独習のリーディング 


市販の大学受験用の単語集を仕上げたら、次はリーディングの学習に入ります。5,000語レベルくらいになると、日本で発行されている英字新聞や簡単なペーパーバックならば、辞書なしで読めるようになります。5,000語とは言っても、"in-" や "dis-" などの接頭辞の付いた反意語や派生語なども元の単語から簡単に類推できるようになるため、実際の語彙レベルはもっと上がっています。自信を持ってリーディング学習を始めてください。


 何を読むか

オリジナルの「独習のリーディング」のページでは、最初に英字新聞からリーディング学習を始めることをお勧めしましたが、自分の興味のあるものならば何を読んでもかまいません。ただし、あまり難しいものや簡単すぎるものは読んでも意味がないため、現在の自分のレベルに合ったものを選ぶようにしてください。興味があるからといって、いきなりチャールズ・ディケンズの原書を読んでも、おそらく最初の10ページくらいで挫折してしまうのがオチです。だからといって、グレードリーダーのように語彙レベルを制限しているような本を読んでも意味がありません。細部は理解できない部分もあるが大筋は問題なく理解できる、というくらいのレベルの素材を選んでください。

英文を読むという行為には、日本語を読む場合とは比較にならないくらいのストレスが伴います。そうしたストレスをできる限り少なくするためにも、自分の興味のあるものを読むことがリーディング学習における重要な要素になります。日頃から読書を習慣にしている人であれば、自分の好きなジャンルの本を探せばいいと思います。

それでは、普段から読書の習慣がない人はどうすればよいのでしょうか。自分は本を読むのはどうも苦手で、という人は少なからずいますが、こういう人には無理にでも読書を好きになってもらうしかありません。大量の英語をインプットすることにより、英語力の基礎が作られます。そのためには、大量の英文を読むのが一番の近道です。リーディングを疎かにして英語力を伸ばすことはできません。もしかしたら、リーディングを疎かにして英語力を伸ばした人もいるのかもしれませんが、それは非常に特異な才能を持った人に限られたことです。そうした才能がない場合は、地道にリーディング学習を続けるしかありません。



 読みながら辞書を引くべきか

オリジナルの「独習のリーディング」のページにも書きましたが、英文を読みながら辞書を引くことはお勧めしません。どんなに簡単なペーパーバックなどを選んだとしても、最初のうちは多くの未知の単語に出会うはずです。そうした単語をいちいち辞書で調べていたら、リーディングのリズムが崩れてしまいます。読書をしながら語彙を増やしたいという気持ちはわかりますが、リーディングとボキャビルを一石二鳥で学習しようとするのは、賢いようでいて実は非効率的な方法です。

リーディングは、それまでに苦労して習得したボキャブラリーを実際の英文で確認するための作業として考えるべきです。単語カードや単語集で覚えた単語を実際の文脈で確認することにより、その単語をしっかりと記憶に定着させるための作業です。それだけを意識して、とにかく多くの英文を読む機会を作ることが大事です。その結果として徐々に英文を読むことに抵抗がなくなり、英文の読書を習慣にすることができます。こうなればしめたもので、さらにリーディングを続けていくことにより、英語の語感(つまりは英語のセンス)が身についてきます。


 多読で語彙は増えるか

多読で語彙が増えたら都合がいいと自分も考えたことがありますが、おそらくほとんどの人にとって、多読による語彙の増強は非常に難しいことだと思います。自分の場合、1年間に12,000ページくらいのペーパーバックを読んでいるため、1ページあたりの単語数を300とすると約360万語の英文を読んでいる計算になります。これは決して少ないボリュームではないと思いますが、これだけ読んでもリーディングによって純粋に増えた語彙はほとんどありません。あったとしても、1年間に10語くらいだと思います。上にも書いたとおり、自分は読書中は辞書を引かないため、読書だけによって語彙が増えることはありません。読書によって語彙が増えればどれだけ楽だろうとよく考えるのですが、それほど都合よくはいかないようです。

しかし、多読だけで語彙が増えると主張する「SSS英語学習法」という方法が存在するようです。これが本当なら、画期的な方法だと思います。この方法で成果をあげている人も少なからずいるようなので、おそらく一定の効果はあるのだと思います。しかし、この方法によって効果があるのは英語の初学者に限られるような気がします。語彙レベルが極端に制限された本から徐々にレベルを上げていけば、よく目にする単語を文脈から類推して語彙を増やしていくことは可能だと思います。しかし、この方法を続けていくだけでヘミングウェイやフィッツジェラルドなどの作品が読めるようになるかと言えば、かなり疑問があります。頻出する単語を類推することはできても、難易度の高い単語を類推することは難しいし、そういった単語はそもそも出現頻度が低いため、類推する機会が限られてしまいます。

もしかしたら、そうしたレベルの単語は覚える必要がないということかもしれませんが、だとしたら、この学習法で成果をあげられるのはやはり初学者に限られるということになります。ごく簡単なペーパーバックを読んでストーリーの概略だけ理解できればいいと考えるのであれば、この学習法でもいいと思います。多くの支持を得ている学習法のようですから、おそらく一定の効果はあるのでしょう。しかし、それ以上のレベルを目指すのであれば、いずれはこの学習法から離れる必要があると思います。

自分はこの学習法について詳しくはないため、ここで批判すべきではないと思いますが、多読だけで一定レベル以上の語彙を増やすのは難しいということだけは間違いありません。語彙を増やしたいのであれば、自分で意識して語彙を習得する努力をする必要があります。もしかしたら、レベルの高い語彙も多読だけで獲得した人もいるのかもしれませんが、それは非常に特異な才能を持った人に限られたことです。そうした才能がない場合は、地道にボキャビルを続けるしかありません。


 文法の学習は必要か

当然ながら、基本的な文法知識は必要です。仮定法や関係代名詞などの知識がなければ、英文を正確に読むことはできません。しかし、基本的な文法を身につけてしまえば、その後はマニアックに文法知識を学習する必要はないと思います。あまりにも文法を重視することにより、かえって誤った英文解釈をしてしまうことも考えられます。このことについては、後で説明します。

実は自分も、文法はあまり得意ではありません。恥ずかしい話ですが、いまだに5文型の違いがよくわかっていません。文章の意味さえわかればSVOCでもSVOOでもどちらでもかまわないじゃないか、関係副詞と関係代名詞の違いなんてわからなくてもいいじゃないか、などと思ってしまいます。自分はとにかく理論的に考えるのが苦手で、英文法独特の難解な用語を目にしただけで拒絶反応が出てしまいます。おそらく、こういう文法アレルギーの人は少なくないと思います。

こうした人こそ、リーディング学習が重要になります。積極的に大量の英文を読むことによって英語の語感が養われ、文法的に理屈で英文を解釈するのではなく、文脈から直感的に英文を解釈するようになります。実はこれこそが、リーディング学習の大きな目的なのです。多読によって語彙を増やすことはできませんが、多読によって英語の語感を養うことは可能です。英語独特の言い回しやニュアンスなど、文法書だけでは見えない部分が見えてきます。

日本語のネイティブである日本人にも「てにをは」の怪しい文章を書く人が大勢いるのと同じように、英語のネイティブだからといって必ずしも文法的に正しい英文を書くわけではありません。こういう文法的に怪しい英文を解釈する際に、正しい文法のルールに頼るのは意味がありません。元々が間違った文法で書かれた文章を正しい文法のルールに従って解釈しても、さらに間違った方向に行くだけです。こういう場合に頼りになるのは、書き手の意図を文脈から判断する力です。

自分は仕事で英文を日本語に翻訳することがありますが、非ネイティブが書いた英文を翻訳することも多く、そうした英文は文法的にもかなり崩れていて、正確な意味を取るのが難しいことがあります。こういう場合に頼りになるのは文法書ではなく、書き手が何を伝えたいのかを文脈から判断する力です。こうした力は、日頃の読書(英語だけでなく日本語の読書も大事です)によって養われるものです。

誤解のないように書いておきますが、正しい文法知識は絶対に必要です。最低限必要な文法知識については、英語学習の初期の段階で身につけておく必要があります。それ以降は、必要に応じて文法書を参照すればいいと思います。ここで言いたいのは、あまり文法に頼って頭でっかちにならないようにということです。解釈に苦しむ文章に出くわした場合、最終的に頼りになるのは、文法の知識よりも文脈から判断するセンスです。このセンスを磨くのが、リーディング学習の大きな目的です。


 リーディングによってリスニング力は伸びるか

自分の経験から判断して、リーディングの学習を継続することによってリスニング力も向上すると思います。自分は、英語を読むことはそれほど苦にならないのですが、英語を聴くのはかなり苦手です。リーディングは自分のペースで行うことができますが、リスニングはそういうわけにはいかないため、英語が聴き取れない場合にストレスが溜まってしまうことがその理由です。以前は意識してリスニングの量を増やしたこともあったのですが、期待したような効果は出ませんでした。そのため、リスニングに関してはいまだに苦手なままです。

それでも、TOEICや英検などのリスニング問題でそこそこの点数を取れるくらいのリスニング力はあります(本当に大したことのないリスニング力ではありますが)。その理由を考えた場合、これまで地道に続けてきたボキャビルとリーディングに依るところが大きいのだろうと思います。英文を読むときには、無意識のうちに頭の中で発音しながら読んでいるため、それがリスニング力にも影響を与えるのだろうと推測しています。とりあえず、そこそこのリスニング力であれば、リーディング学習だけでも充分に習得することができます。

ただし、映画やドラマを字幕なしで楽しむだけのリスニング力を身につけたいという場合は、当然ながらリーディング学習だけでは無理です。それなりの覚悟を持って相当の時間をリスニング学習に注ぎ込む必要があります。自分のように、リーディングは苦にならないがリスニングは苦手という人であれば、好きなリーディングだけを続けてリスニング力を一定のレベルにまで上げることは可能です。そこから先は、リスニング専用のトレーニングが必要になります。




 新・リーディング独習の心得

 リーディングで語彙を増やそうと思うべからず
 リーディングは英語の語感を養うための機会だと心得るべし
 英文は文法ではなく文脈で読み解くべし


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