JOHN UPDIKE 




 「ウサギ4部作」で有名な、アメリカの作家。
 1932年にアメリカのペンシルバニア州に生まれた作者は、10代の頃から小説を書き始める。ハーバード大学を卒業後、画家を志してオックスフォード大学に進学する。その後、雑誌のライターを経て1960年に発表した初の長編「Rabbit, Run」(邦題:走れ、ウサギ)により、作家としての地位を確立する。その後も数々の作品を発表し、1981年に発表された「Rabbit is Rich」ででピューリッツアー賞を受賞。現代のアメリカ社会を巧みに描き出す作風で知られる。
 抽象的な表現が多いため、難易度としてはかなり高い。執筆当時のアメリカの風俗も描かれるため、このあたりの知識がないと難易度はさらに高くなるかもしれない。ペーパーバック初心者にはあまりお勧めしない。




YOUR LOVER JUST CALLED  07/09/08 更新

 読み易さ 
 面白さ   

夫のリチャードと妻のジョアンは、傍目には幸せな結婚生活を送っていた。しかし、年月が経つうちにお互いの心にすれ違いが生じ、二人は別居を決意する。中年夫婦の静かな破局を描いた連作短編集。

 結局、なぜこの二人は別れてしまったのだろう。なんだかよくわからないうちにグダグダと話が展開して、いつの間にか別れていたという感じだ。「ウサギシリーズ」でもそうだったが、このグダグタ感がアップダイク氏の作品の特徴なんだろう。唯一面白かったのは、リチャードが妻の浮気を問いただす場面だ。浮気相手を知ったところで後悔するとわかっていながら、どうしても知らずにいられないという気持ちはよくわかる。知るも地獄、知らぬも地獄というのが浮気というものだろう。



RABBIT AT REST  06/09/23 更新

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 面白さ   

55歳になったハリーは、トヨタ車の販売代理店の経営を息子のネルソンに任せ、1年の半分をフロリダの別荘で送るリタイア生活を送っていた。夏休みが始まったある日、ハリーは孫娘のジュディと一緒に海へボートを乗りに出かける。しかし、ジュディのいたずらでボートが転覆してしまい、そのショックのために心臓発作に襲われる。一命は取り留めたが、医者から心臓のバイパス手術を勧められてしまう。それと同時に、息子のネルソンがコカイン中毒になって多額の借金を背負っていることを妻のジャニスから知らされる。やがてネルソンが妻のプルーに対して暴力をふるっていることを知ったハリーは、プルーの話を聞くうちに誤って体の関係を持ってしまう。

 「ウサギ4部作」の第4作。今回のハリーは、かなりいい味を出している。ダメ息子のネルソンに、過去の自分を省みずに説教するところなんかは、まさに典型的な頑固親父といった感じで面白い。そのくせ、プルーとの関係をジャニスに問い詰められると、さっさと逃げ出すところなんかは、いかにもハリーらしくていい。人間として少しは成長しているように見えて、結局は少しも成長していないところが微笑ましい。
 このシリーズを通して一番変わったのは、実は妻のジャニスではないかと思った。1作目のダメ主婦ぶりが嘘のような変わりようだ。ハリーがだらしないからこそ、ジャニスが変わらざるを得なかったということかもしれない。深い感動や驚きなどはないが、何かしら心にひっかかるものがあるシリーズだと思う。



RABBIT IS RICH  06/09/09 更新

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46歳になったハリーは、亡くなった義父からトヨタ自動車の販売代理店経営を引き継ぎ、金に困らない生活を送っていた。そんなある日、大学生の息子ネルソンが同級生の女子学生メラニーを連れて帰省する。大学生活に飽きたというネルソンは、ハリーの代理店で働きたいと言い出すが、ハリーは大学に戻るように説得する。ハリーの説得に耳を貸そうとしないネルソンの態度に、何か隠し事をしているのではないかと感じるハリー。メラニーも妻のジャニスもその秘密を知っているらしいが、ハリーには教えようとしない。そしてメラニーが旅に出た後で、今度はプルーという女性がハリーの家を訪れる。プルーのお腹には、ネルソンとの間にできた子供がいた。

 「ウサギ4部作」の第3作。なんだか今度のハリーはごく普通の父親になっていて、少し残念だ。ネルソンに大学に戻れと説得するところなどは、本当にどこにでもいる父親という感じで、これまでのいい加減なハリーとはかなり違う。自分のことを棚に上げていまさら息子に説教もないものだと思うが、ハリーとネルソンの仲の悪さは、自分の息子と若い頃の自分を重ね合わせて見ているハリーが感じる自己嫌悪のせいなのかもしれない。
 それでもハリーのいい加減さはところどころに見られる。精力の衰えを感じながらもついスワッピングをしてしまうあたりは、いかにもハリーっぽくて微笑ましい。少しだけ分別がついたが、相変わらずいい加減で情けないハリーが素敵だ。



RABBIT REDUEX  06/08/27 更新

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36歳になったハリーは、ジャニスとよりを戻して息子のネルソンと3人で暮らしていたが、相変わらず目標のない生活を送っていた。そんなある日、職場の同僚と浮気をしていたジャニスが家出をしてしまう。妻に逃げられたハリーは、18歳の家出少女ジルと知り合い、そのまま自宅に連れ帰ってしまう。やがて、ジルの知り合いである黒人青年のスキーターもハリーの家に転がり込み、ハリー、ネルソン、ジル、スキーターの奇妙な同居生活が始まる。麻薬の売人として警察に追われるスキーターをかくまったことにより、ハリーの生活は大きな影響を受けることになる。あてもなく走り続けるハリーの行く先には、いったい何が待っているのか。

 「ウサギ4部作」の第2作。物語の舞台が1969年のアメリカということで、アポロの月面着陸やベトナム戦争など、当時のアメリカの世相が詳細に描かれている。そんな中でも、相変わらずハリーはいい加減だ。ここまで来ると、実はいい加減なわけではなく、果てしなく広い心の持ち主でとてつもなく大きな人間なのではないかと思えてくる。なにしろ、どんな事態になっても一向に困った様子がないし、のらりくらりとその場しのぎで生きていくのだ。どんなに頑張ってもなるようにしかならない、というあきらめにも似たいさぎよさが感じられて、これはこれで素敵な生き方かもしれないと思った。



RABBIT, RUN  06/08/19 更新

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 面白さ   

物語の主人公は、「ラビット」というあだ名を持つ26歳のハリー・アングストローム。高校生のときは花形バスケットボール選手として活躍していたが、今ではつまらない仕事と怠惰な妻のジャニスのために、毎日の生活に目標を見失っていた。そんなある日、ハリーは衝動的に家出をし、偶然に知り合ったルースという女性の家に転がり込む。ジャニスの両親はハリーを説得するように牧師のエクルスに頼むが、ハリーはそんなエクルスの説得にも耳を貸そうとしない。しかし家出から2ヵ月後、ジャニスが出産のために入院したという報せを聞いたハリーは、ルースの元を去って病院に駆けつける。娘の誕生を機にすべてうまく収まるかに見えたが、予期せぬ悲劇が家族を待ち受けていた。

 「ウサギ4部作」の第1作。よくも悪くも、主人公のいい加減さが素晴らしい。何か嫌なことがあるとすぐにその場から逃げ出してしまうハリーは、読んでいて嫌になるくらいにいい加減な人間だ。本当に、物語の最初から最後まで逃げっぱなしだ。しかし、ハリーにはなぜか憎めないところがあるし、共感できるところもある。それはつまり、自分も少なからずハリーのようないい加減さを持ち合わせた人間だということだろう。自分に限らず、男子ならば多かれ少なかれ、ハリーのような部分はあると思う。
 爽やかな読後感とは程遠いが、何かしら心に作品ではあると思う。仕事と家庭のストレスから逃げ出したくなっている貴方にお勧めの一冊。



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