OTHERS (Non-Fiction) 



A NIGHT TO REMEMBER  by Walter Load 17/04/16 更新

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1912年に発生したタイタニック号沈没事故を克明に再現したノンフィクション。

  映画の「タイタニック」は観たことがないので、処女航海の途中で氷山にぶち当たって沈没して大勢の犠牲者を出したということくらいしか知らない状態で読んだのだが、当時の客船は、タイタニック号を含めて、定員を大幅に下回る数の救命ボートしか用意されていなかったということに驚いた。ということは、乗客を救命ボートに乗せる乗組員たちは、自分たちは助からないかもしれないと思いながら、自分に与えられた任務を遂行していたわけで、それを考えると胸が痛くなる。しかし、乗客の安全を確保するために救命ボートに乗って助かった乗組員も大勢いたわけで、このあたりの心境は、乗組員同士はどのように感じていたのだろうか。
  自分の命を懸けて乗客の救出にあたった乗組員たちにも感動したけれど、自分が最も胸を打たれたのが、救出作業が続く甲板で最後まで演奏を続けていたバンドだ。この作品では、このバンドのことにはほとんど触れられていないけれど、自分たちはこのまま死ぬと確信しながら演奏するなんて、いったいどんな気持ちだったのだろうか。命を懸けた演奏に勇気づけられたおかげで助かった人がいたであろうことを願ってやまない。



BORN IN THE FOURTH OF JULY  by Ron Kovic 15/02/22 更新

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アメリカの独立記念日である7月4日に生まれたロン・コービックは、高校を卒業して海兵隊に入隊し、ベトナム戦争に出征する。戦争で活躍して英雄になることを夢見ていたロンだが、敵の銃弾を受けて下半身不随になってしまう。それまでは、戦争の正当性を信じて疑わなかったロンだったが、アメリカに帰国してからは反戦運動に参加して戦争反対を訴える。

  トムクルーズ主演で映画化されたこともあり、本は読んだことはないが映画は見たことがあるという人も多いかもしれない。アメリカを愛し、ベトナム戦争の正義を信じて疑わない無邪気な若者が、悲惨な戦争を体験したことによって戦争の欺瞞性に気づいていくところがよく書けていると思う。特に、性的不能になったロンが、売春宿に通って文字通り売春婦と「寝る」シーンはものすごく悲しかった。成人したばかりの男子が、この先ずっと性的な行為をできないという辛さはどれほどだろうと考えさせられた。
 この作品ですごく気になったのが、語り手であるロンの視点が、「I」という一人称と「He」という三人称でコロコロと変わることろだ。どういう効果を狙ったものなのかよくわからないけれど、読み手としては混乱するだけなので、あまり意味がないと思う。



HALF A LIFE  by Darin Strauss 14/11/24 更新

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高校卒業を目前に控えたある日のこと、18歳のダーリンは友人たちとドライブに出かける。見通しのいい道路を走っているときに、突然自転車が突っ込んできて、自転車に乗っていた女性は死亡してしまう。その女性は、ダーリンと同じ高校に通うセリーヌという生徒だった。多くの目撃証言により、ダーリンにまったく過失はないことが証明されるが、ダーリンは、セリーヌの命を奪ってしまった自分を責め続ける。セリーヌの両親は、ダーリンのことを責めるつもりはないと約束するが、ダーリンが大学に入学すると、巨額の賠償金を請求する裁判を起こす。社会に出て作家になり、結婚して子供もできたダーリンは、あらためて事故のことを書こうと決心する。

  事故を起こしてから、自分の人生の半分に当たる時間が経過したことにより、あらためて事故を振り返る意味で書かれた自伝ということらしい。いかにもプロの作家らしく、けっこう難しい表現というかすかした表現があちらこちらに出てくるけれど、かなり正直に書かれていると感じた。特に、事故現場で周りの目を気にして大げさに動揺する芝居をするところなどは、「なるほど、実際にはそんなものかもね」と納得できたりする。
 この作品の内容をそのまま信じれば、セリーヌは自殺をするためにダーリンの運転するクルマに突っ込んできたわけで、ダーリンからしたら迷惑以外の何物でもない。それでも、「相手が悪いんだ、自分は何も悪くない」と開き直ることができないのが、普通の人間の感情なのだろう。だから、ダーリンにまったく過失はないとわかっていながら、巨額の賠償金を要求する裁判を起こしたセリーヌの両親の気持ちも、なんとなく理解できる。



PERFECT MURDER PERFECT TOWN  by Lawrence Schiller 14/05/25 更新

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1996年のクリスマスの夜に発生したジョンベネちゃん殺害事件について、著名なジャーナリストが第三者の視点から綴るノンフィクション。

 これは、事件に直接かかわっていないジャーナリストが第三者の立場から書いたノンフィクションだが、真犯人を推理するというよりも、事件をめぐる警察と地方検事局とマスコミの対立の構図を中心として描いた作品になっている。実際に捜査を担当したトーマス刑事が書いた「JONBENET」を読んだときには、地方検事局は腐りきっていると憤慨したが、この作品を読んでみると、一番責任が重いのは、殺人事件の捜査経験が乏しいにもかかわらず、外部からの協力を断って独断で捜査を行った警察の現場責任者であるジョン・エラー刑事ではないかと感じた。
 これで、両親(特に母親)を疑う刑事が書いたノンフィクション、両親が書いたノンフィクション、第三者であるジャーナリストが書いたノンフィクションと、立場の異なる人間が書いたノンフィクションを三冊読んだわけだが、結局のところだれが真犯人なのかわからないままだ。母親が何らかの形で事件にかかわっているのは間違いないと思うが、それでは母親がジョンベネちゃんを殺したのかと問われれば、その可能性は低いと思う。知れば知るほど、本当に謎の多い事件だと感じる。



THE DEATH OF INNOCENCE  by John & Patsy Ramsey 14/05/04 更新

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1996年のクリスマスの夜に発生したジョンベネちゃん殺害事件について、マスコミから容疑者扱いを受けた両親が綴るノンフィクション。

 実際に捜査を担当したトーマス刑事が書いた「JONBENET」を読んだときには、両親が事件に関与しているのは間違いないと思ったが、その両親が書いたこの本を読んでみると、実は両親はシロなのではないかと感じた。つまりは、立場が変われば見方も大きく変わるということだ。トーマス刑事は両親が怪しいと頭から思い込んでいるから、事件の見方もそうしたバイアスが強くかかったものになっている。そういうバイアスが強くかかった「JONBENET」を読めば両親が怪しいと思うのも当たり前のことで、それと同じように、あくまでも身の潔白を主張する両親が書いたこの本を読めば、もしかしたら本当に無実なのかもしれないと思えてくる。もし本当に無実だとしたら、凶悪犯に娘を殺されたのに、世界中のマスコミからひどいことを書かれた両親は本当に気の毒だと思う。
 しかし、やっぱり不自然な点もいくつかあって、両親は絶対にシロだと言いきれないという印象があるのも事実だ。母親が亡くなったいまとなっては、真相が明らかになることはないのかもしれない。



JONBENET  by Steve Thomas with Don Davis 14/04/06 更新

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1996年のクリスマスの夜に発生したジョンベネちゃん殺害事件について、実際に捜査を担当したスティーブ・トーマスが、その捜査の舞台裏を克明に描いたノンフィクション。

 この事件は日本でも大きな話題になり、当時のワイドショーはジョンベネちゃん事件一色だったような記憶がある。この作品では、実際に捜査を担当した刑事が、その内幕を暴露している。この作者の言葉を信用するならば、コロラド州ボールダーの地方検事局は腐りきっているとしか言いようがない。ラムゼー家が雇った弁護団とのトラブルを恐れるあまり、重要な証拠を弁護団に横流しするなど、言語道断な捜査妨害ばかりしていて、読んでいて頭にきた。これでは、作者であるトーマスが刑事を辞めるのも無理はないと思う。この検事局が犯した罪は、ジョンベネちゃんを殺害した犯人と同じくらいに重い。
 この作品では、母親であるパトリシアの犯行説を強く匂わせているが、2008年に行われたDNA鑑定により、両親の潔白が証明された形となった。しかし、この作品を読む限りでは、両親が何らかの形で事件に関与したのは間違いないと思う。それほど、状況証拠的には限りなくクロに近い。



TOUCHING THE VOID  by Joe Simpson 14/02/02 更新

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登山家のジョー・シンプソンは、友人のサイモン・イエーツとともに、アンデス山脈の雪山登山に挑む。無事に登頂を果たした二人だったが、下山の途中でジョーが脚を骨折してしまう。二人は協力して下山を目指すが、ジョーがクレバスに落ちるという事故が発生する。ジョーとロープでつながれたサイモンは、懸命にロープを支えるが、自分の命まで危なくなっていることを知り、ナイフでロープを切断する。無事に下山したサイモンは、ジョーを見捨てた罪悪感にさいなまれるが、そのときジョーは、雪山を這って下山しながら麓のベース・キャンプを目指していた。

 1985年に実際に起きた事故を描いたノンフィクション。2003年に映画化もされているらしい。
 事故を起こした本人が書いているため、非常に臨場感がある。特に、骨折した脚を引きずりながら雪山を這って進んだり、激痛に耐えながら片足でジャンプして下山するあたりの描写は迫力がある。また、クレバスに一人で取り残されて絶望しながら夜を明かす場面も、非常にリアルに描かれている。この満身創痍の状態で、よくぞ険しい雪山を下山できたものだと思う。その精神力と体力は本当にすごいと思うが、なぜここまでして雪山に上ろうとするのかがよくわからない。登山家という人種は、自分の理解を超えた世界に存在する人種なのだとつくづく感じる。



BETWEEN A ROCK AND A HARD PLACE  by Aron Ralston 14/01/19 更新

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冬山の登山を中心に活動する27歳のアーロン・ラルストンは、2003年4月に休暇を取ってユタ州の渓谷に出かける。しかし、渓谷を歩いている途中で大きな岩が落ちてきて、右腕が大岩と岩壁の間に挟まってしまい、身動きが取れなくなる。ナイフで岩を削ったり、ロープワークで岩を持ち上げようとしたが、いずれも成功することなく、わずかな水だけを頼りに5日間を過ごす。やがて水もなくなり、自分の尿を飲みながら救助を待つが、だれにも行き先を告げていなかったため、救助活動が開始されるまでに数日を費やしてしまう。なんとか自力で脱出しようとするアーロンは、ついに右腕を切断することを決意する。

 2010年に映画化されたこともあるノンフィクション。とにかく、なんとしてでも脱出しようとするアーロンの執念がすごい。執念だけでなく、自分の置かれている状況などを冷静に考えられるところもすごい。この5日間で体重が40ポンドも減ったというのだから、いかに過酷な状況だったかということがわかる。
 ただ、自業自得だろうと思わないこともない。この事故に遭う前も、いくつ命があっても足りないような無茶をしてきているから、いつかはこうした事故に遭うのは必然だろうという気がする。この事故でも、周囲の人間を大勢巻き込んで救助活動が行われたわけで、自分だけが苦しい思いをするのならまだしも、周囲の人間にまで迷惑をかけたらイカンだろう。そういう周囲の人たちに対する感謝の気持ちも足りないような気がするし。などという常識的なことを考えずに読めば、純粋に彼の超人的な能力に驚嘆できると思う。



DEATH OF A PRINCESS  by Thomas Sancton & Scott Macleod 13/10/06 更新

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ダイアナ妃と恋人のドディ氏が命を落とした1997年8月31日の交通事故を、さまざまな角度から検証したノンフィクション。

 このノンフィクションを読んで思ったのは、いまでも巷で囁かれているような、交通事故に見せかけた暗殺事件などという要素はまったくないということだ。単に、酒に酔った運転手が無謀なスピードでトンネルに突っ込んで勝手に事故を起こしたというだけのことだ。それ以上でもそれ以下でもない。たしかに、細かく見ていくと疑わしく感じるような部分もあるけれど、それを暗殺事件に結び付けて考えるのは無理がありすぎる。世の中には、事件の裏の裏まで読むようなマニアックな人もいるけれど、事件の真相というのは非常に単純なものだったりすることが多いと思う。



ALIVE  by Piers Paul Read 13/09/16 更新

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1972年10月、ウルグアイのラグビーチームが軍用機をチャーターしてチリに向うが、アンデス山中で遭難事故に遭ってしまう。45人を乗せた飛行機は大破するが、一部の乗客は生き残り、機内での過酷な環境に耐えながら救出を待つ。しかし、雪深い山中での捜索活動は成果を上げることができず、政府の判断によって打ち切られてしまう。生存者たちは落胆しながらも、自力での脱出を目指して準備を進める。最終的に16名の生存者が救出されるまでを克明に描いたノンフィクション。

 非常に綿密な取材のもとに描かれた労作だと思う。実際の生存者たちのキャラクターについても、リーダーシップを発揮する人、進んで困難な仕事を引き受ける人、明るくて場を盛り上げる人、といった「いい人たち」だけでなく、怠け者、後ろ向きな人、トラブルメーカーなど、「厄介者」についても詳細に描かれているところが素晴らしい。
 しかし、何と言っても、この作品の最大の読みどころは、仲間の死体を食べて生き延びたという「カリバニズムの是非」だろう。カリバニズムといえば、日本では「ひかりごけ事件」が有名だが、この作品の場合は、集団でのカリバニズムという点で、かなり特異なケースだと思う。人肉だけでなく、最後には内臓や脳味噌まで食べることになるのだが、生きるためとはいえ、さすがにここまでくると嫌悪感が先に立ってしまう。それはともかく、すごい話であることは間違いない。



WHOEVER FIGHTS MONSTERS  by Robert K. Ressler 13/08/04 更新

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1970年代から80年代にかけてFBIの捜査官として活躍し、シリアルキラーのプロファイリング手法を確立した著者が、実際の事件を例にしてシリアルキラーの実態を描き出すノンフィクション。

 の作品では、プロファイリングによって犯人像を見事にあぶりだした実例が豊富に紹介されているが、まったくの見当外れだったケースもきっとあっただろうから、そうした失敗例も紹介してほしかった。
 そうは言っても、これほどまで見事に犯人像を当てられてしまうと、プロファイリング恐るべしと思ってしまう。アメリカ国内のシリアルキラーのほとんどが、20〜30歳代の白人だということだが、やっぱりアメリカは怖い国だと思ってしまう。日本のシリアルキラーといえば、大久保清くらいしか思い浮かばない。白人は優等人種だとかいいながら、こうした危険な人間を数多く抱えている人種だということだ。



THE LONG WALK  by Slavomir Rawicz  13/02/03 更新

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ポーランド人のスラヴォミールは、1940年に無実の罪でソビエト軍に逮捕されてしまう。刑務所での過酷な取り調べと、理不尽な裁判により、懲役20年の判決を受けたスラヴォミールは、他の受刑者たちとともにシベリアの収容所に送られる。過酷な環境で懲役生活を送るスラヴォミールは、収容所の責任者であるソビエト将校からラジオの修理を依頼されたことがきっかけで、将校の夫人と知り合う。幾度か夫人と会話を重ねていくうちに、収容所から脱走してはどうかと夫人が切り出す。スラヴォミールは、6人の仲間を集め、夫人の協力を得て、真冬のシベリアへと脱出する。脱走の途中で、集団農場から逃げ出した少女に出会った一行は、総勢8名となり、はるか南のインドを目指して過酷なロングウォークを続ける。

  実際の体験を基にしたノンフィクションで、映画化もされているらしい。実は、何年か前に翻訳本を読んだことがあって、そのときはあまり面白いとは思わなかった。これは、訳文がヘタクソだったことが原因で、改めてペーパーバックを読んでみたところ、激しく面白かった。
 いや、面白いと言ったら失礼かもしれない。とにかく、あまりにも過酷な道のりで、これが本当に事実なのか、にわかには信じがたいくらいだ。真夏のゴビ砂漠横断や真冬のヒマラヤ踏破のくだりは、人間の精神力とはこれほどまでにすごいものかと改めて感じた。集団農場から脱走してきた少女がゴビ砂漠で力尽きる場面は、涙なしには読めない。
 それ以上に感動したのは、モンゴルやチベットの人たちの優しさだ。ホームレス並みの悲惨な外見をした一行を、嫌な顔ひとつせずに暖かくもてなすなんて、なかなかできるものではない。こうした人情がなかったら、彼らはインドにたどり着くことはできなかっただろう。貧弱な装備でシベリアからインドまで歩きとおした力強さと、悲惨な外見をした初対面の外人を暖かく迎え入れる優しさに触れて、まだまだ人間も捨てたもんじゃないなと感じた。

 



CROSSED OVER: A MEMOIR, A MURDER  by Bevery Lowry  11/12/29 更新

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1983年にテキサス州で発生した殺人事件で死刑判決を受けた女性死刑囚カーラ・フェイ・タッカーを描いたノンフィクション。1984年に交通事故で息子を亡くした女性作家のベバリー・ロウリーが刑務所のカーラを訪ね、心の交流を深めていく。ドラッグに溺れた末に、ツルハシで男女2人を惨殺したカーラだが、逮捕後はキリスト教に入信し、自分の犯した罪に真摯に向き合い、誠実な人間としての心を取り戻していく。

 ベバリー・ロウリーという人は、元々はフィクション作家で、これが初めてのノンフィクション作品ということらしいが、この人はノンフィクションには向いていないと思った。死刑囚のカーラに絡めて、交通事故で亡くした自分の息子のことも書いているのだが、結局はカーラをダシにして自分の悲劇について書きたいだけなのではないかと感じてしまう。読者が期待するのは、女性でありながらツルハシで殺人を犯したカーラとはいったいどんな人間なのかということであって、無名の作家の悲劇など、これっぽちも興味はない。肝心のカーラについても書き込みが浅く、結局何もわからないままに終わってしまう。ノンフィクション作品としては完全な失敗作だろう。
 その後のカーラは、獄中からテレビ番組に出演したことがきっかけで全米中からの同情を集め、ローマ法王も死刑執行の停止を求めたほどの盛り上がりを見せたが、当時のテキサス州知事だったジョージ・W・ブッシュにより、1998年に死刑が執行されたらしい。合掌。



HOW STARBUCKS SAVED MY LIFE
 by Michael Gates Gill  11/07/30 更新

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主人公のマイクは、大学を卒業して入社した大手広告会社で順調に出世して重役にまで登りつめるが、53歳のときに自分が育てた部下から突然解雇を言い渡される。その後は自分のコンサルタント会社を立ち上げるが、次第に仕事が減っていき、さらに不倫が原因で妻とも離婚し、来月の家賃にさえ困るという苦境に陥る。そんなとき、たまたま入ったスターバックスで女性店長のクリスタルに出会ったことから、マイクの人生が大きく変わっていく。63歳にして一から人生をやり直した自分の体験を綴ったノンフィクション。

 大手広告会社の重役としてエリート人生の頂点を極めた作者が、解雇をきっかけに転落し、還暦を過ぎてから人生を一からやり直すというお話で、なかなか面白かった。ケネディ大統領夫人やらエリザベス女王やらヘミングウェイやら、超ビッグネームが次々と出てきて、広告会社というのはやっぱり仕事内容も華やかだということがわかる。そんな華やかな世界から、一転してコーヒーショップの店員としてトイレ掃除から始めたわけだから、さぞかし大変だったことだろう。しかし、そうした辛さは表に出さず、目の前の仕事を懸命にこなしていく姿が素敵だ。
 人間というものは、その気になれば年齢がいくつになっても変われるものだということを知った。自分の場合も、こんなに素直な気持ちになれるだろうかと考えたが、おそらく無理だろう。でも、こういう人生もあるのだということを知っただけでも、なんだか救われたような気がする。



DRINKING
A LOVE STORY 
by Caroline Knapp  
07/10/27 更新

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ジャーナリストである作者が、アルコール依存症だった頃の自分の体験を描くノンフィクション。

 アルコール依存症に関する本は何冊か読んだことがあるが、女性のアルコール依存症者の経験を読むのはこれが初めて。女性だけに、男性のように暴れまわったりすることはないが、アルコールが入ると断りきれなくなって初対面の男性とでも寝てしまうなど、女性ならではの行動があって面白い。
 すべてのアルコール依存症者に共通するのは、限界になるまで自分を正当化してアルコール依存であることを認めようとせず、最後にはアルコールに逃げてしまうということ。この気持ちはわかる気がする。アルコール依存症は病気ではなく本人の意志の問題だという考え方がいまだにあるようだが、そんなことはない。これは立派な病気で本人の意志だけで治るものではないということが、この作品を読むとよくわかる。
 自分も含めて、常習的にアルコールをたしなむ人間は、多かれ少なかれ誰でもアルコール依存症なのだろう。自戒をこめてそう書いておこう。



THE CLIMB
 
by Anatoli Boukreev and G. Weston DeWalt  
06/06/17 更新

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1996年5月に、ガイドとしてエベレスト登山隊に参加したロシア人登山家のブクレーエフの体験を綴ったノンフィクション作品。登山隊を率いるのは、経験豊富なアメリカ人登山家のスコット。予定時間を大幅に遅れて頂上に立った一行は、下山途中で天候の急変に見舞われ遭難してしまう。一足先にキャンプに戻っていたブクレーエフは、いつまでも戻ってこないメンバーを心配し、猛吹雪の中を単身で救助に向かう。自らの命も危険に晒されながら、ブクレーエフは孤独な闘いに挑む。

 この作品は、ジョン・クラカウアー氏の書いた "Into Thin Air" と同じ、1996年のエベレストでの大惨事をテーマにしたノンフィクション。
 "Into Thin Air" の中では、ブクレーエフ氏はかなり無責任なガイドとして描かれているが、この "The Climb" を読んでみると、クラカウアー氏の取材不足という気がする。いずれにしろ、単身で猛吹雪の中を救助に向かったブクレーエフ氏の行動は、賞賛されこそすれ、非難されるものではないことだけは間違いない。本当に、この人はスーパーマンみたいな人だと思った。
 しかし、これほど屈強なブクレーエフ氏ですら、翌年の1997年に冬山で雪崩に遭い、命を落としてしまう。当たり前だが、どんなに強い人間でも、個人では絶対に自然には勝てないということだ。



BURNED ALIVE
 
by Souad  
06/04/29 更新

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中東ヨルダンにある小さな村に生まれた少女スアドは、毎日の過酷な労働に耐えながら父親からの虐待を受けていた。一人で外出することも、男性と言葉を交わすことも許されないスアドは、結婚して家から出ることだけを夢に見る。結婚をあせるスアドは、隣に住む青年と肉体関係を持ち子供を身ごもってしまうが、スアドの父親を恐れた青年は彼女の前から姿を消してしまう。スアドの妊娠を知った両親は激怒し、「家族の名誉」のためにスアドを殺害しようとする。ガソリンを頭からかけられて火をつけられながらも一命を取り留めたスアドは、人権団体の助けによってヨーロッパに移住する。これまでの悪夢に悩まされながらも、新しい人生を生きていこうとするスアドの姿を描いたノンフィクション。

 大昔の話ならいざ知らず、現代でもこんな理不尽な社会が存在するということに驚く。女性に生まれてきたら家畜以下の扱いで、男性に生まれてきたら暴君のごときふるまいが許されるとはどういうことか。家庭では父親から虐待され、結婚したらしたで夫から虐待され、結局誰からも愛されない女性たちはどうすればいいのか。家族の誰からも愛されないことがどんなに辛いことか、想像するだに恐ろしい。
 こうした過激な例が存在するのはアラブ社会の中でもごく一部なんだろうけど、人種としての根っこの部分は共通するものがあるはず。偏見はいけないとは思いつつ、アラブ人にはやはり恐ろしさを感じる。



DEAD MAN WALKING
 
by Helen Prejean  
05/07/19 更新

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シスターとして死刑囚のカウンセラーを勤めた自身の経験を基に、作者が死刑制度の反対を強く唱えるノンフィクション。

 こういう死刑制度反対を唱えたものは何作か読んだが、この作品も含めて共通するのは、「やはり死刑制度には問題がある」という感想だ。
 ただ、死刑制度と同じくらいに議論すべき重要な問題として、死刑判決に至る過程で驚くほど冤罪が起きているという事実と、それを防止することのできない硬直した司法制度があるはず。冤罪だとわかっていながら死刑を執行するのは誰がどう考えたっておかしいし、人種や貧富の差によって判決が左右されるのもおかしい。死刑制度存続うんぬんの議論も大事だが、まずはこの矛盾を解決すべきだろう。
 それにしても、この作品全体に流れるキリスト教の思想にはちょっとだけ辟易する。とはいえ、作者がシスターだからこのあたりはしかたのないところだろう。



THE PRIVATE DIARY OF AN OJ JUROR
 
by Michael Knox with Mike Walker  
04/07/21 更新

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「世紀の裁判」として全世界の注目を集めたOJシンプソン裁判。その陪審員を勤めた作者が、裁判の舞台裏を赤裸々に綴る。

 これを読めば、人間ってどうしてこうも醜いんだろう、と思えてしまうこと請け合い。
 白人陪審員と黒人陪審員の不和はもちろんのこと、黒人陪審員の間でもイジメや対立が発生して、読んでいて嫌になってくる。こういうのを読むと、世界平和など夢のまた夢に思えてくる。個人同士でもこんなにいがみあうのに、個人の集団である国家同士が仲良くなれるはずがない。世界平和をお題目のように唱える左寄りの人たちは、もっと現実を見つめるべきだろう。
 唯一世界平和を実現する方法があるとすれば、異星人が地球を攻めてくることくらいしか思い浮かばない。宇宙戦争という事態になれば、さすがにイラクがどうの、北朝鮮がどうのといがみあっている暇はないだろう。それにしたって、結局は戦争の上に成り立つ平和に過ぎないわけだが。



APOLLO 13 
by Jim Lovell & Jeffrey Kluger
  
02/11/12 更新

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人類史上初めて月面着陸を果たしたアポロ11号の偉業達成から1年後の1970年4月。月面に向け航行中のアポロ13号は、着陸を目前にして突然酸素タンクの爆発という悲劇に見舞われる。絶望的な状況下で、NASAの制御タワーと交信し、何とか生き残りの道を探る3人のパイロットの運命は?

 事故発生から「奇跡の生還」の瞬間までを克明に描いた、ノンフィクション作品。映画化もされているらしい。
 読んだ感想は、とにかく難しいの一言。全編アポロ号に関するテクニカルターム満載で、さっぱり理解できなかった。読んでいる最中は、あまりの難しさに「こんなの読んでられっか!」と逆ギレしそうになったこともしばしば。おそらく、日本語で読んでも理解できないだろう。メカ大好きな理系人間にはたまらない作品かもしれないが、メカ音痴の自分にとっては苦痛以外の何物でもない。極限下の状況に追い詰められたパイロットたちの壮絶な人間ドラマみたいなものを期待して読んだため、苦痛だけが残ってしまった。



THE DIARY OF ANNE FRANK by Anne Frank  02/09/10 更新

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説明不要の「アンネの日記」。

 自分が読んだのは近年発表された完全版ではなく、従来の短縮版の方。
 しかしこの娘は頭がいい。この年でこれだけの文章が書けるというのはすごいと思う。日記の後半に進むにつれて、どんどんと文章が洗練されていくのがわかる。まさに
"Natural Born Writer" という感じだ。同時に、相当にわがままで自意識過剰な娘だとも感じた。読んでいて、「いや、それは違うだろ」などと突っ込みを入れたこともしばしば。しかし、こういう性格だからこそ、ここまで人の心を揺さぶる日記を書くことができたのだろう。



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