EDGAR ALLAN POE 




 推理小説の開祖として有名なアメリカの作家。日本の推理小説のパイオニアである江戸川乱歩が、「エドガー・アラン・ポー」をもじって自分のペンネームを決めたことはあまりにも有名。
 1809年にボストン州で生まれた作者は、少年時代をイギリスで過ごした後、バージニアのリッチモンド大学に入学する。しかし、在学中にギャンブルにはまって借金を作ってしまい、大学を中退する。その後はアメリカ陸軍に入隊して2年間を陸士として務める。除隊後は詩集を自費出版するなどして創作活動を開始し、雑誌の編集長を務めるかたわら、自身が編集する雑誌に短編小説を発表する。最初の推理小説と呼ばれる「モルグ街の殺人事件」や、怪奇小説の名作「アッシャー家の崩壊」など、後世に大きな影響を与える作品を数多く残す。晩年はアルコールに溺れ、1849年にアルコールが原因で亡くなる。
 19世紀の文学ということで、当然ながら作者の書く文章はかなり難しい。ただ、作者の残した小説はすべて短編なので、ストーリーを追うことだけに集中すればそれなりに読める。推理小説も怪奇小説もどちらも名作揃いなので、ヒマがあったら代表作くらいは読んでおきたい。




THE PIT AND THE PENDULUM   09/09/19 更新

 読み易さ 
 面白さ   

裁判で死刑判決を宣告された男が真っ暗な牢獄で目を覚ますところから物語は始まる。牢獄の広さを知ろうと暗闇の中を手探りで進むうちに誤って転んだ男は、自分の顔の下に大きな穴が開いていることに気付く。あわやというところで命拾いをした男だったが、次に目を覚ましたときには牢獄に明かりが灯り、身体を台の上に縛り付けられていた。天井からは鋭い刃が付いた巨大な振り子が下がり、左右に揺れながら少しずつ下に降りてくる。身動きのできない男は、どうやってこの窮地から逃れるのか。

 これは怪奇小説のジャンルに分類される作品で、実際にかなり怖い内容だ。最初に暗闇に潜む落とし穴の恐怖が描かれ、次にじりじりと降りてくる振り子の恐怖が描かれる。最後にはさらに逃げ場のない恐怖が待っているのだが、とにかく最初から最後までこうした恐怖の連続で、文章の難しさを忘れて思わずページをめくってしまう。ポーの怪奇小説の中では、かなり具体的な恐怖を描いたわかりやすい作品だと思う。
 タイトルは忘れてしまったが、江戸川乱歩の作品にもこれとまったく同じ場面が出てくる。乱歩という人は、アイデアに詰まると海外の作品からネタを拝借してくるという得意技を持っていたのだが、拝借するのはペンネームだけにしてもらいたいと思う。



THE PURLOINED LETTER   09/09/19 更新

 読み易さ 
 面白さ   

パリ市警の警視総監が名探偵オーギュスト・デュパンを訪ねてくるところから物語は始まる。ある貴婦人が大事な手紙を盗まれ、総監は多額の報酬を約束されて盗まれた手紙を探すことになる。手紙を盗んだ犯人はわかっているため、その犯人の家を徹底的に捜索したにも関わらず、どうしても手紙を見つけることができない。困り果てた総監からその話を聞いたデュパンは、いともあっさりと犯人の家から手紙を見つけ出してしまう。デュパンはどうやって盗まれた手紙を見つけ出したのか?

 名探偵オーギュスト・デュパンが登場する作品といえば「モルグ街の殺人事件」ばかりが有名だが、この作品にもデュパンは登場する。派手な殺人事件が起こるわけではないが、心理的な盲点と他人の心理の裏を読むことをテーマにした佳作だと思う。これも中学生の頃に読んだ記憶があるが、そのときは「モルグ街の殺人事件」よりも面白いと感じたことを覚えている。
 このトリック自体は非常に単純なものだが、デュパンが語る詳細で具体的な説明により、説得力のあるストーリーになっている。こうしたジャンルの小説が皆無だった当時にこれだけの作品を書いたというのは、改めてすごいことだと思う。



THE GOLD-BUG   09/09/05 更新

 読み易さ 
 面白さ   

カロライナ州のサリバン島で隠遁生活を送るレグランドが珍しい虫を見つけるところから物語は始まる。この発見に興奮したレグランドは、訪ねてきた友人に虫のスケッチを描いて見せるが、それを見た友人は虫ではなくて人骨に見えるといって笑う。絵には自信があるレグランドは、自分のスケッチを笑われて怒るが、よく調べてみると、その紙はあぶり出しになっていることに気付く。人骨の横に暗号らしきものが書かれていることを発見したレグランドは、その暗号を見事に解読して、海賊の埋蔵金を発見する。

 この作品は、中学生の頃に読んで感動した覚えがある。どんなに複雑に見える暗号でも、その規則性さえ見抜いてしまえば、後はいとも簡単に解読できるものだということを知って感動したのだ。もちろん、この作品に出てくる暗号はそれほど複雑なものではないのだろうが、この作品が1843年に書かれたものであることを考えると、やはりすごいと思う。
 この作品のさらに優れているところは、宝探しの冒険小説という要素も含んでいるところだ。改めてこの作品を読んでみると、暗号という謎解きの部分よりも、海賊が残していった財宝を探すという部分に心が惹かれることに気付いた。短編でまとめるのが惜しいくらいにいろんな楽しみが詰まっている作品だと思う。



THE MURDERS IN THE RUE MORGUE  09/09/05 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ある日の未明、パリのモルグ街で残虐な殺人事件が発生する。事件の現場となった部屋では、刃物で喉を深く切られた母親と、煙突に逆さまに押し込まれた娘の遺体が発見される。部屋の窓は内側から鍵がかかっており、手がかりとなる遺留品もない。難解な密室殺人事件に手を焼いたパリ市警は、明晰な頭脳を持つオーギュスト・デュパンに事件の解明を依頼する。

 さまざまなパターンのトリックが出尽くした感のある現在のミステリー小説を読んでいるいまの読者にとっては物足りないトリックかもしれないが、これが1841年に書かれたことを考えると、やはりすごいと思う。日本ではまだ黒船すら来襲していない頃にこうした完成度の高い推理小説が書かれたというのは、驚きですらある。後世に大きな影響を与えた作品というのも、大いに納得できる。
 ただ、作中でデュパンがワトソン役である「私」の考えていることを見事に言い当てる場面があるのだが、これにはちょっと失笑した。人間の頭の中はこれほど単純にはできていない。おそらく、コナン・ドイルはこの描写を読んで、理論的な人間観察や思考推理といったシャーロック・ホームズの得意技を思いついたのだろう。そういった意味では、これもまた後世に大きな影響を与えた描写と言えるのかもしれない。



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