IAN McEWAN 




 ブッカー賞を受賞したイギリスの作家。
 1948年にニューハンプシャー州で生まれた作者は、父親がイギリス軍兵士だったため、幼少期をシンガポールやリビアなどで過ごす。12歳でイギリスに戻り、サセックス大学で英文学を学ぶ。大学に在学中から作家を志し、劇作家としていくつかの脚本を手掛ける。1975年に初の短編集を出版し、サマセット・モーム賞を受賞する。1978年に初の長編小説である「The Cement Garden」を発表し、1998年に発表した「Amsterdam」でブッカー賞を受賞する。
 作者の書く文章は、特に難しいということはないが、独特の雰囲気を持つ文章であるため、好き嫌いが分かれるかもしれない。




SATURDAY   13/08/18 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公は、神経外科医である48歳のヘンリー。妻のロザリンドは弁護士として働き、娘のデイジーは初めての詩集の出版を目前に控え、息子のテオはミュージシャンとして活動し、それぞれ充実した生活を送っていた。2003年2月のロンドンは、イラク戦争への参戦を反対するデモ隊で騒然としていた。そんな土曜日に、ヘンリーは3人組のストリートギャングが運転する自動車と軽い接触事故を起こしてしまう。その場の機転で災難を逃れたヘンリーだったが、3人組のリーダーであるバクスターがヘンリーに出し抜かれたことに腹を立て、ヘンリーの家族をも巻き込んだ危険な事態へと発展してゆく。

 まるで絵に描いたような幸せな家庭で、まずはそこに違和感を覚えた。父親が医者で母親が弁護士、息子がミュージシャンで娘が詩人って、そんなドラマみたいな家族があるかっての。それだけならまだしも、ヘンリーの家に侵入してきたストリートギャングのバクスターが、デイジーの書いた詩に感動して隙を見せるなんて、そんなバカなことがあるかっての。あまりにもありえない設定と展開で、読んでいてしらけた。なので、それ以上の感想はない。



ON CHESIL BEACH   13/06/30 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ともに22歳のエドワードとフローレンスは、結婚式を終え、旅先での初夜を迎える。二人ともバージンであるため、お互いに緊張して夜を迎えるが、フローレンスは男性との肉体的な関わりに激しい嫌悪感を抱いていた。しかし、そんなことには気付かないエドワードは、フローレンスの身体を激しく求め、フローレンスもエドワードの気持ちに必死にこたえようとするが、最後には悲劇が待っていた。

 二人の生い立ちや出会いなどを随所に挟みながら、新婚初夜の様子を描写していく展開で、なかなか面白かった。正直なところ、これはフローレンスの方が悪いだろう。精神的な愛情は感じるけれど、肉体的には嫌悪感しかないという言い訳は、健康な若い男子に対しては通用しない。そもそも、若い男女の間においては、精神的な愛情よりも肉体的な愛情が先行するのが当たり前だ。精神的な愛情はその後に付いてくるものだから。
 それはともかく、エドワードがフローレンスのために、一週間前から禁欲生活を送っていたというのが笑えた。経験豊富な男子ならともかく、チェリーボーイがそんなことをしたら、いざというときに早撃ちマックになるのは目に見えている。この作品は、コメディにしたら大いに笑えそうだ。



BLACK DOGS   13/06/16 更新

 読み易さ 
 面白さ   

幼い頃に事故で両親を亡くしたジェレミーは、友人たちの両親と仲良くすることで、親に対する自分の思いを満たしていた。やがて、結婚して自分も親となったジェレミーは、義父母であるバーナードとジューンの若い頃の話を聞き、回想録にまとめようと思い立つ。以前はイギリスの共産党のメンバーとして活動していたバーナードとジューンだったが、合理的な考え方をするバーナードと、神秘的なものの存在を信じるジューンとの仲は次第に冷めていく。ジューンの考え方を決定的に変えてしまったのは、新婚旅行で出かけたフランスで遭遇した2頭の黒い大型犬だった。

  文章がやたらと難しくて、あまり理解できなかった。政治的な思想と宗教的な思想をテーマにしているらしいことは理解できたけれど、結局のところ何が言いたいのかまではよくわからなかった。自分の頭の悪さを棚に上げて言わせてもらうと、クソみたいにつまらない小説だ。
 わずかに理解できたのは、人間というのは、自分で強烈な神秘体験をすると、すぐにオカルト的なものを信じてしまうということだ。たしかに、いろいろと小難しい理屈で考えるよりも、自分の体験をすべて肯定して生きていく方が楽には違いない。だからといって、理論的に考えることを放棄してしまったら、どんどんと危ない方向に進んでいく可能性が高いということも、忘れてはいけないと思う。



THE CEMENT GARDEN   13/05/18 更新

 読み易さ 
 面白さ   

14歳のジャックは、姉のジュリー、妹のスー、弟のトムとともに、イギリスの静かな田舎町で暮らしていた。ある日のこと、父親が大量のセメントを買い込んで、庭の工事に取り掛かるが、心臓発作で亡くなってしまう。それをきっかけに母親も体調を崩して寝込んでしまい、夏休みが始まったばかりの日に息を引き取ってしまう。母親が亡くなったことを周りに知られると、自分たちが施設に入れられて離ればなれになってしまうと考えたジャックたちは、母親をセメントで固めて地下室に隠してしまう。兄妹4人だけの生活が始まるが、死体となった母親の腐敗とともに、彼らの生活も崩壊への道をたどっていく。

  死体遺棄と近親相姦という、かなりショッキングなテーマを扱っている作品。内容的には、まとまっているのか支離滅裂なのかよくわからないが、独特の雰囲気があってなかなか面白かった。ただ、父親の影があまりにも薄い。この作品における父親の役目というのは、ストーリーを展開する上で重要な小道具となるセメントを購入するというだけのことだ。セメントさえ買わせればあとは用無しとばかりに、適当な感じで父親を病死させてしまうというのも、少しばかり安直なのではないだろうか。父親の影があまりにも薄くて、それが逆に気になってしまった。



AMSTERDAM  03/05/21 更新

 読み易さ 
 面白さ   

奇病に侵されて亡くなったモリーの葬儀に集った3人の元恋人は、イギリスを代表する作曲家のクライブ、有力新聞社の編集長であるバーノン、外務大臣で次期首相と目されるガーモニー。モリーの夫からガーモニーのスキャンダラスな写真を入手したバーノンは、これを自身の新聞に載せようとするが、親友であるクライブは反対し、二人の友情に亀裂が生じる。モリーを中心として奇妙に絡み合う3人の運命は?

 とりあえずストーリーはどうでもいい。ちょっと冗長な部分もあるが、ごく普通に読めるレベル。それよりも、「同じ女性と付き合った過去を持つ親友同士」というのが素敵だ。 つまりは「兄弟」ということだから、親友にして兄弟という何とも複雑怪奇な関係ということになる。お互いの顔を見るたびに、「こいつ、ベッドの上でこんなこととかあんなこととかしたんだろうな」などと考えてしまいそうでちょっとだけ嫌だ。
 こういう関係にある二人の間に真の友情は存在し得るのだろうか。 「男女の間に果たして友情は存在し得るのか?」などという陳腐な命題よりも、こっちの方がよっぽど深いテーマだと思うのは自分だけだろうか。



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