OTHERS (Fiction) 



DEATH IN MIDSUMMER  by Yukio Mishima  16/09/11 更新

 読み易さ 
 面白さ   

表題作の「Death in Midsummer(真夏の死)」を含む13編を収めた短編集。

 どの作品も面白かったが、一番強烈だったのは何といっても「Ptriotism(憂国)」だ。新婚の陸軍将校が、二・二六事件で叛乱軍として蜂起した仲間を討伐しなければならなくなり、悩んだ末に自害する道を選び、妻もそれに従って自害するというストーリーだが、前半の美しくて静かな、それでいて激しい描写から一転し、後半の切腹シーンは、あまりにもリアルで生々しい描写が続き、読んでいて気分が悪くなったくらいに迫力がある。これは1961年に書かれた作品だが、この頃からずでに自身の最期というものを意識していたのだろうか。難しい理屈などは抜きにして、その強烈な描写は一読の価値があると思う。
 「Three Million Yen(百万円煎餅)」については、何度読んでもオチの部分の意味がわからなかったので、Wikipediaで調べてみてようやく、そういうことだったのかと納得した。リアルタイムでその時代に生きている人間でなければ、このオチを即座に理解するのはおそらく無理だろう。



POLITICALLY CORRECT BEDTIME STORIES  by James Finn Garner  14/12/14 更新

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赤ずきんちゃん、シンデレラ姫、はだかの王様など、だれでも知っている有名な童話を「政治的に正しいお話し」として書きなおしたパロディ集。

 風刺が効いたパロディ作品ということらしいが、どこが面白いのかよくわからなかった。どの作品も、大して面白いオチというわけでもなく、だからどうした? と思うばかりでどうもピンとこない。自分はアメリカンジョークの面白さがまったく理解できない人間なのだが、そのあたりが関係しているのかもしれない。
 ただ、デブ、チビ、ハゲなどの差別用語は一切使わず、「政治的に正しい」用語で表現しているのだけれど(たとえば、「チビ」は「vertically challenged」、「貧乏人」は「economically marginalized」など)、これはちょっとだけ笑った。



HANS ANDERSEN'S FAIRY TALES  by Hnas Andersen Translated by Naomi Lewis 14/11/30 更新

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 面白さ   

はだかの王様、人魚姫、みにくいアヒルの子など、アンデルセン童話の代表作12編を収めた童話集。

 アンデルセン童話には、グリム童話のような残酷さはなく、ほのぼのとしたファンタジーを感じさせる作品が多い。それだけに、人魚姫の悲劇っぷりがひときわ目立つ。自分が命を助けた王子に思いを寄せ、自分の声と引き換えに人間の姿になったにもかかわらず、肝心の王子はそんなことをまったく知らず、他の女子と結婚してしまうというストーリーは、子供が読むにはあまりにも救いがない童話だと思う。せめて、人魚姫が死んだ後で、すべての真相を知った王子が悲しむ、という展開にすれば、少しは救われるような気がするのだけれど。



THE LITTLE PRINCE  by Antoine de Saint Exupery Translated by Katherin Woods 14/11/09 更新

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説明不要の「星の王子さま」。

 この歳になってはじめて「星の王子さま」を読んでみた。これだけ有名な子供向けの作品だから、もっとほのぼのとしてわかりやすいお話しなんだろうと思っていたのだが、なんだか難しくてよく理解できなかった。本当に大切なものは目に見えるものではなく、心で感じるものだ、みたいなことを言いたいのだろうと思うが、こんな哲学みたいなメッセージが本当に子供に伝わるのか疑問だ。というか、少なくとも自分のような頭の悪い大人には伝わらないことだけは間違いない。



THE SORROWS OF YOUNG WERTHER  by Johann Wolfgang von Goethe Translated by Michael Hulse 13/04/21 更新

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物語は、主人公のウェルテルが新しい土地にやってくるところから始まる。ある日のこと、舞踏会に誘われて出かけたウェルテルは、若くて美しいシャルロッテに出会い、たちまちのうちに恋に落ちる。シャルロッテにはアルベルトという婚約者がいるにもかかわらず、ウェルテルは毎日のようにシャルロッテの家に通いつめ、ひたすらにシャルロッテを焦がれるようになる。このままではいけないと思い悩んだウェルテルは、シャルロッテに別れを告げて新たな土地で官職に就くが、どうしてもシャルロッテのことを忘れることができず、また元の土地に戻ってしまう。しかし、ウェルテルの苦悩はさらに深くなり、ついには自殺を決意してしまう。

 ゲーテの不朽の名作である「若きウェルテルの悩み」を、英語の翻訳本で読んでみた。まず、これだけ完成度の高い小説が18世紀に存在していたということに驚いた。友人に宛てた書簡という形式をとって物語が進んでいくのだが、全体的な構成がよくできていると思った。
 内容としては、ただひたすらにシャルロッテに恋い焦がれるウェルテルの苦悩が書かれているだけなのだが、同じように胸が苦しくなるような恋愛を経験したことがある男子ならば、思い切り共感しながら読むことができるだろう。そういう意味では面白かったけれど、冷静に考えてみると、このウェルテルというのはかなり迷惑なヤツだよなあとも思う。自分の感情のおもむくままに行動するだけで、周りのことなんてまったく考えていないから、実際にこういう人間が自分の知り合いにいたら厄介だと思う。これは、ゲーテ自身の体験を基にして書いた作品らしいから、ゲーテもかなり迷惑な人間だったのだろう。(もっと詳しい感想はこちら



HOW I BECAME A FAMOUS NOVELIST  by Steve Heley  12/07/01 更新

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主人公のピートは、外国人学生が書いた英文エッセイを加筆・修正するという怪しげな仕事を請け負う貧乏青年。そんなピートは、以前付き合っていた彼女から結婚式の招待を受ける。なんとか彼女を見返してやろうと、ベストセラー作家になることを目指して小説を書き始め、知り合いの編集者を頼って出版したものの、本はまったく売れない。しかし、ある書評家がピ−トの本を酷評したことがきっかけとなり、あれよあれよという間に本が売れていく。調子に乗ったピートは、テレビ番組のインタビューを受け、ある大御所の作家を「詐欺師」だと侮辱してしまう。そして、読者が見守る公開討論会で、その大御所作家と対決することになる。

 基本的にはコメディーで、ベストセラー作家になった自分を夢想してあれこれ想像を膨らませていくところなどは笑える。また、見返してやろうと勢い込んで以前の彼女の結婚式に出席したものの、結局は激しいショックを受けてベロベロに酔ってしまい、思い切り醜態をさらけ出すところも面白かった。
 しかし、この作品で一番面白いのは、ヘミングウェイやフォークナーやフィッツジェラルドといったビッグネームをこきおろしているところだ。ベストセラー作家を目指すなら、こんな高尚ぶった純文学ではなく、読者が求めるストーリーを詰め込んだ大衆小説を書くべきだというピートの戦略はまったくもって正しい。ピートの言葉を借りれば、我々読者が求めているのは「美しい文章ではなく面白いストーリー」なのだから。
 ただ、ラストはピートにとって少し可哀そうな展開になってしまったのが残念だ。どうせなら最後まで「気取った小説なんてサギみたいなもの」という姿勢を貫いてほしかった。結局のところこの作者も、なんだかんだ言って「文学」が好きなんだろう。



THE DEVIL'S TEAR DROP  by Jeffery Deaver  12/06/16 更新

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物語の舞台は1999年12月31日のワシントン。20世紀最後の一日を楽しむ人たちで賑わう地下鉄で、突如として銃の乱射事件が発生する。間もなく、ワシントン市長宛てに2,000万ドルを要求する脅迫状が届く。要求に従わなければ、これから4時間ごとに同じような大量殺人を実行するという内容に、市長は要求された金額を用意する。しかし、その金を受け渡す直前に、事件の黒幕である脅迫状の送り主が事故に遭って死亡してしまう。残されたのは、黒幕の言うがままに大量殺人を繰り返す「ディガー」と、黒幕直筆の脅迫状のみ。事件を担当するFBIの女性指揮官マーガレット・ルーカスと、そのパートナーであるハロルド・ケイジは、元FBI職員で文書鑑定士のパーカー・キンケイドに捜査の協力を依頼する。一枚の脅迫状だけを手がかりに捜査を進めていくパーカーたちは、はたして「ディガー」の暴走を阻止できるのか。

  時間を指定して次々に事件を起こす犯人側と、それを必死に食い止めようとするFBI側との攻防がスリリングに描かれていて、なかなか読ませる。そうしたメインのストーリーが展開する一方で、パーカーとルーカスの恋愛や、パーカーと元妻との親権争いなどのサブストーリーも展開され、こちらのほうでも楽しませる仕掛けになっていて、かなり作り込まれたストーリーになっている。
 しかし、いくらミステリーとはいっても、こんなに大量に人が死ぬのは、読んでいてあまり気分のいいものではない。何の罪もない人たちをこれほど多く死なせる必然性があるのか、大いに疑問だ。そもそも、次の襲撃場所がわかっていながら、それをあえて市民には知らせずに犯人を逮捕しようというFBIの作戦には、読んでいて、さすがにそれはないだろうと思った。このあたりの展開がかなり雑というか強引なので、読んでいても少しばかり興ざめだった。
 ただ、物語の冒頭でパーカーが脅迫状を手がかりに犯人のプロファイリングを進めていくところは面白かった。こういう鑑定をからめたミステリーがあれば、もっと読んでみたい。



THE PHANTOM OF THE OPERA  by Gaston Leroux  11/08/13 更新

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物語の舞台は、19世紀末のパリに建つ壮大なオペラ座。このオペラ座では、謎の怪人が出没するという噂が流れていた。オペラ座の女優として舞台に立つクリスティーヌは、楽屋の壁から聞こえてくる美しい声の持ち主から指導を受けて実力を付けていくが、この声の持ち主こそ、「オペラ座の怪人」エリックだった。そんなクリスティーヌを心配するラウル子爵は、クリスティーヌと駆け落ちの約束をする。しかし、その駆け落ちの当日、舞台に立つクリスティーヌが忽然と姿を消してしまう。驚いたラウルは、謎のペルシャ人とともにオペラ座の地下に降りてクリスティーヌの救出に向かう。しかし、オペラ座の地下には、エリックの仕掛ける恐ろしい罠が待ち受けていた。

 とりあえず、エリックはすごい能力を持った人間だと思う。容姿が醜悪でなかったら、ものすごい人物になっていたんじゃないだろうか。まあ、容姿が醜悪だったからこそ、こういう能力を身に付けられたという見方もできるかもしれないが。 それにしても、いくら容姿が醜悪だという事情があるにせよ、エリックはあまりにも冷酷すぎる。物語のラストでほんの少しだけ人間らしい部分も見せるが、これまで散々ひどいことをやっておきながら、最後に少しだけしおらしくされてもなあ、というのが正直なところだ。
 特に感動するわけでもないし、かといって特に怖いわけでもないしで、あまり語ることもない。ただし、オペラ座の地下に自分だけの帝国を築くという発想は面白い。



DUBLINERS  by James Joyce  11/05/14 更新

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ダブリンで暮らす人たちの日常を描いた15編の連作短編集。

 あまりにも意味不明な作品ばかりで、頭の悪い自分にはさっぱり理解できなかった。普通の人たちの何気ない日常生活の1コマを描いた作品、とでも言えば聞こえがいいかもしれないが、特別なストーリーがあるわけでもないし、オチらしいオチもなく話が突然終わるしで、何が書きたいのかまったくわからない。世間的にはかなり高い評価を得ている短編集らしいが、本当に理解できている人がどれくらいいるのか疑問だ。世の中、そんなに頭のいい人ばかりいるとは思えないのだが。
 ジョイスといえば「ユリシーズ」が最も有名だ。この短編集が面白かったら「ユリシーズ」も読んでみようと思っていたのだが、どうやら自分にはレベルの高すぎる作家らしい。気が向いたら読むかもしれないが、読んだところで間違いなく理解できないだろう。



ROBINSON CRUSOE  by Daniel Defore  11/03/13 更新

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 面白さ   

海に憧れるロビンソン・クルーソーは、父親の制止を振り切って船乗りになるが、船が嵐に遭って難破してしまう。奇跡的に無人島にたどり着いたクルーソーは、努力と工夫を重ねながら麦を育て、家畜を飼い、さまざまな生活用具を作り、長い年月をかけて豊かな生活を築き上げていく。すっかり島の生活になれた頃に、島の近くの本土に住む原住民がときおり島を訪れては、捕虜を処刑して食べてしまうという蛮行を犯していることに気付く。この行為に憤ったクルーソーは、ひとりの捕虜を救出してフライデーと名付ける。フライデーとともに島の生活を送るクルーソーの心の中に、島から脱出したいという気持ちが次第に芽生えてくる。

 子供の頃に読んだような記憶はあるのだが、どんな話だったのかすっかり忘れてしまった。今回改めて読んでみたところ、なかなか面白かった。こういったサバイバル物は自分の大好物だから、ロビンソン・クルーソーが自力で生活を築き上げていくところは読んでいて楽しかった。しかし、スペイン人の船員を本土に残したまま、自分だけ島から脱出するところはどうかと思う。大きな船なんだから、少し寄り道してスペイン人の船員たちも乗せてあげればいいのにと感じるのは、きっと自分だけではないはずだ。
 それから、ロビンンソン・クルーソーが次第にキリスト教に目覚めていく部分の描写も、こういう小説には必要ないと思う。自分が無宗教だからそう感じるのかもしれないが、なんでもかんでも宗教に結び付けて物事を考えるのは少しばかり鬱陶しい。人生のすべての出来事は、運がいいか悪いか、単純にそれだけだと思う。そこに神の意志など存在しない。



THE SHELTERING SKY  by Paul Bowles  11/01/08 更新

 読み易さ 
 面白さ   

結婚10年目のキットとポートは結婚生活に行き詰まりを感じ、友人のタナーを伴って北アフリカへ旅に出る。この旅をきっかけに、ポートは2人の間の壁をなくそうとするが、タナーと一夜を共にしたキットはポートに対して罪悪感を抱いてしまう。キットと二人きりになりたいと願うポートは、ある策略を講じてタナーと別行動を取ることに成功するが、移動の途中で腸チフスにかかってしまう。キットの必死の看病もむなしく、ポートは息を引き取る。ポートの死に絶望したキットは、荒涼たるサハラ砂漠へと踏み込んでいく。

 映画で大ヒットした「シェルタリングスカイ」の原作。この映画は観ていないが、サハラ砂漠というのはたしかに絵になりそうなテーマだと思う。しかし、この原作についてはよくわからなかった。特に、ポートが死んでからのキットの壊れっぷりがあまりにも唐突で、読んでいてかなり戸惑った。なぜここまで壊れなければならないのか、それまでの展開では具体的な説明はほとんどないため、自分のように頭の悪い人間にはまったく理解できない。そもそも、なぜこの夫婦がアフリカを目指す必要があったのかということからしてよくわからない。なんとなく倦怠期に入った夫婦がなんとなくアフリカに出かけたという感じで、作品のテーマに結びつくような必然性がまったくない。
 ということで、正直なところ意味のよくわからない作品ではあるけれど、キットの壊れっぷりがかなり素敵なので、それだけでも読む価値はあると思う。そこから何を感じ取るかは、人それぞれということで。



BONJOUR TRISTESSE  by Francoise Sagan  10/11/21 更新

 読み易さ 
 面白さ   

17歳のセシルは、父親のレイモンと一緒に南仏でバカンスを過ごす。早くに妻を亡くしたレイモンは、いろいろな女性との交際を気軽に楽しむプレイボーイだが、そのバカンスにエルザという若い女性を連れてくる。セシルも、近くの別荘を訪れていた大学生のシリルと知り合って交際を始める。そんなある日のこと、レイモンの亡くなった妻の友人であるアンヌが訪れる。聡明で美しいアンヌに次第に惹かれていくレイモンは、エルザを捨ててアンヌと婚約してしまう。厳格なアンヌはセシルとシリルとの交際を禁止し、セシルに試験勉強を強要する。そんなアンヌをうとましく感じるセシルは、シリルとエルザに芝居をさせ、レイモンとアンヌの仲を裂こうと企む。その企みの先には、悲しい結末が待っていた。

 サガンの名作「悲しみよこんにちは」の英訳版(原典はフランス語)。この作品は高校生の頃に読んだことがある。正確にいうと、半分くらいまで読んだところで、あまりの翻訳調とあまりのつまらなさに投げ出してしまったのだ。しかし、今回改めて読んでみたところ、なかなか面白かった。やはり、年齢を重ねてはじめて理解できる面白さというのはあるということだ。
 しかし、17歳の女子がここまで冷静に物事を考えられるものだろうかという疑問は感じた。この年頃の女子というのは、もっと幼稚で即物的な考え方をするものではないだろうか。などと思っていたら、この作品はなんとサガンが18歳のときに書いたものらしい。この事実を知って、この作品に対する認識を改めた。18歳でここまでの小説を書けるというのはすごい才能だと思う。「18歳の女子が書いた作品」という事実がなければそれほど大した内容ではないと思うが、「18歳の女子がここまで書けるのか」ということに驚かされた。



PETER PAN  by J. M. Barrie  10/07/10 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ネバーランドに住むピーター・パンは、決して歳を取らない不思議な少年だった。ある日のこと、ウェンディ、ジョン、マイケルの3人姉弟のもとにピーター・パンが訪れる。ウェンディたちは、ピーター・パンとともに空を飛んでネバーランドに向かう。ネバーランドでは、ピーター・パンをリーダーとする少年たちのグループと、フック船長が率いる海賊たちが争っていた。ウェンディは、そんな少年たちの母親役となってネバーランドでの生活を楽しむが、次第に家が恋しくなってくる。そんなとき、フック船長が率いる海賊たちが襲いかかってくる。

  この歳になってはじめてピーター・パンを読んでみたが、このピーター・パンという少年は、わがままでナルシストで残酷でどうしようもないヤツだということがわかった。もちろん優しい一面もあるのだが、プラス面とマイナス面を比較すると圧倒的にマイナス面のほうが多い。妖精のティンカーベルも、意地悪で残酷なキャラクターだ。この二人に比べると、海賊のフック船長がまともな人間に思えるくらいだ。
 正直なところ、あまりのつまらなさに読んでいる途中で嫌になったが、ラストだけは面白かった。大人になったウェンディと、少年のままのピーター・パンが再会するラストは、少しだけ残酷な感じでよかった。しかし、永遠に歳を取らないピーター・パンにとっては、周りの人間がどう変わろうとも関係ないわけだから、結局は本人が一番幸せなんだろうと思った。



GRIMM'S FAIRY TALES  by Jakob and Wilhelm Grimm  10/06/19 更新

 読み易さ 
 面白さ   

52編のグリム童話を収めた作品集。

 グリム童話は子供の頃にいくつか読んでいるはずだが、改めて読んでみると、ほとんど粗筋を覚えていないことに気付いた。たとえば、白雪姫やシンデレラ姫の細かい設定などはうろ覚えで、これほど有名なお話なのに正確なところはほとんど覚えていないということに我ながら驚いた。
 それにしても、わけがわからないものが多い。よくできているものもいくつかあるが、ほとんどは意味不明なものやナンセンスなものばかりだ。また、子供が読む童話としてはどうなんだろうと思うほど、残酷なシーンが多い。正直なところ、ストーリーの組み立て方としては日本の昔話のほうがよくできていると思う。



ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST  by Ken Kesey  10/02/21 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

物語の舞台は、1960年代のアメリカのとある精神病院。この病院では、婦長のラチェッドが絶対的な権力を握り、患者たちは婦長の顔色をうかがいながら日々を過ごしていた。そんなある日のこと、刑務所の強制労働から逃れるために精神病を装ったマクマーフィーという男が入院してくる。管理されることを嫌うマクマーフィーは、ことあるごとに婦長と対立し、病院内の待遇改善を要求していく。最初は及び腰だった患者たちも次第にマクマーフィーに感化され、自分の意見を主張するようになる。病院内のヒーローとして患者たちから慕われるマクマーフィーだったが、深夜に女友達を連れ込んで大騒ぎをしたことが原因で、悲劇的な結末を迎えることになる。

 アカデミー賞を受賞した「カッコーの巣の上で」の原作。
 なんだかいろんなことを考えさせられる作品だが、最初から最後までとにかく悲しかった。ラスト以外は悲しい要素などほとんどないのに、傍若無人にふるまうマクマーフィーがなぜか悲しくてしかたなかった。自分勝手に行動しているように見えるが、患者たちを勇気付けるためにわざと自分を犠牲にしているように感じたからかもしれない。
 ラストは、かなり衝撃的で強く心に残る。ラストでこれほど強い印象を残すのは、それまでのマクマーフィーが非常に魅力的な人物として描かれているからだろう。普通に考えれば、病院内で好き勝手にふるまうマクマーフィーはどうしようもないヤツだし、最後の悲劇を招いたのも結局は自業自得だ。それでも、男としてカッコいいと思えてしまう魅力がある。ただ、客観的に考えた場合、こうした人間が自分の周囲にいたらやっぱり迷惑だろうと思う。フィクションの中でだけ、ヒーローとして収まっていてくれればいい。



LES ENFANTS TERRIBLES  by Jean Cocteau  10/01/23 更新

 読み易さ 
 面白さ   

14歳の少年ポールは、仲間たちと雪合戦で遊んでいるときに、憧れのクラスメートのダルジュロス少年の雪玉を胸に受けて気絶してしまう。2歳年上の姉エリザベスの看病を受けるポールのもとに、校長先生にコショー瓶を投げつけたことが理由でダルジュロスが学校を退学になったという知らせが届く。この知らせにショックを受けたポールは寝込んでしまい、友人のジェラルドと姉のエリザベスだけを相手に、狭い世界に閉じこもっていく。やがてマネキンとして仕事を始めたエリザベスは、同じマネキンとして働くアガサと仲良くなってポールに紹介するが、憧れのダルジュロスに生き写しのアガサを見たポールは動揺する。ポール、エリザベス、ジェラルド、アガサの4人は同居生活を始めるが、ポールの心には常にダルジュロスの影が落ちていた。

 コクトー氏の代表作らしいが、何が面白いのかさっぱりわからなかった。そもそも、作品の設定が非現実的であまりにも都合がよすぎる。両親を亡くした姉弟の面倒を、ポールの友人であるジェラルドの伯父と赤の他人の医者が面倒を見るというのもあり得ないし、エリザベスが結婚した金持ちのマイケルがいきなり事故で死ぬというのもあまりにも都合がよすぎる。設定が重要な小説ではないことはわかるが、最低限の常識くらいは守ってもらわないと、読んでいる方としてはしらける。
 肝心のストーリーにしても、甘えたガキどもが自分勝手なことばかりしているだけだから、悲劇的なラストにもまったく感情移入することができない。というか、この展開でこのラストというのも、あまりにも唐突だ。どうでもいいが、自分たちの世界に閉じこもってばかりいないで、外に出て勉強するなり働くなりしなさい。一人前に悩みを抱えるのが許されるのはそれからだ。



THE DOOR INTO SUMMER  by Robert A. Heinline  09/12/31 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は1970年のロサンゼルス。天才発明家のダンは、親友のマイルズと婚約者のベルとともに、家事ロボットを製造販売する小さな会社を共同経営していた。しかし、信頼していたマイルズとベルに裏切られ、会社の経営権と発明の特許権を騙し取られてしまう。すべてに絶望したダンは、冷凍睡眠により、30年後の世界へとタイムトリップする。30年後に目覚めたダンは、自分が発明した家事ロボットがいたるところで活躍していることを知って驚くが、発明の原案を調べると、自分の発明よりもさらに改良されたものであることに気付く。過去に、自分とまったく同じ発想をしながら、自分よりもさらに優れた発明家がいたのだろうか。その疑問を解明するべく、ダンの驚くべき冒険が始まる。

  タイムトラベル物のSF作品としては、ものすごく有名な作品らしい。読者からの評価もきわめて高く、SFというジャンルを超えて支持されているようだ。おそらく、痛快でロマンチックなラストが人気の原因だろうと思う。
 しかし、自分としてはそれほど面白いとは思わなかった。もちろんそこそこは面白いのだが、タイムトラベル作品特有のわかりにくさがあって、いまひとつストーリーに入り込むことができなかった。おそらく自分の頭が悪いからだと思うが、全体的に話の展開が複雑で頭の中を整理しながら読まなければならないため、そのあたりがストレスになった。文章も口語的でしゃれた表現が多く、あまり読みやすいとは言えない。ただし、これだけ評価の高い作品だから、普通の人が普通に読めば普通に面白いと感じることができるのだろうと思う。



DON'T CRY NOW  by Joy Fielding  09/11/28 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

高校で英語を教えるボニーは、優しい夫のロッドと可愛い娘のアマンダに囲まれて幸せな生活を送っていた。そんなある日のこと、ロッドの前妻のジョアンから電話があり、ボニーとアマンダに危険が迫っていると告げられる。詳しい話を聞こうとジョアンに会いに出かけたボニーは、銃で無残に撃ち抜かれたジョアンの死体を発見する。残された16歳のサムと14歳のローレンを引き取ったボニーは、自分に心を開いてくれない二人に振り回されながらも、事件の手がかりをつかもうとジョアンの知り合いたちを訪ねて話を聞く。そうして話を聞くうちに、自分の周囲の人間がすべて怪しく感じられるようになり、ボニーは次第に疑心暗鬼に陥っていく。

  ミステリー作品ではあるが、家族の絆という大きなテーマが全体を通じて描かれていて、単純なミステリー作品というわけではない。特に作品の中盤は、血の繋がらない二人の子供に苦労しながら、自分の両親に対して複雑な思いを抱くボニーの葛藤が描かれていて、はたしてこれはミステリー作品なんだろうかと感じてしまうほど、家族というテーマが綿密に描かれている。
 しかし、肝心のミステリーについても充分に満足できるレベルに仕上がっていて、結局自分は最後まで犯人がわからなかった。最初のうちはあまり面白いとは感じなかったが、読み進めるにつれてどんどんと引き込まれ、最後はノンストップで読んでしまった。ただ、ラストがちょっと淡白すぎる気がしないでもない。ここまで盛り上げたのだから、後日談をエピローグなどの形でもう少し丁寧に書いてほしかった。



THE WAR OF THE WORLDS  by H. G. Wells  09/11/21 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ロンドン郊外の静かな街に、火星から飛来した宇宙船が着陸する。好奇心に駆られた野次馬たちが周囲を取り囲むと、宇宙船からレーザー光線が発射され、あたりはたちまち火の海と化す。イギリス軍が出動して攻撃を開始するが、まったく歯が立たない。やがて、火星から次々に宇宙船が飛来し、レーザー光線と黒い毒ガスを撒き散らしながらロンドンへと侵攻していく。パニックに陥った群集は先を争って逃げ出すが、どこに逃げても恐るべき火星人の攻撃が待ち受けていた。

  1898年に発表されたSFの古典とも言うべき作品で、アメリカでラジオドラマ化されたときにはそのあまりのリアルさに一部でパニックが起きたエピソードがよく知られている。
 この作品は、SF小説というよりもパニック小説というべきだろう。物語の最初から最後まで、火星人の襲撃に右往左往する人間たちの様子が描かれているだけで、特に面白い展開があるわけでもない。ただ、最初は事の重大性を認識できていなかった人たちが、一気にパニックに陥っていく様子は面白かった。実際に自分が恐い目に遭わないと、どんな重大なことでも他人事のように感じてしまうのが、人間の愚かさでもあり愛すべきところでもあるのだろう。



TRESPASS
 
by Phillip Finch 
09/10/03 更新

 読み易さ 
 面白さ   

コンピュータ会社に勤務するレイ、トラビス、ホレンベックの3人は、仕事だけでなくプライベートでも付き合いのある仲だった。そんな3人に対して、社長のポーグから冬山の登山ツアーに一緒に参加するように誘われる。近々新しい部署ができるという噂を聞いていた3人は、今回の登山で社長が満足するような結果を残した者が新しい部署の責任者に抜擢されるのではないかと考える。これといって取り得のないレイ、有能で自信家のトラビス、デブで愚図なホレンベックの3人は、ガイド2人を含む総勢9名の登山ツアーにそれぞれの思惑を抱いて参加するが、途中でポーグがケガを負ってしまい、ガイドの1人と一緒に山を降りてしまう。その直後、残りのガイドも足を滑らせて崖から転落死してしまい、山の知識を持たない6人が雪山に取り残される。この窮地を脱しようとリーダーシップを握ったのは自信家のトラビスだったが、彼の強引な計画により、一行はさらなる窮地に陥ることになる。

 雪山でのサバイバル小説ということで、そうしたジャンルが大好物の自分としては大いに期待して読んだのだが、純粋なサバイバル小説という感じではなかった。もちろん、雪山での過酷な状況も描かれてはいるのだが、レイ、トラビス、ホレンベックの3人の心理描写に大きな比重が置かれているため、サバイバルという部分にはあまり重点が置かれていない。
 その心理描写にしてもあまり丹念に描かれているという印象ではなく、全体的にどうも中途半端な印象しか残らない。ただ、物語の前半は典型的なダメ人間として描かれていたデブのホレンベックが、後半になると見違えるようにたくましくなっていくところだけは面白かった。通常の状況であれば嘘っぽく感じるのだろうが、雪山での遭難という極限状態では、こうした劇的な変身もありうると思わせるだけの説得力はある。



SHOELESS JOE
 
by W. P. Kinsella 
09/08/25 更新

 読み易さ 
 面白さ   

アイオワ州の農場を経営するレイ・キンセラは、ある日 "If you build it, he will come." という不思議な声を聞く。その声に従って農場の一部を野球場に作り変えると、八百長事件で球界を永久追放された「シューレス・ジョー」とそのチームメイトたちが集まって試合を始める。すでにこの世にはいないはずの選手たちがプレーする様子を信じられない思いで眺めるレイの耳元で、"Ease his pain." という不思議な声がまた聞こえる。これは、執筆活動を突然やめて隠遁生活を送っている作家の J. D. サリンジャーのことだと直感したレイは、はるばるニューハンプシャーまで車を飛ばしてサリンジャーに会いに行く。見知らぬ他人からの突然の訪問に驚くサリンジャーに、レイはこれまでの不思議な出来事を話して聞かせるが、サリンジャーはまったく信用しない。しかし、レイに連れて行かれた野球場であの不思議な声を聞いたサリンジャーは、これまでのレイの話を信用するようになる。そして二人は、メジャーリーグでたった1イニングだけ試合に出たことのある「ムーンライト・グラハム」を訪ねて旅をする。

 映画「フィールド・オブドリームス」の原作らしい。この映画は観ていないが、たしかに映像化にぴったりの小説だと思う。トウモロコシ畑に作った夜の野球場に往年の名選手たちが集まって野球を始める映像なんて、考えただけでもぐっとくる。それにしても、サリンジャーを実名で登場させるとは、なんとも思い切ったことをするものだ。サリンジャー氏に了解は取っているのだろうか。
 おそらく、虚実取り混ぜたあいまいな感じがこの作品の魅力のひとつなのだろう。登場するメジャーリーガーはすべて実在した選手たちで、サリンジャー氏にしても実名で登場していて、そうしたところに「キンセラ」という自分の名前を付けた青年を絡ませているということは、作者自身の夢や妄想を思い切りこの青年に託したということだろう。着想は面白いし、ストーリーもそれなりにまとまっているとは思うが、現実的な問題は結局のところなにも解決していないような気がする。なんてことを突っ込むのは野暮ってものか。



THE BEST SHORT STORIES OF THE MODERN AGE
 
selected by Douglas Angus 
09/07/25 更新

 読み易さ  (作品によって異なる)
 面白さ   

フォークナー、ジョイス、ヘミングウェイ、モーパッサン、チェーホフなど、近代文学を代表する作家たちによる20の短編を収めた作品集。

 作品は読んだことがなくても、誰でも名前くらいは知っているビッグネームの作家たちによる短編集なので、お試し気分で読むのにちょうどいい。ただし、ちょっとだけ昔の純文学ということもあり、小難しくてよく意味のわからない作品も多い。
 一番面白かったのは、この本の一番最後に収録されている Lawrence Sargent Hall の「The Ledge」という作品。クリスマスの朝にボートに乗って狩りに出かけた3人が、狩りの間にボートが流されて小島の岩棚に取り残されてしまうという内容で、なんとも言えない余韻を残す作品。Shirley Jackson の「The Lottery」も面白かった。最初は村人総出の楽しいくじ引きイベントかと思って読んでいると、最後にはとんでもない結末が待っている。フォークナーの「A Rose for Emily」も、ちょっと怖くて悲しくて不思議な感じのする作品だ。
 この短編集で興味を持った作家も何人かいるので、そうした作家の作品についてはこれから読んでみることにしよう。



PIG
 
by Andrew Cowan  
08/09/14 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の主人公は、イギリスの小さな街に住む15歳のダニー少年。隣に住む祖母が亡くなったことにより、脚の悪い祖父が老人ホームに入所したため、祖父母の家は空家になってしまう。祖母が飼っていた豚の世話を引き受けたダニーは、パキスタン人のガールフレンドであるスリンダとともに、空家で二人だけの世界を築き上げる。

 なんだかよくわからないお話だ。全体的に暗くてジメジメしたストーリーに加えてブタまで出てくるから、さらに臭いまでもれなくついてくる感じだ。このあたりの陰鬱な雰囲気は非常によく描けていると思うが、それでは面白かったかと考えると、特に感じたものはないことに気付く。
 そもそも、15歳の少年の視点で語られているにも関わらず、全体の雰囲気が枯れすぎている。この年頃の男子というのは、もっと単純で下品で粗野で、しかし根拠のない希望に満ち溢れた生き物のはずだ。少なくとも、ダニー少年のように枯れた感じではないと思う。この作品を読んでいると、ダニーが15歳の元気な少年ではなく、45歳の疲れたオヤジに思えてくる。



THE HOUSE OF DOCTOR DEE
 
by Peter Ackroyd  
08/08/30 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公のマシューは、父親の遺言によってロンドン郊外に建つ古い屋敷を相続する。16世紀に建築されたこの屋敷に移り住んだマシューは、内部の雰囲気に異様なものを感じる。やがて、父親の筆跡による文書を屋敷内に発見したマシューは、父親が生前にオカルトを研究していたことを知る。さらに、16世紀の有名な錬金術師であるジョン・ディー博士がこの屋敷の所有者であったことを知ったマシューは、自ら怪奇現象を体験することになる。

 読んでいてあくびが止まらないほどつまらなかった。ホラー小説のつもりで読み始めたことろ、実際にはホラーの要素などほとんどなく、どうでもいいようなことをダラダラと書いてあるだけなので、読んでいて苦痛だった。
 少しだけ調べてみたところ、このジョン・ディー博士というのは実在の人物だったらしい。錬金術師であり、占星術師であり、さらには数学者でもあったディー博士は、その業界ではかなりの有名人だったようだ。ディー博士に興味がある人ならば楽しく読むことができるのかもしれないが、そうでない人にとってはさっぱりわけがわからない。眠れない夜の睡眠薬代わりとして読む場合に限り激しくお勧めの一冊。



I, ROBOT
 
by Isaac Asimov  
08/08/02 更新

 読み易さ 
 面白さ   

近未来の地球では、高度なメカニズムを備えたロボットが活躍していた。「ロボット三原則」と呼ばれる行動原理によって、ロボットたちの行動は規制されていた。その三原則とは、「第一条: 人間に危害を加えないこと、また人間の生命の危機を看過しないこと。第二条: 第一条に反しない限り、人間の命令に服従すること。第三条: 第一条と第二条に反しない場合に限り、自己を守ることを優先すること」というもの。しかし、この原則に従わずに奇妙な行動をとるロボットたちが出現し、そのたびにロボット開発に関わるエンジニアたちがその原因解明に乗り出す。

 この作品は連作短編集という形式をとっているが、登場人物は一貫していて、各短編ごとに時代が進み、それにつれてロボットもより精巧なものになっていくという内容。この作品の肝は「ロボット三原則」で、この3つの原則に板ばさみになったロボットのジレンマとでもいうべき状況が、各短編のテーマになっている。
 純粋なSF小説というよりも、むしろ一種のロジックパズルのような内容で、ちょっと毛色の変わった作品だと思う。自分はこういう理論的なものは苦手なので、読後感もイマイチすっきりしないのだが、この三原則を使ったアイデアは面白いと思う。ちょっとした頭の体操といった感じで読んでみるのも面白いかもしれない。



MARY POPPINS
 
by P. L. Travers  
08/03/22 更新

 読み易さ 
 面白さ   

バンクス家にメアリー・ポピンズという家政婦がやってくるところから物語は始まる。メアリー・ポピンズは、こうもり傘で空を飛んだり動物たちと会話をしたりと、不思議な能力の持ち主。そんなメアリー・ポピンズに興味津々のジェーンとマイケル姉弟は、彼女の後をついてさまざまな不思議な体験をする。

 なにが面白いのかさっぱりわからない。メアリー・ポピンズが巻き起こすさまざまな不思議な出来事がオムニバス形式で書かれるだけで、特にこれといったストーリーはない。心あたたまるお話というわけでもないし、感動するお話でもない。大した山場もなく、淡々とあるいはダラダラとお話が進んでいくのみ。主人公のメアリー・ポピンズもいつも不機嫌なだけで、そのキャラクターにまったく魅力を感じない。
 なぜこういうつまらない作品が子供たちに受けるのか、正直なところよくわからない。子供の頃の純粋な気持ちを失っていないと断言できる素敵なあなたに限りお勧め。



THE WIZARD OF OZ
 
by Frank Baum  
07/12/08 更新

 読み易さ 
 面白さ   

カンザス州に住む少女のドロシーは、飼い犬のトトと一緒に家ごと竜巻でオズの国まで飛ばされてしまう。困ったドロシーは、カンザスに帰してもらおうと、オズの魔法使いに会いに行く。その途中で、カカシとブリキの木こりとライオンに出会う。カカシは脳味噌を、ブリキの木こりは心を、ライオンは勇気を、それぞれ欲しがっていた。自分たちの願いをかなえてもらおうと、ドロシーたちは力を合わせて、魔法使いの住むエメラルド・シティを目指す。

 なるほど、こんなお話だったのか。子供の頃に読んだはずだが、詳しいストーリーはまったく覚えていなかった。それにしても、オズの魔法使いが偽者の魔法使いだったとはちょっと意外。こういうちょっとしたヒネリが子供に受ける理由なのだろうか。
 ストーリーをまったく覚えていないということは、子供の頃に読んだときは大して面白くないと感じたということだろう。こういう子供だましみたいな展開は、子供の頃から好きではなかったのだ。しかし、今回改めて読んでみたところ、意外に面白かった。大人になって逆に素直な心になれたということだろうか。自分で書いていながらなんとも嘘っぽいが、とりあえずそういうことにしておこう。



FIRST LOVE
 
by Ivan Turgenev  
07/07/28 更新

 読み易さ 
 面白さ   

16歳の少年ウラジミールは、隣の別荘に越してきた没落貴族のジナイーダに一目で心を奪われる。奔放なジナイーダはいつも大勢の男性に取り囲まれ、少年もその男性たちとともにジナイーダの取り巻きとなる。しかし、21歳のジナイーダは年下の少年を恋愛の対象として見ることはなく、少年は鬱屈した気持ちのままさらにジナイーダに惹かれていく。そんなある日のこと、ジナイーダの様子がいつもと違うことに気付いた少年は、ジナイーダが誰かに恋しているのではないかと考える。どうしても相手が誰かを確かめたくなった少年は、深夜の張り込みを決心する。そこで少年が目にしたのは、思いがけない人物だった。

 ロシアの文豪ツルゲーネフの代表作「初恋」を、英語の翻訳本で読んでみた。もはや古典と呼ぶべき作品だが、意外なほどわかりやすくて面白かった。何と言っても、この少年の純真さがいい。思春期の少年というのはバカがつくくらいに純粋で、この人のためなら死ねる、なんて本気で思ったりするものだ。そういった純粋さがきっちりと描かれていて、自分みたいな世代の男子にとってはかなりのツボなんじゃないだろうか。
 かなわぬ恋を経験した少年はやがて青年へと成長していく、といったラストもいい。成長するということは、たくさん辛い思いをしてその分だけ優しくなっていくということなのだろう。さすがに名作、機会があればぜひご一読を。



THE DA VINCI CODE
 
by Dan Brown  
07/02/03 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ハーバード大学の記号学の教授であるロバート・ランドンは、フランス滞在中にフランス警察からの呼び出しを受ける。ルーブル美術館館長のソニエールが殺害され、ソニエールの残したダイイング・メッセージにロバートの名前があったために容疑者として疑われるロバート。ソニエールの孫娘でフランス警察の暗号解読官であるソフィーは、このダイング・メッセージは自分にあてられたメッセージだと確信し、ロバートを警察の手から逃がすことに成功する。ともに警察からの指名手配を受けながら、2人はソニエールの残したメッセージの解読に挑む。そのメッセージには、キリスト誕生の驚くべき秘密が隠されていた。

 なるほど、ミステリー作品としては上質な作品だと思う。1つの暗号を解読するとまた新たな暗号が現れ、その間にも警察や敵対する組織に追われたりと、終始テンポの速い展開で読んでいて飽きることがない。ベストセラーになるのも理解できる。
 しかし、このキリスト教の秘密というテーマは、日本人の自分としては「だからどうしたの?」と感じてしまう。そもそも宗教なんて、かなり怪しい伝説が出発点になっているわけだから、それが今さら覆されたところで結局は同じこと。「鰯の頭も信心から」の言葉通り、宗教は自分が何を信じるかが大事であって、その信憑性などは本質的な問題じゃないわけだから。それはともかく、死の間際にこんなにも複雑で巧妙なダイイング・メッセージを残せるソニエールは、あまりにもありえなさすぎてすごいと思った。



THE FALL OF FREDDIE THE LEAF
 
by Leo F. Buscablia  
06/07/16 更新

 読み易さ 
 面白さ   

葉っぱのフレディの視点を通して、命とは何か、生きることの意味とは何かを語りかけるストーリー。

 「葉っぱのフレディ」のタイトルで、何年か前に大きな話題を呼んだ作品。
 これを読んで感動した人が大勢いるらしいが、どこをどう読めば感動できるのかさっぱりわからなかった。葉っぱなんだから、春に芽吹いて秋になれば散るのは当たり前。人間だって、歳を取れば死ぬのは当たり前。「だからどうしたの?」というのが素直な感想で、それ以上のことは何も感じなかった。決して皮肉ではなく、この作品で素直に感動できる人がうらやましいと思った。 



RAIN MAN
 
novelized by Leonore Fleischer  
05/10/18 更新

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車のディーラーである主人公のチャーリーは、資金繰りに失敗し、破産寸前の状態。そんなチャーリーの元に、父親の訃報が届く。300万ドルもの遺産を目当てに帰郷するチャーリーだが、その莫大な遺産はすべて自閉症の兄であるレイモンドに渡ることを知り愕然とする。それまで自分に兄がいることすら知らなかったチャーリーだが、遺産を自分のものにしようとレイモンドを病院から連れ出し、二人の珍道中が始まる。レイモンドの奇行に振り回されながらも、チャーリーの心には幼い頃の記憶が甦り、次第にレイモンドへの愛情が芽生えていく。

 トム・クルーズとダスティン・ホフマンのコンビでヒットした映画「レインマン」のノベライズ版。
 自分はこの映画は観ていなが、きっとスクリーンで観たら笑えるんだろうなと思わせる箇所が随所にあった。逆に言えば、文字で読んだらせっかくのギャグが笑えなかったということだ。こういったノベライズ版の楽しみ方としては、まず最初に映画を観て、それから映画のシーンを思い出しながらノベライズ版を読む、というのが正しいと思う。



GONE WITH THE WIND
 
by Margaret Mitchell  
05/09/25 更新

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舞台は南北戦争が目前に迫った1861年のアメリカジョージア州。16歳のスカーレットは、ずっと思いを寄せてきたアシュレーが従姉のメラニーと結婚したことにショックを受ける。そんなスカーレットの目の前に現れたのは、なにかと悪い噂の多いバトラー。やがて南北戦争が勃発し、様々な苦難に遭いながらも、生来のたくましさで乗り越えていくスカーレット。しかし、そんな彼女の心の中には、いつもアシュレーへの思いが渦巻いていた。

 説明不要の「風と共に去りぬ」。
 世界的名作であるはずなのに、まったく面白くなかった。登場人物の誰一人として好きになることができなかったのがその原因。自分勝手なスカーレット、皮肉屋のバトラー、盲目的博愛主義のメラニー、使えない哲学青年のアシュレー。読んでいて誰も好きになれないし、だから感情移入もできない。特にスカーレットの能天気ぶりには辟易した。ここまで自分勝手で学習しない人間も珍しい。こうも学習しない女性の物語を延々と読まされるのは苦痛以外の何物でもない。



DADDY-LONG-LEGS
 
by Jean Webster  
04/02/04 更新

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 面白さ   

説明不要の「足長おじさん」。

 自分はなぜかこういう海外の名作を、子供の頃にまったくと言っていいほど読んでいない。ということで、新鮮な気分で読んでみた。
 なるほど、まあ普通に面白い。しかし、この足長おじさんの戦略はどうなんだろう。コイツ、いやらしくないか? 自分は一切正体を明かさずに、ジュディからの手紙に自分のことが書いてあるのを読んでは、にやけていたわけだし、 ジュディの希望なんて聞かずに、あれしちゃダメ、これしちゃダメなんて命令していたわけだ。これでは、金にものを言わせて若い女子を手ごめにする脂ぎったオヤジと同じだ。こういういやらしいお話は、迷わず有害図書に指定してもらいたい。



NAPOLEON CRAZY
 
by Takashi Atoda  
03/09/15 更新

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直木賞作家阿刀田高の、短編ありショートショートありの作品集。

 自分は阿刀田氏の作品は結構好きでそれなりに読んでいるが、英語で読むとどんな感じなんだろうと思って本作を読んでみた。なるほど、こんな感じか。英文を書く勉強として、自分も阿刀田氏の作品をいくつか英文に訳してみたことがあるが、ネイティブの訳はやっぱり違うような気がする。自分もいずれはこういう英文を書くことができるくらいに成長したいものだと思った。



FRANKENSTEIN
 
by Mary Shelley  
03/09/11 更新

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大学で解剖学を学ぶビクター・フランケンシュタインは、生命の宿っていない物質に命を吹き込む方法を発見する。それを実行に移して人造人間を作るが、完成したのは二目と見られないほどの醜悪な容姿を持つ怪物だった。あまりの醜さにショックを受けたビクターは、その怪物を見捨ててしまう。怪物はその容姿のため、どこへ行っても忌み嫌われ、次第に人間に対して怒りを募らせていき、ついにはビクターの弟を殺してしまう。そして、自分を作っておきながら見捨てたビクターに対して復讐を誓う。

 そうなのか、「フランケンシュタイン」というのはあの怪物の名前ではなく、怪物を生み出した人間の名前だったのか。この作品を読むまで、ずっと「怪物」イコール「フランケンシュタイン」だと思い込んでいたので、思いがけず勉強になった。
 それはそうと、いい意味でも悪い意味でも「古典」だというのが素直な感想だ。主人公がいきなり人造人間を作るところの描写などは、リアリティがまったくない。しかし、人間が人間を作ることの是非を問うテーマには、嫌でもクローン人間の倫理的な是非を考えさせられてしまう。いまとなっては決して刺激的なストーリー展開ではないが、何がしかの真理がある作品だと思う。



FOLLOW YOUR HEART
 
by Susanna Tamaro  
03/09/06 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公は一人孤独に過ごす老女。自分の死期が近いことを悟る老女は、それまでの人生を思い返し、孫娘への手紙に書き記す。不遇な結婚生活の中で見つけた真実の愛、娘の不幸な事故死、孫娘との衝突。悲しみと後悔と、そして優しさに満ちた人生が淡々と綴られる。

 惜しい。書き方によってはボロボロに泣ける作品になるはずなのに、どうでもいいことをくどくどと書いてしまっているので、ストーリーに入り込めない。作者にとってはどうでもいいことではないのだろうが、自分にとってはどうでもいいと感じてしまう。泣ける作品が優れた作品だとはもちろん思っていないが、泣かせることができるテーマなのにそれができていないというのが、どうにも惜しいと思えてしまう。
 しかし、ラストの「天使がおりてきて一つだけ願いをかなえてくれるとしたら、私は小さな虫になりたい。あなたに気づかれずにあなたを見守っていられる小さな虫になりたい」という文章には、ちょっとだけグッときた。この文章に免じて、面白さの評価はギリギリ にしておこう。



THE ENGLISH PATIENT
 
by Michael Ondaatje  
03/09/01 更新

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物語の舞台は第二次世界大戦末期のイタリアの病院。砂漠に墜落した飛行機から瀕死の重傷を負いながら救出された英国人兵士。その兵士を看病する若い看護婦ハナ。ハナの父親の友人である泥棒のカラバッジョ。地雷処理兵のインド人キップ。戦火によって荒らされ、見捨てられた病院で出会った4人は、荒涼たる風景にそれぞれの思いを投影させる。

 映画化された作品ということで期待して読んだが、何が言いたいのかさっぱりわからなかった。淡々とした風景描写に突然挿入されるエピソードは、とにかく読みづらい。ストーリーがどの方向に流れて行くのか、今ストーリーはどこにあるのか、読んでいてまったくと言っていいほど理解できない。そもそもストーリー自体が存在しない。
 自分の読解力の弱さを棚に上げて言うのもなんだが、この作品は雰囲気だけで、読んだ後には何も残らない。こういう雰囲気が好きで、卓越した読解力のある人にとってはたまらない作品なのかもしれないが、自分はこういうスカした作品は大嫌いだ。途中からは思い切り斜め読みだった。



SLEEPING WITH THE ENEMY
 
by Nancy Price  
03/06/04 更新

 読み易さ 
 面白さ   

夫であるマーチンの暴力に怯える生活を送る主人公サラ。ある日マーチンと海へセイリングに出かけたサラは、波にさらわれた「ふり」をしてマーチンから逃れることに成功する。名前を変えて遠くの街での生活を始めるサラだが、サラの死を信じようとしないマーチンは執拗にサラの行方を探し始める。やがて、サラが水死を装って自分の元から姿を消したことを知り、マーチンは激怒する。サラを殺害すべく執拗に追跡するマーチン。サラはマーチンの魔の手から逃れることができるのか?

 逃げる妻を夫が追うというストーリーを読んで、以前に読んだキングの "ROSE MADDER" が真っ先に頭に浮かんだ。筋立てがシンプルなためにどちらの作品もストーリー展開は酷似しているが、これは仕方のないところかもしれない。こういうストーリーはシンプルなだけにかえって書くのが難しいと思うが、この作品はキッチリと読ませる。サスペンス仕立てになってはいるものの、各人物の書き込みが非常に丁寧なため、人間ドラマとして読むこともできる。



THE GRADUATE 
by Charles Webb
  
02/05/07 更新

 読み易さ 
 面白さ   

一流大学を首席で卒業した主人公のベンジャミン。しかし、大学生活に失望したベンは就職も進学もせず、怠惰な生活を送る。そんなある日、両親の友人であるロビンソン夫人と関係を持ってしまうベン。夫人の娘であるエレインに思いを寄せるベンだったが、夫人とのことがエレインにばれてしまい、エレインはベンの元を去ってしまう。エレインと結婚すると決意したベンは、必死にエレインを追う。

 言わずと知れた「卒業」。
 自分はこの映画を観たことはないが、いろんなバラエティ番組でパロディになっている有名なラストシーンだけはもちろん知っていたので、きっと一大感動巨編なんだろうと勝手に思い込んでいた。ところが実際に読んでみたら、感動どころか頭にくる。とにかくこの主人公のベンジャミンが最低。これでは、ただの甘ったれたクソガキだ。周囲の人間を傷つけても一切お構いなしに自分勝手に行動するくせに、自分で自分の食い扶持すら稼げないガキに、他人様の大事な一人娘を奪う資格なんてあるはずがない。



FLY AWAY HOME by Patricia Hermes  01/07/03更新

 読み易さ 
 面白さ   

母親の死により、9年間離れていた父親と一緒に暮らすことになった主人公の少女エイミー。風変わりな父親とそりが合わず、周りの環境にも馴染めないエイミーは暗い日々を送る。そんなある日、親鳥に見捨てられたガチョウの卵を見つけたエイミーは、自分でその16個の卵を孵化させる。渡り鳥であるガチョウを安全な場所に連れていくために、エンジン付きグライダーでガチョウを誘導するという奇想天外なアイデアを父親が考え出し、父親の友人たちも加わり、ガチョウを訓練する日々が始まった。

 同名の映画のノベライズ版らしい。映画にはまったく興味のない自分は、こんなタイトルの映画は観たことも聞いたこともないが、「アカデミー賞」うんぬんの記述が裏表紙にあったので、結構有名な映画なのかもしれない。とにかく読みやすい作品で、本当にサクサク読める。高校の教科書レベルと同じくらいのやさしさなので、ペーパーバック超初心者でも挫折することなく読むことができると思う。



THE BRIDGES OF MADISON COUNTY by Robert James Waller

 読み易さ 
 面白さ   

 言わずと知れた「マディソン郡の橋」。英語の勉強を始める前に知り合いから翻訳本を借りて読んだことがあるが、そのときはいかにも翻訳調の文体にどうしても馴染めず、3頁で挫折した。
 英語を勉強してから改めて読んだところ、不覚にも泣いてしまった。ベタな展開ではあるが、ラブストーリーはできるだけベタな方が読みやすい。ただ、キンケイドが自分の生きざまを語る部分は、あまりにもスカしているというかわざとらしくて、読んでいて白けてしまった。男たるもの、自分のことを雄弁に語ってはいけないと思う。



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