠長なことを考えるはずがない。このアメリカ人女性の場合も同じで、必死にハンドルを操作している状況で最後のメッセージを残そうなどと考えるものだろうか。

おそらく、よりドラマチックな内容にするため、この「最後の電話」の部分は後から取ってつけたものだろう。そうやって眉に唾をつけながらもう一度この女性の証言を確認すると、ほかにもおかしいと感じる部分が見つかる。「ブレーキを踏んだりギアをバックに入れたりしたが一向に減速しない」という部分だ。

自分はクルマの仕組みには詳しくないのだが、いきなり加速したことが原因でブレーキまで効かなくなることはないと思う。どんなクルマでも、加速の仕組みとブレーキの仕組みはまったく独立しているはずで、そうでなければクルマなど怖くて乗れるものではない。

また、「ギアをバックに入れた」というのも考えられない。100キロを超えるスピードで疾走している状態で、いきなりギアをバックに入れられるはずがない。そんなものすごい仕組みのクルマがあったら見てみたい。もし本当にバックに入ったとすれば、そちらの方が問題だ。

おそらく、バックではなくニュートラルに入れたということだと思うが、このオバサンにとってはバックに入れたつもりだったのだろう。つまりこのオバサンは、こんな基本的なことすらわからない程度の、クルマに関してはまったくのド素人だということだ。だから、ほかにも何かしら思い違いをしているという可能性は大いにあるだろう。

これは自分の勝手な想像だが、自分で気付かないうちにクルーズコントロールをセットしてしまい、慌ててブレーキを踏んだつもりが間違ってアクセルを踏んでしまったというあたりが事の真相ではないだろうか。慌ててしまい、ブレーキを踏んだつもりがアクセルを踏んでいたという話はよく聞く。

その証拠に、この嘘つきオバサンが乗っていたレクサスは修理もせずに転売されたらしいが、その後もまったく問題なく走っているということだ。修理もせずにそのまま転売するディーラーもすごいが、いくら点検しても異常は見つからなかったために、そのまま転売したということだろう。

猛スピードで疾走中にいきなりギアをバックに入れようとするド素人のオバサンの証言と、クルマの専門家による点検の結果のどちらを信用すべきかは、いまさら考えるまでもないだろう。いったい誰からいくらもらったのかは知らないが、こんなデタラメを証言しながら「恥を知れ」などとよく言えたものだ。こういう人間こそ「厚顔無恥」という。

少し突っ込んで調査すれば、この証言内容が信用できないものだということを証明するのは難しくはないだろうが、そんなことをしてもトヨタに対するバッシングは収まらないだろう。それどころか、おそらく逆効果になると思う。ここぞとばかりにバッシングを受けてトヨタとしても苦しいところだが、この嵐が収まるまでは頭を低くして耐えるしかない。



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