STEPHEN KING 




 説明不要のアメリカのベストセラー作家。
 1947年にメイン州で生まれた作者は、子供の頃から作家を目指し、10代の頃から小説を書いては何度も投稿を繰り返していた。社会人になってからも様々な仕事をしながら、決して裕福とはいえない状況で小説を書き続け、1974年に "Carry" で念願の作家デビューを果たす。映画化されている作品も数多く、その人気はもはやアメリカ国内にとどまらない。
 文章の難易度としては、凝った表現が多く、決して読みやすいとは言えない。1冊のボリュームも相当あるので、ペーパーバック初心者には決してお勧めできないが、著者一流の独特な雰囲気を有する文章は一読の価値あり。背伸びしてでも読んでみたい作家。




JYOLAND  16/03/06更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は1973年のアメリカ。大学生のデビン・ジョーンズは、夏休みの間、「ジョイランド」という遊園地でアルバイトをする。その遊園地のお化け屋敷では、数年前に若い女性が惨殺されたという過去があり、実際に若い女性の幽霊を見たというスタッフもいた。バイト中に交際相手のウェンディから一方的に別れを告げられたデビンは、気持ちを切り替えるため、大学を休学し、夏休みが終わっても遊園地のスタッフとして仕事を続ける。やがて、車椅子の少年マイクとその母親アニーと知り合いになったデビンは、これまで遊園地に行ったことがないというマイクの話を聞き、閉園中のジョイランドにマイクとアニーを招待する。しかし、ジョイランドでの殺人事件を調べるデビンのもとに殺人犯から電話が入り、ついに殺人犯と対決することになる。

 これは、ホラーやミステリー的な要素を絡めた青春小説というべき作品だと思う。とりあえず、若い女性を狙った連続殺人事件がストーリーの軸としてあって、そこにスーパーナチュラルな能力を持つ少年が登場するということで、ホラーやミステリーの要素はあるのだけれど、純粋なホラー小説やミステリー小説として読んだ場合、まったく大したストーリーではない。真犯人にしても、まったく意外性のない人物で、最初からバレバレという感じだ。
 しかし、だからと言ってつまらない作品ではない。彼女にフラれて落ち込むデビンが、遊園地での仕事を通して人間的に成長し、車椅子の少年マイクとの心温まる交流により、かたくなに心を閉ざすアニーからの信頼を得ていくところなどは、読み応えがある。読後感もさわやかで、青春小説として読めば十分に楽しめると思う。



FROM A BUICK 8  14/06/08更新

 読み易さ 
 面白さ   

警察官である父親のカートを事故で亡くした高校生のネッドは、カートが勤務していた警察署に頻繁に出入りして仕事を手伝うようになる。そんなある日のこと、警察署脇の倉庫に、古い年式のビュイックが保管されていることに気付く。ネッドは、カートの親友で現在は警察署長を務めているサンディに、ビュイックのことについて尋ねる。サンディだけでなく、カートの元同僚たちも集まり、ビュイックの驚くべき過去にについて語り始める。

 場面が現在から過去へと交互に切り替わり、ビュイックにまつわる出来事をそれぞれのキャラクターが語りながら物語が進行していくという形式になっているが、はっきり言って退屈なだけで、少しも面白くない。なにしろ、ビュイックが突然まばゆい光を放ったり、ビュイックのトランクから不気味なコウモリや魚が出てきたりといったことが繰り返し書かれているだけで、それ以外には大した事件が起きるわけでもないから、何を期待しながら読めばいいのかよくわからない。肝心のオチもあるようなないような感じで、ビュイックの謎も一切解き明かされることなく終わってしまうから、消化不良な感じがどうしても残ってしまう。残念ながら、いつものキングを期待して読むとがっかりしてしまうだろう。



THE SHINING  13/11/24更新

 読み易さ 
 面白さ   

教師の職を解雇されたジャックは、妻のウェンディーと息子のダニーを伴い、冬の間は閉鎖される山奥のホテルの管理人として働くことになる。5歳のダニーは超能力の持ち主で、ホテルに住み着いている幽霊の存在に早くから気付き、その姿におびえる。ジャックは、アルコール依存症だった過去の自分を反省し、家族のために立ち直ろうと努力するが、ホテルの幽霊たちはそんなジャックの心の弱さにつけ込み、次第にジャックを支配するようになる。そして、猛吹雪が吹き荒れる中でついに惨劇が起きてしまう。

 冬の間は雪に降り込められる山奥の大きなホテルに家族三人だけで住む、というシチュエーションが、いかにもホラー小説らしくていい。無駄な登場人物が出てこないので、じっくりとストーリーに入り込むことができる。前半は静かにストーリーが流れ、ラストに向けてじわじわと盛り上がっていく展開になっているが、このあたりの描写はさすがにキングという感じで、アルコール依存症に苦しみながらアルコールへの欲望を懸命に押さえ込むジャック、そんなジャックを心配しながら徐々に恐怖を募らせていくウェンディー、幼いながらも両親の仲を心配して心を痛めるダニーといった感じで、家族それぞれの心理が丹念に描かれていて読み応えがある。ラストはかなり悲惨だが、ある意味でハッピーエンドと言えるのかもしれない。



CUJO  13/03/24更新

 読み易さ 
 面白さ   

メイン州の田舎町に住むドナは、広告代理店を経営する夫のヴィクと4歳になる息子のタッドとともに、静かな生活を送っていた。しかし、自分の浮気がヴィクに知られ、ヴィクの仕事も窮地に陥ってしまう。事態を打開するため、ヴィクはニューヨークへと長期の出張に出かけるが、その留守中に、ドナは車を修理するため、タッドを連れて近所の修理工場を訪ねる。しかしそこには、自分の飼い主を殺し、なおも血に飢えた大型のセントバーナード犬のクージョが二人を待っていた。

 なんとも救いのない展開で、読み終わった後は少しだけぐったりした。ただ、不運に不運が重なって、どんどんと悲惨な状況に陥っていくという展開は、都合のいいことばかりが起きるハッピーエンドの小説よりも、リアリティという点でははるかに読み応えがある。
 また、キングが得意とする登場人物の詳細な書き込みも、この作品では際立っている。メインのストーリーとしては、エンジンがかからなくなった灼熱地獄の車内で狂犬のクージョとにらみ合う、というだけのことなのに、そこに絡むキャラクターたちの内面を詳細に描き出すことによって読み応えのある長編に仕上げているのだから、やっぱりキングはすごい。



DOLORES CLAIRBORNE  07/03/30更新

 読み易さ 
 面白さ   

アメリカ・メイン州の小さな島で家政婦として働くドロレスは、アルコール依存症の夫からたびたび暴力を受けていた。3人の子供のために毎日の辛い暮らしに耐えるドロレスだったが、夫のジョーが娘のセレナに乱暴しようとしたことを知って驚く。一刻も早くジョーから子供たちを離そうと家を出ることを決意するが、子供たち名義の口座がすべてジョーの名義に変えられていることに気付いて逆上する。女主人のベラにそのことを話すと、事故死に見せかけてジョーを殺害することを暗にほのめかされる。娘をなんとか守りたいと考えたドロレスは、皆既日食が起こる夏の日にジョーを殺害することを決意する。

 殺人シーンも一応あるにはあるが、これはいつものホラー作品とは違って、親子の愛情をテーマにした作品になっている。 主人公のドロレスがあまりにも報われなくて、読んでいて悲しくなってくる。意地悪で気難しい女主人のベラも、実は優しくて悲しい人間だったわけで、2人の報われない女性がいがみあいながらもいたわりあって暮らしているところが余計に悲しい。子供たちを思っての行動なのに、結果的にはそのせいで子供たちの心が離れてしまったというのは、なんと皮肉なことだろう。
 この作品は、田舎の老女であるドロレスの一人称で語られるため、文法無視の読みにくい文章になっているが、一度ストーリーの流れに乗れば、その後はノンストップで読める。キング嫌いのあなたにもお勧めの一冊。



EVERYTHING'S EVENTUAL  06/08/06更新

 読み易さ 
 面白さ   

表題作を含めた14の短編から成る作品集。

 やっぱりキングは長編のほうが面白いと、この作品集を読んで改めて感じた。オー・ヘンリーやサマーセット・モームの書く短編のように見事なオチがあるわけでもなく、キング独特の綿密なキャラクターの書き込みがあるわけでもないため、どうしても不満の残る読後感になってしまう。いつものキングを期待して読むと、おそらくその期待は裏切られてしまうと思う。



THE GIRL WHO LOVED TOM GORDON  04/06/04更新

 読み易さ 
 面白さ   

6月の週末に、母親と兄と一緒にハイキングに出かけた9歳の少女トリシア。せっかくのハイキングにも関わらず、いつものように口論を始めた母親と兄に嫌気がさし、トリシアはハイキングコースを離れて森の中に入る。ちょっと近道をするつもりが、いつの間にか森の奥深くに迷い込んでしまうトリシア。孤独なトリシアを支えたのは、ウォークマンのラジオから流れる野球中継。大ファンであるレッドソックスのリリーフエース、トム・ゴードンの幻影に導かれながら、トリシアは過酷なサバイバル生活を送る。

 9歳の女の子を主役にしたのが、この作品の一番のポイントだ。これが9歳の男の子だったら、まったく違った趣きの作品になっていただろう。9歳の女の子がこうもたくましく生き延びられるのか? という率直な疑問はこの際無視して、主人公トリシアの可愛らしさ、たくましさを素直に楽しめばいいと思う。



ON WRITING  04/03/24更新

 読み易さ 
 面白さ   

邦題「小説作法」のタイトル通り、小説の書き方をテーマとした指南書。

 指南書とは言いながら、自分の下積み時代のことや、九死に一生を得た1999年の交通事故のことなども記されていて、自伝的要素の強い構成になっている。
 ディーン・クーンツの「ベストセラー小説の書き方」も読んだことがあるが、二人とも小説を書く上で一番大事なことは「とにかく大量に読み、大量に書くこと」と述べている。あまりにも当然なことなので、何をいまさら、と思ってしまうが、結局はそういうことなんだろうと思う。小説を書く上で細かいテクニックはいくらでもあるが、小手先のテクニックを付け焼刃的に勉強するよりは、大量に読んで書くことにより、身体に覚えこませることが結局は一番の近道だということだろう。 



MISERY  02/10/27更新

 読み易さ 
 面白さ   

ベストセラーの「ミザリー」シリーズを書き上げた解放感から、飲酒運転で事故を起こしてしまった主人公の人気作家ポール・シェルダン。雪に埋もれた車からポールを助け出したのは、自称「一番の愛読者」を名乗る元看護婦のアニー。ベッドから起き上がることすらままならないほどの重傷を負ったポールは、アニーが与える鎮痛剤なしでは生きられない身体になってしまう。そんなポールにアニーが要求したのは、「自分だけのために"ミザリー"を書き上げること」だった。小説を書き上げたときが自分の命が尽きるときと悟るポールは、絶望に陥りながらも、アニーに買い与えられたタイプライターを一心に打ち続ける。

 キングの作品はホラーにも関わらず、あまり怖いと感じるものは多くないが、この作品は例外だ。雪に降り込められた一軒家で、無惨に折れた両足を抱えながら、狂気に触れた愛読者の看護のもとにタイプライターを叩く主人公。この状況だけでも相当に怖い。
 キングくらいのベストセラー作家になると、かなり危ないファンもいることだろう。実際に、キングにサインを求めたファンがその後ジョン・レノンを射殺したという話もあるらしい。あまり有名になるのも考えものだ。



DIFFERENT SEASONS  02/07/10更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

タイトルの通り、春夏秋冬のそれぞれをタイトルに冠した、4篇の中篇からなる作品集。

 「冬の章」以外はどれも面白いが、一番面白かった作品を選べと言われたら、映画「スタンド・バイ・ミー」のタイトルでヒットした"THE BODY"を挙げたい。12歳の少年4人が、列車事故に巻き込まれて死んでしまった少年の死体を探しに冒険に出かける、というストーリーは、成年男子にはたまらないものがある。こんなにドラマチックな体験ではないにしても、「秘密基地ごっこ」や、「探検ごっこ」は誰しも経験していることだろう。
 また、それぞれのキャラクターに自分の子供時代の周りの人間をオーバーラップさせながら読むと、さらに面白く読めると思う。作中のキャラクターでは、特にクリスがカッコいい。



CARRIE  02/06/05更新

 読み易さ 
 面白さ   

クラスメートからいじめられ、母親から虐待され、孤独な日々を送る16歳の少女キャリー。シャワールームで初潮を迎えたキャリーはその姿を級友たちから嘲笑され、深く傷つく。その場に居合わせたスーザンは罪悪感を覚え、ボーイフレンドのトミーに頼んでキャリーをダンスパーティーに誘う。つかの間の幸せな時間を送るキャリーを待っていたのは、心ないクラスメートの仕掛けた罠。みんなの前で笑い者にされたキャリーは、ついにその恐るべき「力」を使い、凄惨な復讐を開始する。

 著者の記念すべきメジャーデビュー作。
 キャリーが超能力で街を破壊するラストシーンの描写は、その光景がまざまざと浮かんでくるようで、なかなかの迫力だ。自分の貧弱な読解力でも映像が浮かんでくるというキングの描写力は、やはり凄いと思う。しかし、あまりにもキャリーが可哀相で、読んでいてちょっと辛かった。



THE GREEN MILE  01/10/25更新

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

物語の舞台は、電気椅子での死刑が執行されていた1932年のアメリカのとある刑務所。ある日看守長ポール・エッジコムのもとに、ジョン・カフィという大男の黒人死刑囚が送致される。ジョンの罪状は双子の白人少女に対する強姦殺人だが、凶悪犯らしからぬジョンの穏やかな言動にポールは興味を抱く。そんなジョンには、患部に触れただけでケガや病気を治すという特殊な能力が備わっていた。何度も奇跡を目の当たりにしたポールはジョンの無実を確信するが、看守長という立場ではジョンを死刑台から生還させることはできない。はたして無実のジョンは、残酷な電気椅子の犠牲となってしまうのか?

 毎月1冊づつ計6冊のペーパーバックの形式で出版された作品。書き下ろし作品がほとんどを占めるアメリカでは、こういった分冊形式での出版は画期的な試みらしい。
 分冊ということを意識してのことだろうが、各パートにおいて様々な伏線を張り、読者の興味を逸らすことなく次のパートへ繋いでいくという構成は見事だと思う。なんとも言えない独特な余韻を残すラストもいい。読み終えた瞬間は少し意外なラストだと感じたが、妙に後を引く読後感で、じわじわと感動がこみ上げてくる。文句なしにお薦めの1冊。



ROSE MADDER  01/10/11更新

 読み易さ 
 面白さ   

18才の時に結婚して以来14年もの永き間、夫ノーマンの暴力に耐えてきた主人公ローズは、ある日突然衝動的に着の身着のままで家出をする。誰一人として頼る人のいない遠い街で、出会う人々の助けにより幸運にも住む所と仕事を見つけ、つかの間の自由を謳歌するローズ。そんなある日、質屋で見かけた「ローズ・マダー」と題された一枚の絵に強烈なインスピレーションを感じ、その絵を購入する。一方妻の家出に怒り狂うノーマンは、現役警察官としての経験と勘を武器にローズの追跡を開始し、ついにローズの居所をつきとめる。狂人と化したノーマンからローズを救ったのは、「ローズ・マダー」に描かれたもう一人の「ローズ」自身だった。

 ストーリーとしては逃げるローズをノーマンが追う、という極めて単純なものだが、作者の筆力で最後まで飽きることなく読ませる。 ローズを追って行く段階で徐々に精神に変調を来し、次々に殺人を犯して行くノーマンの描写などは、かなり読み応えがある。ただ、絵の世界に紛れ込むラストシーンがちょっといただけない。最初から最後まで現実世界でストーリーを展開した方がよかったと思う。



THE DEAD ZONE  01/02/12更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

大学を卒業したばかりの新米高校教師ジョニー・スミス。恋人のセーラと出かけた地元のお祭りで、ふと立ち寄った屋台のルーレットに大勝したジョン。その帰り道に乗ったタクシーが事故に巻き込まれてしまい、ジョンは植物状態に陥る。誰もがあきらめかけていたそのとき、ジョンは奇跡的に息を吹き返す。4年半という長い眠りから目覚めたジョンには、相手の身体や持ち物に触れただけでその人の過去や未来が見えてしまうという超能力が備わっていた。この望まぬ能力のために、ジョンは悲劇の人生を歩むことになる。

 ホラー小説ということで、きっとおどろおどろしい内容なんだろうと思って読んだが、いい意味でこの予想は裏切られた。恋人との悲しい別れや、父親との愛情溢れる交流などがしっかりと描写されていて、かなり胸に迫る。ラストは主人公があまりにも哀れだ。ジョニーが恋人のセーラへ宛てた手紙がラストになっているが、この手紙が泣ける。2回繰り返し読んで、2回とも思いきり泣かされた。ホラー小説で泣けるとは思っていなかったので、意外な収穫だった。



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