DAVE PELZER 




 自身の虐待体験を描いて話題となったアメリカの作家。
 1960年にカリフォルニア州で生まれた作者は、幼い頃から始まった母親からの過酷な虐待を、12歳で里親に預けられるまで受け続ける。その後も何組もの里親の元で生活を送り、18歳のときにアメリカ空軍に入隊する。1995年に出版された「A Child Called "IT"」で自身の虐待体験を描き、一躍話題となった。作家活動のほかにも、青少年の保護プログラム活動も行っている。
 易しい文章で綴られる作者の作品はどれも読みやすいので、ペーパーバック初心者にもお勧め。ただし、易しい文章で綴られる「A Child Called "IT"」の虐待シーンはかなり残酷なので、読むときにはちょっとだけ辛いかも。




A MAN NAMED DAVE  06/02/18 更新

 読み易さ 
 面白さ   

アメリカ空軍に入隊して憧れのパイロットを目指して奮闘するデビッドのもとに、父親が入院したという報せが届く。アルコール依存症のためにホームレス生活を送っていた父親の変わり果てた姿に深く悲しむデビッドは、これを機会にもう一度家族の絆を取り戻そうと母親に会いに行き、父親を見舞うように言う。しかし、母親はこの願いを聞き入れず、自らもアルコールに溺れる毎日を送る。やがて父親は亡くなり、パツィーという女性がデビットの前に現れる。パツィーと結婚したデビッドに息子のスティーブンが生まれ、ようやく幸せを手に入れたかに思えたが、浪費癖のなおらないパツィーとの衝突が始まる。さまざまな苦難に直面しながらも、デビッドは逃げ出すことなく懸命に生きてゆく。

 シリーズの完結編。
 この作品にはパツィーという女性が登場するが、こういうノンフィクション作品に登場する人物の心境はどういうものなのだろう。デビッドの両親はもう亡くなっているから問題はないかもしれないが、かなりの悪人として描かれるパツィーの心中は穏やかならざるものがあるのではないだろうか。読み手は作者の視点に立って読むしかないから、作者のバイアスのかかった読み方になるのはどうしても避けられない。デビッドにとってはどんなに悪人であっても、書籍という一方通行のメディアで一方的に悪人として描くのはどうかと思う。
 それにしても、デビッドの母親は何をして生計を立てていたのかが激しく気になる。デビッド以外の4人の子供を育てるだけのお金を、こんなアル中の体でどこから工面したのだろうか。こういう自堕落な生活を送るだけの余裕があったことが、彼女が不幸になった原因の一つなのかもしれない。



THE PRIVILEGE OF YOUTH  06/02/04 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ハイスクールに進学したデビッドは、引っ越した先でポールとハワードの2人と友達になる。相変わらず学校では周囲になじめないデビッドだったが、3人で遊んでいるときは元気そのもの。周囲の大人たちの中からも理解者が現れ、楽しい青春時代を過ごすデビッド。しかし、里親から独立しなければならない18歳という年齢を目前にし、デビッドは自分の進路の決断に迫られる。ハイスクールを中退したデビッドが選んだのは、空軍への入隊という道だった。

 前作"The Lost Boy"の続編(出版年はこのシリーズの完結編"A Man Named Dave"よりも後であるため、正確には番外編と言うべきかもしれないが、内容的には"The Lost Boy"の続編にあたる)。
 前の2作とは違い、この作品は明るい。デビッドとポールとハワードの3人がいろんなやんちゃをしながら、それぞれに成長していく姿が描かれていて、さわやかな読後感だ。おそらく作者自身も、この作品は楽しみながら書いたのだと思う。明るい文章を読むとそれがよくわかる。明るいデビッドに出会えて、自分も嬉しくなった。



THE LOST BOY  06/01/21 更新

 読み易さ 
 面白さ   

母親からの虐待からようやく解放されたデビッドは、親切な里親の元での新しい生活を始める。しかし、なかなか周囲になじむことのできないデビッドは、近所の人たちから冷たくされ、友人たちからも裏切られて辛い思いをする。里親も次々に代わり、不安な思いで日々を送るデビッドだが、周囲の偏見の目にも負けず力強く生きていく。

 「A Child Called "IT"」の続編。
 母親からの虐待からようやく解放されたと思ったのもつかの間、今度は里子としての辛い現実に直面することになる。里子が周囲の人間から偏見の目で見られるというのはある程度しかたのないことだが、非行に走ることもなくまっすぐに育ったデビットは立派だと思う。これほど劣悪な環境でありながら、これほどまっすぐに育つというのは奇跡的なことだとすら思う。
 しかし、どれほどひどい仕打ちを受けても、母親の愛情を求めてしまうデビッド少年が悲しい。どんなにひどい母親であっても、血のつながりを断つことはできないということだろうか。



A CHILD CALLED "IT"  06/01/07 更新

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

小学生のデビッド少年は、優しい両親と仲のよい兄弟に囲まれて幸せな日々を送っていた。しかし、そんな幸せな生活は母親からの虐待という形で終わりを告げる。食事も与えられずに暴力を受け、反抗することすら許されずに母親の奴隷となって日々を送るデビッド。最愛の父親にも見捨てられ、母親からは「IT」とまで呼ばれて絶望するデビッドの壮絶な体験を描いたノンフィクション。

 作者自身の虐待体験を描いたノンフィクション作品。
 その凄まじいまでの虐待ぶりには寒気を覚えた。どうしたら自分の子供にここまで残酷になることができるのか、まったく理解できない。この母親に感じるのはもはや憤りではなく、背筋の寒くなるような恐怖である。憤りを覚えるのは、我が子の虐待を目の前にしながら何一つできなかった父親の方だ。何もできずに息子の虐待をただ眺めているだけの父親に、読んでいて憤りを覚えた。
 それにしても、何が母親をこれほどまでの虐待に走らせたのかがわからない。こういう病んだ人間の心の闇を一度でいいから覗いてみたいといつも思う。



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