DEAN KOONTZ 




 ホラー小説の巨匠とも言うべきアメリカの作家。
 1945年にペンシルバニアに生まれた作者は、アルコール依存症の父親と病弱な母親に育てられ、不遇な少年時代を送る。大学を卒業してからは、恵まれない子供たちのカウンセラーをする一方で小説も書き始め、やがてモダンホラーの巨匠としてベストセラー作家としての地位を不動のものにする。
 作者はよくスティーブン・キングと比較されるが、文章においては大きな違いがある。凝った表現を多用するキングとは異なり、作者の書く文章は平易で非常に読みやすいのが特徴。最近はホラー小説以外にも様々なジャンルの作品を手がけており、ホラー作家という枠を超えた活躍を見せている。キングの作品は読みたいけど難しくて、という人でも、クーンツの作品なら読めるはず。



THE HUSBAND  16/03/21 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

主人公は、友人と二人で造園業を営む27歳のミッチ。愛するホリーと結婚して幸せな生活を送るミッチだったが、ある日、作業中のミッチの携帯電話が鳴り、「ホリーを誘拐した。解放してほしければ200万ドルを用意しろ」と脅迫される。突然の電話に驚くミッチに対し、警察に知らせたらホリーの命はないと警告する誘拐犯。単なる脅しではないことを証明するため、ミッチの目の前を歩いている男性がいきなり銃殺されてしまう。なんとしてもホリーを無事に救出したいミッチは、だれの力も借りず、たった一人で凶悪な犯罪組織に挑んでいく。

 かなり面白かった。いきなりホリーが誘拐される場面から始まり、その後は息もつかせぬ緊迫したシーンが連続する。この作品は、ホラーでもミステリーでもなく、純粋なサスペンス小説で、難しいことを考えることなく、ストーリーに入り込んで一気に読むことができる。とにかく、最初から最後までミッチに不利な状況ばかりが続き、ずっとハラハラしながら読み進めることになる。
 しかし、それまでのストーリー展開のわりに、ラストが少しばかりあっけない。それに、後日談があっさりしすぎているのも気になる。これだけ多くの人間が死んでいて、ミッチにとって不利な証拠ばかりが残っているわけだから、その後どうやってミッチの容疑が晴れたのかというあたりをきちんと書いてほしかった。



TICK TOCK  13/10/27 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ベトナム生まれのアメリカ人であるトミーは、専業のミステリー作家として独立した記念に高級車のコルベットを買う。上機嫌で帰宅した自宅の玄関先にぼろきれで作られた人形が置かれているのに気付いたトミーは、その人形を持って家に入ってしまう。しかし、その人形が恐ろしい怪物に姿を変え、トミーに襲いかかる。トミーはコルベットに乗って逃げるが、怪物のせいで事故を起こしてしまい、コルベットは炎上してしまう。必死に怪物から逃げようとするトミーの前に、デルと名乗る女性が現れ、二人は協力して怪物からの逃避行を続ける。夜明けが来るまで逃げ続けることができれば、二人の命は助かるのだが、その運命やいかに。

 途中までは普通のホラーのつもりで読んでいたのだが、後半にさしかかってくると、いきなりつまらないジョークの応酬で、ドタバタコメディの様相を呈してくる。これは思い切り失敗作だろうと思って後書きを読んでみると、わざとコメディとして書いたということだ。それまでに重い作品の執筆が続いていたので、その反動で思い切り軽い作品を書いてみたくなったというのがその理由らしい。そうした理由はともかく、この作品自体はまったく面白くない。ホラーとして読んでも、コメディとして読んでも、どちらも中途半端だ。まあ、作者自身が息抜きとして書いたものだから、つまらないのも当然かもしれない。



THE GOOD GUY  13/09/01 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語は、平凡なレンガ職人のティムが、ひょんなことから暗殺事件に巻き込まれるところから始まる。暗殺のターゲットがリンダという女性であることを知ったティムは、そのことをリンダに告げるが、自分がなぜ暗殺のターゲットになるのか、リンダにはまったく心当たりがない。冷酷な殺し屋の追跡をあわやというところでかわしながら、二人の逃避行が続く。

 ハラハラドキドキの展開でそれなりに面白いけれど、物語の初めに張った伏線を最後まで引っ張りすぎではないかと感じた。いくつかの伏線を小出しに回収していった方が、読者の興味を最後まで効果的に引き付けることができるように思う。それから、リンダが命を狙われる理由があまりにも強引すぎる。さすがに、こんな理由で何人も暗殺したりしないだろう。この暗殺の理由が最大の謎として物語の最後まで引っ張られるだけに、その強引な理由を明かされたときには少しだけ脱力した。



FEAR NOTHING  09/06/27 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公のクリスの父親が癌で亡くなるところから物語は始まる。愛する父親に最期の別れを告げようと霊安室を訪れたクリスは、葬儀屋たちの手によって父親の死体が赤の他人の死体と交換される現場を目撃してしまう。先天的な病気のために紫外線を浴びることができないクリスは、死体交換の理由を探るため、愛犬のオルソンとともに夜の街を駆け回る。やがて、街全体が何か重大な秘密を隠していることに気付いたクリスは、親友のボビーと恋人のサーシャとともに危険な敵に立ち向かう。

  この作品は、以前に読んだ"Seize the Night"の前編にあたる作品らしい。"Seize the Night"を読んだときにはストーリーの展開が唐突だと感じたが、この作品を読んでようやくその理由が理解できた。
 ただし、この作品も"Seize the Night"と同じくさっぱり面白くない。たった一つの謎を延々と引っ張りすぎで、読んでいる途中で完全に飽きてしまった。シリーズ物の第1作目ということでしかたないのかもしれないが、ラストも投げっぱなしという印象で、すっきりとした読後感とは程遠い。ただ、"Seize the Night"と比べて、クリスとボビーのスカした会話がこの作品では少なかったため、その意味では多少なりとも読みやすかった。よかった点を挙げるとすればそれくらいで、後は特に書くこともない。



STRANGE HIGHWAYS  09/06/13 更新

 読み易さ 
 面白さ   

中編2作と短編13作を収めた作品集。

 さまざまな時代に書かれた作品をまとめたもので、本格的なホラーから軽いタッチのものまで、バラエティに富んだ内容になっている。クーンツ氏の短編を読んだのはこれがはじめてだが、イマイチだと感じた。スティーブン・キングの短編集を読んだときにも同じことを感じたのだが、ホラーを短編で読ませるのはかなり難しいと思う。読むほうとしても、えっ、これで終わりなの? という不満が残ってしまう。
 もちろん、中には面白い作品もいくつかあって、一番面白かったのは"Kittens"だ。これは、クーンツ氏が大学生のときに書いた作品のようで、短編としてのクオリティは一番高いと思う。"Ollie's Hands"も、ちょっと悲しくていいお話だ。読者からの反響が一番大きかったのは"Twighlight of the Dawn"らしいが、自分としてはイマイチだった。とりあえずバラエティ豊かな作品がそろっているので、どれか1つくらいはお気に入りの作品が見つかると思う。



SEIZE THE NIGHT  06/11/23 更新

 読み易さ 
 面白さ   

昔の恋人の息子が誘拐されたことを知った主人公のクリスが、飼い犬のオルソンと誘拐犯を追うところから物語は始まる。オルソンの嗅覚が探し当てた場所は今は使われていない軍の施設だったが、そのオルソンも何者かにさらわれてしまう。その場所で遺伝子操作に関する極秘プロジェクトが進行していることを知ったクリスは、親友のボビーと恋人のサーシャらとともに、廃墟となった施設にあらためて乗り込む。しかし、誘拐犯の潜む部屋は、過去と現在がクロスする危険なタイムマシンになっていた。恐るべき誘拐犯の正体と、その目的とは?

 これまでに読んだクーンツ氏の作品の中で一番つまらなかった。どうでもいいことをグダグダと書いているだけで、肝心のストーリーは少しも進んでいかないのでストレスがたまる。ボリュームはかなりあるんだけど、不要なことばかり書いて水増ししている感じ。唐突に登場するタイムマシンもどうかと思う。最初はウィルスの話だったのに、いつの間にかタイムマシンの話になって、肝心のウィルスは結局ほったらかし。クリスとボビーのすかした会話も読んでいてうざったいだけ。本当にここまでつまらない作品を、あのクーンツ氏がよくぞ書いたものだと思う。
 ただし、病気のために紫外線を浴びることのできないクリスのキャラクター設定だけは面白いと思う。それがこの作品の唯一の読みどころ。



THE MASK  04/09/15 更新

 読み易さ 
 面白さ   

精神科医のキャロルは、ある日美しい少女を車ではねてしまう。意識を取り戻した少女からは、過去の記憶が一切消えていた。少女を引き取り、催眠療法で記憶を呼び戻そうとするキャロルは、少女の過去に何か恐ろしい秘密が隠されていることに気づく。ポルターガイスト現象や悪夢など、次々に起きる不吉な出来事は一体何を暗示するのか?

 ちょっと前半部分がタルイかなあ。ポルターガイスト現象や悪夢といった小道具だけで中盤過ぎまで引っ張るのは、ちょっといただけない。クーンツ一流のテンポ感あふれる展開を期待していただけに、ちょっと残念。じゃあその分、各キャラクターが丁寧に描写されているかと言うと、そんなこともない。じゃあその分思い切り怖いストーリーかと言うと、これまたそんなこともない。じゃあ、どうしようもなくつまらないかと言うと、そこそこ楽しめるくらいのレベルではある。結論としては、どうにも中途半端な作品ということだ。



DEMON SEED  04/07/14 更新

 読み易さ 
 面白さ   

「プロテウスプロジェクト」により開発された人工知能の「プロテウス」は、やがて感情を持つようになり、美しいスーザンに恋をする。スーザンの家のセキュリティシステムに入り込んだプロテウスは、スーザンを監禁し、彼女の体内に自らの意思を持つ新しい生命を宿そうとする。実体のない存在から、肉体を持った存在へと生まれ変わろうとするプロテウスは、その望みを叶えることができるのか?

 本作は、1970年代に書かれたオリジナルを最近になって書き直したものらしい。
 はっきり言ってイマイチ。読んでいる途中で何度も眠くなった。クーンツ一流のテンポ感はそこそこあるが、プロットが単純すぎる。これくらいだったら自分にも書けそうというのは言いすぎにしても、天下のクーンツにもこういう思い切りB級なホラーを書いていた時代があったのかと思うと、それはそれで感慨深いものがある。青臭いクーンツを読んでみたいという方に限りお勧め。これを読めば、今のクーンツ作品がより一層楽しめるかもしれない。



WHISPERS  02/05/03 更新

 読み易さ 
 面白さ   

売れっ子脚本家の主人公ヒラリー。ある日突然、取材で一度顔を合わせただけのブルーノに襲わるが、危うく難を逃れる。ほっとしたのもつかの間、翌日またブルーノに襲われるヒラリーだが、偶然手にしていたナイフでブルーノを刺殺する。検屍を終え、埋葬されたはずのブルーノが、三度ヒラリーを襲う。恋人のトニーに危機一髪で救出されるが、死んだはずのブルーノがなぜヒラリーの前に姿を現したのか、その謎を解くために、ヒラリーとトニーは調査を開始する。執拗にヒラリーの命を狙うブルーノの動機の裏には、ブルーノの母親と祖父に関わる陰惨な過去の秘密が隠されていた。

 何かとスティーブン・キングと比較されるクーンツ氏だが、自分の勝手な印象では、「キャラクター重視」のキングに対して、「ストーリー重視」のクーンツといった印象がある。そういった意味で、綿密にキャラクターが書き込まれたこの作品は少しだけキングっぽい色があるような気がする。しかし、せっかくの綿密なキャラクターの描き込みがあまりラストに生きていない感じがするところがほんの少しだけ残念。別にキングの方がクーンツよりも優れているということではなく、作家それぞれのテリトリーがあるということだ。



COLD FIRE  01/03/13 更新

 読み易さ 
 面白さ   

教え子を自殺で失ったことがきっかけで、高校教師を辞めた主人公のジム。彼には人の死を予知出来るという超能力が備わっていた。予知した死から命を救うために全米中を奔走するジム。たまたまその現場を目撃した女性新聞記者のホリーはジムに興味を抱き、接触を図るが、ジムに出会った日から奇妙な悪夢に悩まされることに。お互い同じ悪夢に悩まされていることを知った2人は、夢に出て来る、ジムが少年時代を過ごした祖父母の家に建つ古い風車へと向かう。そこで2人を待っていた "The Enemy" の正体とは?

 こうした超能力を持った主人公の登場する作品は、「何でもあり」みたいな展開になりがちだが、さすがはクーンツ氏、最後まで飽きることなく読まる。
 自分はオカルトチックなことはまったく信じていないが、それでももし自分にも同じような超能力が備わっていたとしたらどうだろうと考えることはある。スプーンを曲げたり、コインを宙に浮かせたりといった何の役にも立たないような能力だったら、メディアに出まくって小銭を稼ぐことを考えるかもしれないが、この作品のように人の生死に関わるような能力だったら絶対にいらない。



SOLE SURVIVOR  01/03/13 更新

 読み易さ 
 面白さ   

最愛の妻と2人の幼い娘を、ある日突然飛行機事故で失ってしまった主人公ジョー。事故から1年後に家族の墓を訪れたジョーは、墓の写真をポラロイドカメラで撮影する、ローズと名乗る女性に遭遇する。撮影の理由を問い詰めるジョーに対し、「今は理由は言えないが、いずれ真実を話す」と答えるローズ。事故の背後には大きな謎が隠されていると感じたジョーはローズの追跡を開始する。事故に遭った飛行機にローズが乗っていたこと、ローズが連れていた少女がジョーの次女と同じニナという名前であることを突き止めたジョーを待っていたのは、飛行機事故の謎をもみ消そうとして次々に関係者の口を塞いで行く、謎の組織だった。はたしてジョーの運命は? ローズの正体は? ニナは本当にジョーの愛するニナなのか?

 ローズが接触した事故の遺族がジョーの目の前で次々に信じられない方法で自殺したり、生存者などいるはずのない飛行機事故からどうやってローズは生還したのか、など物語の前半部分では様々な謎が提示される。その謎を主人公が追って行くという展開で、物語の後半までは一気に読ませる。しかし、このラストはどうなんだろうか。このラストがありなら、何でもありになってしまうような気がする。前半部分を読んで、サスペンス小説、あるいはミステリー小説なのかと思っていたが、読み終えて初めてホラー小説だということに気づいた。最初からホラー小説だと分かっていれば、ラストでがっかりすることもなかったのかもしれない。



INTENSITY  01/03/13 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

心理学を専攻する女子学生の主人公チャイナは、休日を利用して親友の実家に泊まりに行く。暖かいもてなしを受けたその日の深夜、何者かが侵入し家族全員を惨殺してしまう。危うく難を逃れたチャイナは犯人の運転するキャンピングカーに密かに乗り込み、犯人の家をつきとる。そこでチャイナが見たものは、地下室に閉じ込められている美しい少女の姿だった。少女を助け出そうとするチャイナだが逆に犯人に捕らえられてしまい、手足に枷をはめられ身動きの出来ない状態になってしまう。はたしてチャイナは無事に脱出して少女を救うことができるのか?

 読み始めて30ページも経たないうちに、いきなり犯人が侵入して殺人を犯す、という導入部に始まり、それ以降は息をもつかせぬ展開で一気に読ませる。ミステリー小説のように、途中でさまざまな伏線が張られラストでその謎が解き明かされる、という構成ではないため、途中で多少難解な部分があっても気にせずに読み飛ばすことができる。難しいことは考えずに、頭を空にして楽しめる作品。



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