独習のボキャブラリー 


英語の基礎がボキャブラリーであることは言うまでもありません。極端なことを言えば、ボキャブラリー学習イコール英語学習であるとさえ個人的には思っています。英語ができないと悩んでいる人のほとんどは、ボキャブラリー不足が原因です。満足なボキャブラリー学習もしていないのに、いろいろな教材に手を出しては挫折感に浸っているというのが多くの場合の現実です。そんなことで悩むヒマがあったら、とにかく1つでも多くの単語を暗記すべきです。悩むのが許されるのはそれからです。


 まずは、市販の単語集を完全に暗記する

ここでは、現在の単語数が3,000語レベルの人を想定して話を進めます。これは、中学と高校で習う単語をすべてマスターした場合の単語数です(オリジナルの「独習のボキャブラリー」のページでは「中学・高校の6年間の教育課程で習う単語の総数は約5,000語」と書きましたが、これは誤りです。お詫びして訂正します)。これくらいのレベルでは、英字新聞やペーパーバックなど、実用的なメディアを読みこなすことはできません。このレベルの人がまずすべきことは、大学受験用の市販の単語集を1冊買ってそれを完全に暗記することです。

自分の好みに合うものであれば、どんな単語集でもかまいません。ネットなどでユーザーの評価を参照して、なるべく評価の高いものを買えば後悔することも少ないと思います。単語集を買ったら、後はひたすら暗記するだけです。それまで片手間にかじっていた文法書やラジオ講座や英会話のテキストなどはすべて閉じて、単語集だけに集中してください。最後の1語まで完全に暗記するまで、絶対に途中で投げ出さないでください。この孤独で単調で辛い作業を最後までやり切れるかどうかで、英語をモノにできるかどうかが決まります。それくらい、このステップは重要です。

2,000語が収録されている単語集であれば、どんなに頑張っても、すべて暗記するのに半年から1年くらいはかかると思います。余った時間をすべて勉強に使える受験生とは違い、仕事も家事も抱えている社会人の場合、2,000語の単語集を1冊丸ごと暗記するのは簡単なことではありません。しかし、中途半端にいろんな教材に手を出すよりも、単語の暗記に集中したほうが絶対に結果は早く出ます。単語の暗記ばかりで本当に英語ができるようになるのだろうかと不安に陥ることもあると思いますが、それでも自分を信じて暗記を続けてください。絶対にそれだけの効果はあります。

このステップが、すべての英語学習の段階を通じて一番辛い作業になります。逆に言えば、このステップさえクリアできれば、後は楽だということです。学習効率が飛躍的に向上し、英語の勉強が楽しくなります。英語をモノにしたければ、絶対にこのステップだけはやり遂げる必要があります。

こうして単語集を1冊マスターしたら、自分でも驚くほど英文を読むのが楽になっているはずです。もし、単語集を1冊完全に暗記したにも関わらずさっぱり英文が読めるようにならないという人がいたら、それは残念ながら英語のセンスが決定的に欠けています。これから先どんなに勉強しても、英語ができるようにはなりません。英語ではなくほかのことに貴重な時間を使ってください。


 
次に、リーディングの学習を始める

市販の単語集をマスターしたことにより、単語数は5,000語レベルになりました。このレベルになれば、いろんな英文を読むことができます。英字新聞でもペーパーバックでも、自分の好きなメディアを選んで読んでください。こうしたメディアを読むことで、暗記した単語の復習になります。実は、これが非常に重要なポイントです。単語の習得において一番重要なことは、繰り返して暗記するということです。1回や2回くらい暗記したたけでは、なかなか記憶には定着しません。とにかく単語に出会う回数を多くすることが重要です。そういう意味で、単語集の暗記を終えたこの時点でリーディングの学習を始めるのは非常に重要なことなのです。5,000語レベルの単語というのは英文を構成する核となる単語であるため、どんな英文を読んでも繰り返し登場します。単語集で暗記した単語を実際の英文で繰り返し確認することにより、その単語は完全に記憶に定着します。

このレベルになれば、単語を覚えて実際の英文で確認するというサイクルがうまく回り始めるため、学習効率が大きく向上します。英語の学習が飛躍的に楽になり、学習そのものが楽しくなってくるはずです。貧弱なボキャブラリーのまま英文を四苦八苦しながら読んでいた頃に比べれば、視界が一気に開けたような爽快感を味わえると思います。とにかく、必要最低限のボキャブラリーを最初に獲得してから本格的な英語学習に取り組むことが重要です。絶対にこの順序を間違えてはいけません。必ず挫折します。


 
さらに、10,000語レベルの高みを目指す

当然ながら、市販の単語集を1冊仕上げただけでボキャブラリー学習が終了するわけではありません。むしろ、ここからが本格的なボキャブラリー学習のスタートです。ただし、一番苦しいステップはもう終了しています。これまでの時期を短距離の全力疾走だとすれば、ここからは、どこまで高みを目指して走っていけるかという持久力の勝負になります。

最終的なレベルをどのあたりに設定するかは人それぞれですが、ひとまずの目標としてキリのいい10,000語に設定することをお勧めします。このレベルになると、英字新聞で未知の単語に出会うことはほとんどなくなります。TIMEやNEWSWEEKなどの雑誌も楽に読めるようになります。ペーパーバックも、ベッドで寝転びながら楽しむことができるようになります。どうせ英語を勉強するなら、このくらいのレベルを目指してみませんか。

こうしたレベルの単語を習得する方法として、オリジナルの「独習のボキャブラリー」のページでは、英字新聞などを利用したオリジナルの単語ノートを作成する方法を紹介しました。当時はこの方法が効果的だと思って紹介したわけですが、現在では、あまり効率のいい方法ではないと考えるようになってきました。実際の文脈で確認できるなどのメリットはありますが、ノートの作成にかかる時間を考慮した場合、それほど効率のいい方法とは言えないかもしれません。さらに問題なのは、単語ノートは簡単に携帯するのが難しいという点です。

上にも書いたように、単語の習得で一番重要なのは、繰り返して暗記するということです。そのためには、コンパクトにまとまった形状のものを常に携帯し、ちょっとした空き時間にそれを確認するという方法が最も効率的だということになります。単語ノートの場合、こうした使い方をするには多少かさばるという欠点があります。そこでお勧めするのが、次に紹介する単語カードを使うという方法です。


 単語カードの利用方法

単語カードというと、なんだか古典的な方法のように感じるかもしれませんが、単語の暗記においては非常に有効なツールです。どこにでも簡単に携帯して確認することができる点や、1枚のカードにつき1つの単語を記入するというシンプルな形式が非常に優れています。

現在は、単語カードを作成するための便利なツールがネット上で公開されているので、自分の好みに合ったツールを使って単語カードを作成すればいいと思います。自分の場合は、すべて手書きで作成しています。たしかに多少手間はかかりますが、無機質な活字で印刷するよりも、自分で書いたヘタクソな文字のほうが頭に入るような気がして、いまだに手作りにこだわっています。

単語カードを作成するにあたって、ソースには何を利用するかということが問題になると思います。ペーパーバックを読んでいるときに出会った未知の単語を書き出したり、市販の単語集でどうしても覚えられない単語を書き出したり、といった方法でもいいのですが、これでは1組の単語カードを作るのに時間がかかってしまいます。そこでお勧めするのが、語彙レベルの高い市販の単語集を買って、そこから未知の単語をカードに書き出すという方法です。

市販の単語集から単語カードに書き出すのは二度手間だし、単語集そのものを使って暗記したほうが速いと思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。少なくとも自分の場合は、単語集そのものを暗記するよりはずっと速く暗記することができます。単語集の場合、1ページに複数の単語が記載されているため、どうしても1つの単語だけに集中できないというのが、その理由だと思います。もちろん、これは個人的な好みの問題だと思います。市販の単語集でも問題なく暗記できるという人は、こんなに手間のかかる方法をわざわざ試してみる必要はありません。しかし、市販の単語集はどうも覚えにくいと感じているのであれば、この方法を試してみる価値はあると思います。

もっと単純な方法としては、アルクが提供しているレベル別の語彙リストを利用する方法があります。1から12のレベルごとに1,000語の単語がリストされていて、これをすべてマスターすれば12,000語の単語レベルまで到達することができます。現在の単語レベルが5,000語だとすると、12,000語までは残り7,000語です。1組100枚の単語カードを使った場合、70組の単語カードを作成すれば目標達成という計算になります。これを気が遠くなるような数字だと感じるか、やってできないことはないと感じるかは人それぞれだと思いますが、長期的な目標として挑戦するのも面白いと思います。

単語カードを作って暗記した後も、繰り返し確認することが重要です。完全に覚えたと思っていても、時間の経過とともにどうしても忘れてしまう単語が出てきます。これを防ぐには、とにかく繰り返し単語を復習する以外にはありません。上に書いたような大学受験レベルの単語であれば、読書量を増やすことによって自動的に単語の復習にもなりますが、語彙レベルが上がるにつれて出現頻度も低くなるため、読書量を多少増やしたくらいではこうした単語の復習にはなりません。語彙レベルが上がれば上がるほど、単語カードを定期的に復習して忘れないように努力する必要があります。

そうは言っても、一度覚えた単語ですから、定期的に復習さえすればそれほど簡単に忘れることはありません。1組100綴りくらいの単語カードであれば、食事の注文を待っている時間や電車を待っている時間など、ちょっとした空き時間を利用して簡単に復習することができます。単語の暗記で重要なことは、とにかく繰り返して覚えるこことです。単語カードは、そうした用途に最適なツールです。


 単語を暗記する方法

単語カードを作成しただけでは、単語は暗記できません。暗記の方法としてはさまざまなものがありますが、机に座って単語とにらめっこをするだけよりは、手を使って書いたり口に出して発音したほうが記憶に残ることは間違いありません。しかし悲しいことに、こうして苦労して覚えた単語も、時間が経つとすぐに忘れてしまいます。それは、単語とその意味を繋ぐ糸がないためです。

たとえば "subsistence" という単語を機械的に「最低限の生活」と覚えたとしても、単語と意味の間に何の関係もなければ、すぐに忘れてしまいます。この場合、単語と意味を繋ぐ糸の役割を果たすものがあれば、格段に暗記が楽になります。この糸の役割を果たす方法としてお勧めしたいのが、語呂合わせによる暗記です。

"subsistence" という単語に「
寂しいっす、タンス一つの最低限の生活は」という語呂を付けると、"subsistence" と「最低限の生活」を糸で繋ぐことができます。ここで、タンス以外は何もない殺風景な部屋で寂しそうに暮らしている人の姿をイメージすると、さらに強く記憶に残ります。こじつけでも何でもかまいません。ここで大事なのは、とにかく単語とその意味を繋ぐ糸を作ることです。慣れないうちは適当な語呂を作るのは難しく感じるかもしれませんが、他人に教える必要はないわけですから、自分が覚えられる語呂であれば何でもかまいません。あれこれと語呂を考えるプロセスも、単語とその意味を繋ぐ糸として機能します。とにかく、一度試してみてください。意外に効果的であることに気付くはずです。

さらに効果的な方法として、散歩をしながら単語カードを暗記するという方法があります。イメージとしては、散歩コースを1本の長い紐だと考えるとわかりやすいと思います。1組100枚綴りの単語カードを暗記する場合、その紐には100個の小さな結び目がついていて、この結び目に単語をひっかけて記憶していくようなイメージです。その結び目には、公園の壊れたベンチや、中華料理屋の赤い看板、道端に咲いたきれいなツツジなど、散歩コースでの印象的な景色を利用します。

つまり、こうした視覚的な刺激を暗記に役立てるということです。ただし、暗記の際にこうしたことを特に意識する必要はありません。単語カードを復習すると、自然にそのときの情景が頭に浮かび上がってくるはずです。この方法であれば、多少まずい語呂であっても、こうした視覚的な刺激でそれをカバーすることができます。これまでにさまざまな方法で単語の暗記を試してきましたが、いまのところこれが最も効果的な方法だと感じています。騙されたと思ってぜひ試してみてください。




 新・ボキャブラリー独習の心得

 まずは、大学受験用の単語集を完璧に仕上げるべし
 ボキャブラリーは単語カードを使って習得すべし
 暗記の際には、単語とその意味を繋ぐ糸を作るべし


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