ED McBAIN 




 「87分署」シリーズで有名な、アメリカのミステリー作家。
 1926年にニューヨークで生まれた作者は、海軍の兵士として第二次世界大戦に出征し、その後教師を経て執筆活動に専念する。1954年に出版された「The Blackboard Jungle」(邦題: 「暴力教室」)で一躍人気作家になり、それ以後「87分署」シリーズや「弁護士マシュー・ホープ」シリーズなど、数々の人気シリーズを発表。非常に多作な作家で、エド・マクベイン以外のペンネームでも数多くの作品を発表している。2005年にガンのため亡くなった。
 作者の書く文章は平易で、1冊のボリュームも200〜300頁程度と読みやすく、ストーリー展開もスピーディーでスリリング。これからペーパーバックに挑戦しようという人にぜひお勧めしたい作家。




COP HATER  08/03/29更新

 読み易さ 
 面白さ   

ある蒸し暑い夏の夜、87分署のリアドン刑事が何者かによって45口径の拳銃で射殺される。身内の刑事を殺害されたことに憤る87分署は、総員体制でこの事件の捜査にあたる。キャレラは同僚のブッシュとコンビを組んで捜査を開始するが、そんな彼らをあざ笑うかのように、今度は黒人刑事のフォスターが同じ45口径の拳銃で殺害される。有力な手がかりが何もつかめないまま捜査はこう着状態に陥ってゆき、キャレラをはじめとする87分署の刑事たちは焦りの色を見せ始める。そんなとき、第3の凶行が発生する。今度の犠牲者は、キャレラとコンビを組んでいたブッシュだった。

 1956年に出版された、「87分署」シリーズの記念すべき第1作目。
 今から約半世紀前の作品ということで、当時の一般的なアメリカ人の生活が垣間見えて面白い。この頃は部屋にエアコンがないのはもちろんのこと、冷蔵庫もそれほど普及していなかったようだ。田舎ならまだしも、真夏の都会でエアコンや冷蔵庫のない生活を送るのは大変だろう。お疲れさまです。
 そんな感じで、小道具などに古臭さを覚えるものの、ストーリー展開は第1作目からしっかりと87分署シリーズの味を出していて、安心して読める。ただし、トラブルメーカーの新聞記者が最後までのほほんとしているのだけが、読んでいてスッキリしなかった。こういうマスゴミには思い切り正義の鉄拳を振り下ろしてほしい。



KILLER'S PAYOFF  07/12/15更新

 読み易さ 
 面白さ   

87分署内の路上で、男性がライフル銃で殺害されるという事件が発生する。事件を担当するのは、スティーブ・キャレラとコットン・ホースのコンビ。被害者のクレイマーは、人の弱みにつけこんで金を脅し取ることで生計を立てていた。キャレラとホースは、クレイマーに脅されていた人たちを特定していくが、どうしても犯人までたどりつくことができない。そんなとき、事件の直前にクレイマーがハンティング旅行に出かけていたことを知ったホースは、クレイマーが泊まった宿を訪ねる。その宿でホースがつかんだ手がかりにより、事件は大きく展開してゆく。

 1958年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 この作品の主人公は、スティーブ・キャレラではなくコットン・ホースだ。とにかく、このホースがモテモテなのには驚いた。捜査の途中で美人の女子を3人もいただいちゃうところなどは、同じ男子としてはうらやましい限りだ。
 肝心のストーリーはというと、このシリーズにしてはちゃんとした展開で、納得できる結末になっている。このシリーズでよくあるような、メインのストーリーとは関係のないお遊びのサブストーリーが入ることもないので、最後まで集中して読むことができる。コットン・ホースが大好きなあなたにお勧めの一冊。



THE CON MAN  07/11/17更新

 読み易さ 
 面白さ   

87分署の管轄内で女性の水死体が発見されるところから物語は始まる。女性の手にはハートの刺青があり、ハートの中には「MAC」という文字が彫られていた。女性の身元を調査するキャレラたち87分署のメンバーのもとに、またしても女性の水死体発見のしらせが届く。この女性の手にもハートの刺青があり、その中には「MAC」の文字が彫られていた。しかし、犯人の手がかりはつかめない。そんなとき、キャレラの妻テディが偶然にも犯人と遭遇する。夫が追っている事件の犯人を逃すまいと、テディの必死の追跡が始まる。

 1957年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 メイン・ストーリーには結婚詐欺師で殺人犯である男が登場し、サブ・ストーリーとして二人組の詐欺師が登場するという展開の作品。この二つのストーリーは結局最後までからんでこないため、マクベイン氏の作品に慣れていない場合はちょっと戸惑うかもしれないが、一見無駄とも思えるこういう「お遊び」こそが、マクベイン氏の作品の大きな魅力の一つとなっている。
 ミステリー作品としては特に驚くような仕掛けがあるわけでもなく、軽く読めてしまう作品だが、なんといっても聾唖者のテディが可愛い。シリーズ初期の作品ということで双子の子供はまだ生まれていないため、キャレラとテディはまさにラブラブ状態。キャレラに喜んでもらおうと頑張るテディに胸キュンだ。



AXE  04/09/08更新

 読み易さ 
 面白さ   

スラム街に建つビルの管理人である87歳の老人が、何者かに斧で惨殺されるという事件が発生する。同僚のコットン・ホースとコンビを組み捜査にあたるキャレラは、やがて老人が管理していたビルの地下室が、非合法の賭場になっていたことを突き止める。そして発生する第二の殺人事件。被害者は、その賭場に不正に関わっていた87分署の警官だった。どんどんと複雑になっていく事件の真犯人は?

 1964年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 このシリーズの大きな特徴として挙げられるのは、発生する事件自体は残酷だが、随所に散りばめられたユーモアのおかげで軽く読めてしまうということ。ホースがデートのときに観た映画についてキャレラと話す部分などは結構笑える。ストーリーには何の関係もない会話だが、このシリーズにおいてはこういう「遊び」みたいな部分というのは不可欠なのだろう。また、キャレラの双子がなんとも可愛らしくていい。しかし、このオチだけはどうかと思う。



NOCTURNE  00/11/12更新

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 面白さ   

元高名なピアニストだった一人暮しの老女が、何者かに銃殺されるという事件が深夜発生する。3交代制の深夜勤務シフトにあたっていたキャレラと同僚のコットン・ホースは、深夜にも関わらず、早速聞きこみを開始するが、明け方に1人の街娼の少女の死体が発見されたという報せが入る。この事件は88分署のオリバー・ウイークスが担当することになり、それぞれの事件をそれぞれの刑事達が追って行く。

 1997年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 キャレラには、耳が聞こえず口もきけない、美しい妻と、10歳になる男の子と女の子の双子の子供がいるという設定。"LONG TIME NO SEE"でもこの年齢設定は変わっていない。デビュー作の"COP HATER"でキャレラは結婚したという設定になっているから、シリーズの最初の頃は登場人物はちゃんと年齢を重ねていたのが、途中からキャラクターたちがまったく歳をとらない「サザエさん」状態になったらしい。それでも、実際のストーリーは1つのものとして繋がっていて、たとえば、前作のクリングと黒人女性とのロマンスは本作でも続いている、という具合。87分署の面々には、たった1年間で想像を絶するようなものすごい量の出来事が起こっているらしい。



ROMANCE  00/11/12更新

 読み易さ 
 面白さ   

"ROMANCE"という演劇の主役を務める女優が、劇の稽古の途中で何者かに刺されて軽傷を負う、という事件が発生する。実はこの事件は、劇の話題作りのために、女優とそのマネージャーが仕組んだ狂言だったが、その翌日、本当に女優が刺殺されてしまう。容疑者として女優のマネージャーが逮捕されるが、真犯人は別にいるのではと疑問を持ったキャレラは、後輩のバート・クリングとコンビを組み捜査を開始する。与えられた4日間という短い時間で、キャレラとクリングは果たして真犯人を逮捕することができるのか?

 1995年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 本作では、白人男性のバート・クリングと、警察病院に勤務する、クリングよりもはるかに階級が上である黒人女性との「ROMANCE」も同時進行で描かれている。著者の作品では、黒人と白人との心理的・社会的軋轢が、多かれ少なかれ、必ずと言っていいほど作品の要素の1つになっているように思う。
 関係のない話だけれど、本作に限らず、アメリカ作家の作品を読むたびに不思議に思うのは、なぜアメリカ人は自分の部屋に異性を平気で招き入れるのかということ。日本ではちょっと考えられない。少なくとも、自分がそういう状況に立たされたら、頭の中はよからぬ想像で一杯になってしまいそうだ。



LONG TIME NO SEE  00/11/12更新

 読み易さ 
 面白さ   

ベトナム戦争の事故で視力を失った黒人男性が、何者かによって鋭利な刃物で喉を切り裂かれ惨殺される、という事件が発生する。それから間をおかずに、その男性の妻である、やはり盲目である白人女性が同じ手口で殺害されてしまう。捜査にあたるのは、スティーブ・キャレラと同僚のマイヤー・マイヤー。捜査にあたる彼らに、第3の殺人事件の報せが入るが、被害者はまたしても盲目の人間だった。盲目の人間ばかりを狙う犯人の意図とは?

 1977年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 このシリーズの大きな特徴の一つとして、実際に捜査にあたる現場刑事の視点からストーリーが展開される、ということが挙げられる。他のミステリー物は、ストーリーの途中で様々に綿密な伏線が張られ、ラストに向かってその伏線が巧みに解き明かされて行く、という展開が多いと思う。しかしこのシリーズでは、刑事達の聞きこみ捜査によりストーリーが展開されていくので、無駄足を踏むことも多く、鮮やかに事件を解決する、という展開ではない。しかしそれが逆に作品にリアリティを与え、読みどころの一つになっていると思う。「こんなに足を棒にして歩き回って、こんなに安月給じゃやってらんねえよ」といった刑事達のボヤキにも、妙に共感を持ててしまう。



WHERE THERE'S SMOKE

 読み易さ 
 面白さ   

葬儀屋から死体が盗まれるという奇妙な事件が発生する。捜査にあたるのは、警部として18人の部下を指揮した経験を持つ、私立探偵のスモーク。元警部のバッジと、昔の人脈を活かして捜査に当る主人公は、この不可解な事件を見事な手腕で解決する。

 著者は「87分署」シリーズ以外にも、「弁護士マシュー・ホープ」シリーズや、他のペンネームで様々な作品を発表しているが、本作は"ED MCBAIN"として発表された単発物。どんな事件でも難なく解決してしまい、警部としての退屈な生活に見切りをつけ、親の遺産で悠々自適な生活を送る、48歳の私立探偵を主人公とした作品。最初は難解に見えたこの事件も結局鮮やかに解決してしまい、「また解決しちゃったよ、もっと面白い事件はないのかね」という主人公のキャラクターがなんとも痛快。



8 BLACK HORSES

 読み易さ 
 面白さ   

ある秋の日、87分署内の公園で若い女性の全裸死体が発見される。時を同じくして、キャレラ宛てに1通の手紙が届く。その手紙の内容は、8頭の黒い馬の写真のコピーだった。それから次々に届けられる手紙は、3つの手錠、6つの警察バッジ、11挺の拳銃といった警察に関係する物のコピー写真。「デフ・マン」と名乗る謎の犯罪者の意図とは?

 1985年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 補聴器を付けた「デフ・マン」という犯罪者をメインキャラクターに据えたストーリー。この「デフ・マン」は本作以外の作品にも登場するようで、敵役のメインキャラクターの一人、といった位置付けらしい。明智小五郎シリーズにおける、怪人二十面相といったところか。ストーリーとしては、「デフ・マン」がその計画を遂行する過程で次々に殺人が起きるという凄惨な展開にもかかわらず、随所にユーモアがちりばめてあって結構笑える。特にラストは、87分署のメンバーが生命の危機にさらされるという緊迫した展開にもかかわらず、とぼけたオチに思わず笑った。



DOLL

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

若く美しい女性が何者かに殺害されるという事件が発生する。捜査にあたるスティーブ・キャレラと後輩のバート・クリング。何事にも反抗的なクリングに手を焼くキャレラは単身捜査に乗り出し、犯人をつきとめる。しかし逆に犯人に捕らわれてしまい、キャレラと思われる死体が後日発見される。責任を痛感し捜査を開始するクリング。事件解決の鍵を握るのは、1体の人形だった。

 1965年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 このシリーズは1956年から始まって現在まで続くロングシリーズで、1965年という比較的初期に書かれた本作はやはりそのディティール設定に多少の古臭さは感じるものの、そんなことは気にならないくらいに面白い。特にラストは、文字通り手に汗を握って読んだ。ペーパーバック初心者からベテランまで、文句なくお勧めの1冊。



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