SCOTT SMITH 




  ホラー作品を手がけるアメリカの作家。
 1965年にニュージャージー州で生まれた作者は、コロンビア大学を卒業後、1993年に出版した「A Simple Plan」で作家デビューを果たす。この作品の映画化に際して自ら脚本を書いた作者は、映画のヒットに伴い、数多くの賞を受賞する。このデビュー作から13年もの年月を経て待望の第2作「The Ruins」が出版され、この作品も2008年に映画化された。
 作者の書く文章は特に難しいということもなく、ペーパーバック初心者でも充分に楽しめるレベル。登場人物の心理を深く描き出すスタイルが特徴で、こうした作品が好きな人にとってはたまならないはず。かく言う自分もその一人だが、それだけに、作者のあまりにも寡作な創作ペースが残念。




THE RUINS  08/11/08 更新

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

大学を卒業したばかりの2組のアメリカ人カップルが、卒業旅行として真夏のメキシコに出かけるところから物語は始まる。4人は旅先でドイツ人観光客のマティアスと知り合うが、マティアスの弟ヘンリックが数日前から行方不明になっていることを知る。マティアスの話によると、ヘンリックはジャングルの奥地にある廃墟の発掘調査に向かったらしい。4人はマティアスとともにヘンリックを探しに出かけようとするが、同じく旅先で知り合ったギリシャ人のパブロも一緒に廃墟へ向かうことになる。最初は軽いピクニック気分で出かけた6人だったが、たどり着いた廃墟には、恐ろしい罠が待ち受けていた。

 久しぶりに面白いと思える作品だった。とにかく、こういうサバイバル物というのは自分の大好物で、冬山や大海原での遭難をテーマにしたものならば、フィクション、ノンフィクションを問わずに激しく自分のツボなのだ。
 サバイバル物というだけならどこにでもあるが、この作品の素晴らしいところは、登場人物が少なくて話がわかりやすく、各キャラクターの特徴も極めてわかりやすく描き分けられているところ。冷静沈着なジェフ、心配性なエイミー、お調子者のエリック、軽率なステイシー、寡黙なマティアス、楽天家のパブロというキャラクターの配置は、こういうサバイバル作品においては絶妙な選択だと思う。こういうわかりやすい登場人物たちの心理を深く描き出しながら物語が進むので、ホラーというよりは極限の状況における人間ドラマとしても読むことができる。
 ストーリーとしてはほとんどあってないようなものなので、ハラハラドキドキのジェットコースター的な展開が好きな人が読むとがっかりするかもしれないが、各キャラクターの心理をじっくりと味わいながら読みたいという人には激しくお薦めの一冊。



A SIMPLE PLAN   08/08/17 更新

 読み易さ 
 面白さ   

アメリカの静かな街で会計士として働くハンクは、妻のサラとともに平凡ながらも幸せな生活を送っていた。そんなある日のこと、兄のジェイコブとその友人であるルーと3人で外出したときに、雪の積もった林の中に墜落している小型飛行機を発見する。パイロットはすでに死亡していたが、機内に置かれていたザックの中には、400万ドルを超える大金が入っていた。半年間だけ様子を見て、何も問題がなければその時点で山分けすることで合意した3人だったが、思わぬことがきっかけとなり、ハンクは次第に窮地に陥っていく。そんなハンクが頼るのは、常に冷静に考えを巡らせるサラだった。

 この作品はなんといっても兄のジェイコブの存在が効いている。デブで無職で不潔で内気という典型的なダメ人間のジェイコブだが、そんなダメな兄に対するハンクの軽蔑混じりの愛情とでもいうべき複雑な感情が非常によく描けていると思う。この作者は、人物をきっちりと書く力がある人だということがよくわかる。スティーブン・キングがこの作品を絶賛しているらしいが、キングの場合もじっくりと人物を書き込むスタイルだから、そのあたりで共感できるものがあるのだろう。
 それはともかく、この作品で一番ひっかかったのが、サラの助言で50万ドルだけ元の場所に戻しておくところ。これはどう考えても危険で無意味な行為だと思う。そもそもハンク自身が、そんなカモフラージュをしたらかえって危険だとジェイコブとルーに対して説教していたわけだから。どうしてこういう展開にしたのかイマイチ疑問ではあるが、ハンクは恐妻家だということで納得しておこう。



ペーパーバック一覧へ

TOP