JOHN STEINBECK 




 説明不要のアメリカの文豪。
 1902年にカリフォルニア州に生まれた著者は、スタンフォード大学で海洋生物学を学んだのち、さまざまな職業に就き作家を目指す。1929年に作家デビューを果たすものの、商業的には成功しなかった。1939年に発表された「The Grapes of Wrath(邦題:怒りの葡萄)」がピューリッツアー賞を受賞し、それに続いて映画化もされ、一躍作家としての地位を不動のものとする。その後も「East of Eden(邦題:エデンの東)」などの作品を発表し、1962年にノーベル文学賞を受賞するものの、晩年の生活は決して恵まれたものではなく、1968年に心臓発作で亡くなる。
 社会派の作家として知られる著者の作品は、登場人物たちの会話が方言で描かれるため、あまり読みやすいとは言えないが、だからといって特別に難解というわけでもない。ノーベル賞作家の作品は、話のネタに代表作くらいは読んでおきたい。




THE LONG VALLEY  12/01/21 更新

 読み易さ 
 面白さ   

スタインベックの生まれ故郷であるカリフォルニア州のサリナスを舞台とした13の短編を収めた作品集。

 いかにもスタインベックらしい短編集だと感じた。抑えた筆致で淡々とストーリーを展開し、その解釈はすべて読者にゆだねるというスタイルは、短編であってもまったく変わることがない。それだけに、スタインベックを最初に読むときにこの短編集から読んでも、ただ退屈なだけで、面白さはほとんど感じられないと思う。自分にしたって、意味がよくわからない作品も多かった。
 できれば、スタインベックの代表作である「The Grapes of Wrath」を読んでからこの短編集を読むと、それなりに楽しめると思う。なぜならば、この短編集には「The Grapes of Wrath」のエッセンスがあちこちに散りばめられているからだ。スタインベックの作品をある程度読んでからこの短編集を読むと、ほんの少しだけスタインベック作品の理解が深まるような気がする。



THE GRAPES OF WRATH  11/07/16 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

物語の舞台は、不況にあえぐ1930年代のアメリカ・オクラホマ州。殺人の罪で4年間服役したトム・ジョードは、久しぶりに帰った自分の家が空き家になっているのを見て驚く。たまたま居合わせた友人に話を聞くと、このあたり一帯の小作農たちは、大地主に土地を追われて散り散りになってしまったという。伯父のジョンを訪ねたトムは、いまにもカリフォルニアに出発しようとしている家族と再会する。途中で知り合った元宣教師のケイシーも含め、総勢13人がおんぼろトラックに乗り込んでカリフォルニアを目指すが、期待に胸を膨らませてたどり着いたカリフォルニアは、ジョード一家の期待を大きく裏切る場所だった。

 スタインベック氏の代表作である「怒りの葡萄」。以前から読みたいと思いながら、その圧倒的なボリュームになかなか手が出せないでいたが、いざ読んで見ると期待にたがわず面白かった。さしずめ、アメリカ版の「蟹工船」といったところだろうか。実際に、時代的にも「蟹工船」とほぼ同じだし、スタインベックが1902年生まれ、小林多喜二が1903年生まれと、共通する部分も多い。
 しかし、「蟹工船」では、資本家が悪で労働者が善という構図の下に労働者が団結するまでを描いているのに対し、この作品ではジョード一家の絆を中心に描かれているところが大きな違いだろう。もちろん、資本家の横暴ぶりも描かれてはいるのだが、それよりも、どんな過酷な状況でも誇りを失わずに生きていく人間の強さを描きたかったのだろうと思う。そういう意味で、この作品の中で一番強い人間は母親だ。どんな状況でも家族をまとめて前に進もうとする強さはすごい。しかし、この後のジョード一家に、はたして幸せは訪れたのだろうか。(もっと詳しい感想はこちら



TRAVELS WITH CHARLEY IN SEARCH OF AMERICA 07/11/23 更新

 読み易さ 
 面白さ   

58歳の作者が、愛犬のチャーリーとともにキャンピングカーでアメリカ再発見の旅に出かける。作者の見た「アメリカ」とは。

 サブタイトルにもあるとおり、「アメリカとは何か」をテーマにした旅らしいが、結局は「よくわからない」という結論に落ち着く。あまりにも当たり前すぎる結論に少しだけ脱力した。おそらく最初から「よくわからない」という結論を用意していたのだろう。だったら、こんな小難しいテーマなど掲げず、軽く読める旅行エッセイのほうが読むほうとしてもありがたい。ノーベル賞作家の書く軽いエッセイというのも、新鮮で面白いと思うのだが。
 特にこれといって面白いところもないが、地図を見ながら車を走らせているにも関わらず何度も道に迷ってしまうスタインベック氏が少しだけお茶目だった。つまりアメリカという国は、何も目標物になるものがないほど広大で単調な景色が広がっている国ということだろう。自分としての結論は、「アメリカとは道に迷いやすい国」ということだ。



SWEET THURSDAY 07/04/28 更新

 読み易さ 
 面白さ   

第二次世界大戦が終わり、アメリカの小さな港町キャナリー・ロウにも人々が戻ってきた。「先生」も戦争から戻って研究を続けるが、以前のような元気がない。それを心配したマックたちは、独身の先生にはパートナーとなる女性が必要なのではと考える。そんなとき、スージーという女性がキャナリー・ロウを訪れ、女主人のフォーナが経営する売春宿で働き始める。マックたちと同じように先生のことを心配するフォーナは、スージーと先生を結婚させようと骨を折る。その一方でマックたちは、先生を元気付けようと仮装パーティーを企画する。パーティーの中で強引に二人を結婚させようと考えるマックとフォーナの計画は、はたして成功するのか。

 前作 "Cannery Row" の続編にあたる本作は、前半こそ重くて暗い展開で退屈だが、後半は笑いあり涙ありの展開でなかなか盛り上がる。読んでいて本当に涙を流したり声を出して笑うほど盛り上がるわけではないが、心がほっと温かくなるような面白さがある。登場人物がみんないい人たちばかりで、穏やかな気持ちで読むことができる。ハッピーエンドが約束されたホームドラマみたいな感じだ。
 ただ、先生がやたらとアルコールを飲むのが気になった。朝起きていきなりビールを飲んだりするなんて、典型的なアルコール依存症患者ではないか。愛するスージーのためにも、体は大事にしてくださいね、先生。



CANNERY ROW 07/04/21 更新

 読み易さ 
 面白さ   

アメリカの小さな港町キャナリー・ロウは、貧しいながらも明るくたくましく生きる人々の活気があふれる街。マックを中心とする日雇い労働者のグループは、街の人々から「先生」と呼ばれて慕われている生物学者のために、パーティを開いて日頃お世話になっているお礼をしようと考える。先生を驚かせようと先生の家でパーティの準備をして帰りを待つ間に、街の人たちが次々にパーティに参加して、いつの間にか先生の家は大混乱。明け方に帰って荒らされた室内を見た先生は、思わずマックを殴ってしまう。大いに落ち込んだマックたちは、なんとかして先生を喜ばせようと、もう一度パーティを開くことを計画する。今度のパーティは、はたして成功するのか。

 大して盛り上がるストーリーではないけど、ほのぼのとした雰囲気が読んでいて心地いい。特に、貧しいながらものほほんと生きているマックたちのキャラクターがいい。そんなマックたちを暖かく見守る先生も、読んでいて安心できるキャラクターだ。
 それにしても、パーティを開くのなら、相手の家でやらずに自分たちの家に呼ぶのが普通なのに、「先生は自分の家が好きだから、先生の家でパーティを開こう」というマックの強引な理屈が笑える。しかも、1回目の失敗で懲りたはずなのに、次のパーティも先生の家で開くところがさらに笑える。みんな自分の家が好きなのは同じだけど、自分の家に押しかけられてパーティを開かれるのが好きな人はあまりいないと思うぞ。



THE RED PONY 06/05/26 更新

 読み易さ 
 面白さ   

カリフォルニア州の牧場で両親と使用人のビリーと住む主人公のジョディ少年は、ある日父親から赤いポニーをプレゼントにもらう。思いがけないプレゼントに喜ぶジョディは、その日からつきっきりでポニーの世話をする。そんなある日、ポニーを日光浴させようと外に連れ出したところ、突然のにわか雨に降られ、ポニーは風邪を引いてしまう。ビリーに教わりながら必死に看病するジョディの努力にも関わらず、次第に衰えていくポニー。ジョディの必死の願いは天に届くのか。のどかな牧場を舞台にした、短編連作集。

 なんとも静かな作品。静かすぎて、ちょっとだけ退屈。読んでいるうちに思わず眠りに引き込まれてしまう。眠れない夜にお勧めの一冊。
 ポニーの死と子馬の誕生というイベントを経験したジョディ少年は、生と死についていったい何を感じたのだろうか。作品内にはその答えは一切書かれていない。この作品を読んだ人がどう感じたのか、それがその人自身の答えになるのだろう。



THE PEARL 06/05/20 更新

 読み易さ 
 面白さ   

貧しい漁村に住むキノは、サソリに刺された息子の治療費を作るために、海中で真珠を探していた。幸運にも大きな真珠を見つけたキノは、村の仲買人のところに売りに行くが、その真珠には価値がないと言われてしまう。仲買人にだまされているのではないかと疑心暗鬼に陥ったキノは、妻のフアナと息子を連れて、大きな街の宝石商を目指そうと思い立つ。しかし、村を出るときに何者かに襲われたキノは、反対にその人物を殺してしまう。フアナは真珠を捨てて元の生活に戻ろうと言うが、キノは断固として反対する。街に向かう途中でも謎の3人組に追われ、キノ一家は追い詰められていく。

 メキシコの民話をベースにした作品らしい。さながら「不幸の真珠」とでもいうべき展開で、幸運をもたらすはずの真珠を見つけたばかりに不幸になってしまうというお話。貧乏人は欲をかいたら痛い目を見るよ、といういかにも昔話っぽい教訓でわかりやすいが、キノを追っていた人物の正体が最後までわからなかったのがいただけない。どうして価値のない真珠を狙ったのか、そこのところの説明がまったくないので、読み終わったときに大きな疑問符が頭の中に残ったままだ。
 誰しも突然大金を手にしたら舞い上がるのは当然で、貧しければなおさらのこと。別に悪いことをして得た真珠ではないのに、何の罪もないキノに対してここまで悲劇的なオチを用意する必要があったのか疑問だ。



OF MICE AND MEN 06/03/31 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

物語の舞台は1930年代のカリフォルニア。主人公のジョージとレニーは、農場を渡り歩きながら生活をする農場労働者。体が大きくて知恵遅れのレニーは、その怪力が原因である農場でトラブルを起こし、ジョニーとともに別の農場へと移るが、そこでも農場経営者の息子のカーリーとトラブルを起こしてしまう。さらにカーリーの妻も誤って殺してしまったレニーは、農場から逃げ出してしまう。森の中に逃げ込んだレニーを見つけたジョージは、辛い決断を迫られる。

 いつかは自分たちの土地を持つことを夢見ながら、毎日の辛い労働に耐える男たちの姿が悲しい。いつまでもかなわぬ夢を見ながら、農場を渡り歩くジョニーとレニーも孤独なら、同じ農場で働く仲間たちもまた孤独だ。そして、カーリーとその妻も同じように孤独なんだと思った。当時のアメリカは生きていくには辛い時代だったということがよくわかる。
 そしてラストもまた辛い。最後まで自分たちの農場を持つことを信じて疑わなかったレニーの無邪気さが、読んでいて辛かった。悲しさの中にも人間の優しさやたくましさを感じさせる佳作。



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