FRANZ KAFKA 




  不条理あるいはシュールレアリズムな作風で知られるチェコの作家。
 1883年にプラハのユダヤ人の家庭に生まれた作者は、ドイツ語を学んでおいた方が将来は有利になるという父親の考えにより、チェコ語ではなくドイツ語の小学校に入学してドイツ語を習得する。プラハ大学で法律を学び、大学卒業後は保険会社に就職する。この頃から本格的に創作活動を開始し、短編小説を中心としていくつかの作品を発表するが、あまり高い評価は得られなかった。その後は結核を患い、1924年に40歳の若さで亡くなる。カフカの死後、友人によって刊行された「審判」や「城」などの長編小説が高い評価を受け、その文学的価値が再認識される。
 カフカの作品はドイツ語で書かれているため、ドイツ語が読めない場合は英語か日本語の翻訳を読む以外に方法はないが、同じ翻訳ならば、翻訳臭のプンプンする日本語よりは、ドイツ語の親戚とも言える英語での翻訳の方が読みやすいと思う。




THE CASTLE  09/08/22 更新

 読み易さ 
 面白さ   

雪深い村に測量技士として呼ばれた主人公のKは、この村を管理している高官たちが勤務する「城」を訪ねるが、道に迷ってしまい村の酒場に立ち寄る。その酒場で働くフリーダと恋に落ちたKは、フリーダを連れ出して同棲を始める。しかし、高官たちの手違いによって村に呼ばれたことを知ったKは、詳しい事情を知るために高官に会おうとするが、許可のない人間には会えないという理由で、どうしても会うことができない。仕事のないKは、フリーダの紹介で住み込みの用務員として小学校に勤務しながら、なんとかして高官に会おうと画策する。

 カフカ最長の作品にして未完の大作。無駄にダラダラと長いだけで特にストーリーらしきものはなく、どうしても「城」の高官にたどり着くことのできないKのフラストレーションが読み手にまで伝染してしまうような作品だ。この作品で描かれる「城」とは、そのまま国家権力にたとえることもできるし、権力におびえる一般人の勝手な幻想としてとらえることもできる。つまりは、読み手によってさまざまな解釈が可能な作品だということだ。ただ、この作品から感じる漠然とした不安や苛立ちなどは、多くの人に共通する感想だろうと思う。おそらく、読み手の心の奥にもそうした不安や苛立ちが隠されているということだろう。
 それにしても、これだけ長い作品を書いておきながら未完成のまま放置しておくというのもある意味ですごい。ラストを勝手に想像すると、Kは最後まで城の高官には会えず、高官たちの使用人や下男といった立場にまで落ちる、といったオチが用意されていたのではないかと思う。いずれにしろ、どう転んでもハッピーエンドはありえない。



A FASTING-ARTIST  09/08/08 更新

 読み易さ 
 面白さ   

表題作の「A Fasting-Artist」を含む4つの短編を収めた作品集。

 それにしても、カフカの書く短編はまったく意味がわからないものがほとんどだ。この短編集も、何が言いたいのかまったくわからない。その中でも、表題作の「A Fasting-Artist」だけはかろうじてストーリーらしきものがある。断食芸人として活躍していた男が、見世物としての断食芸の人気の衰えとともに次第に世間から忘れ去られ、最後には人知れず餓死してしまうというお話だ。おそらく、ものすごく深いテーマや意味があるのだろうが、残念ながら凡人の自分にはそうした崇高なテーマなどまったく読み取ることができなかった。恥ずかしながら、こういう難解な作品は自分の手に負えない。



A COUNTRY DOCTOR  09/08/08 更新

 読み易さ 
 面白さ   

表題作の「A Country Doctor」を含む14の短編を収めた作品集。

 一応短編集という体裁ではあるが、まったく意味のわからない書きかけの断片集といったほうが正確かもしれない。どういう意図で書かれたものなのか、そもそも意図などが存在するのかすらわからないような断片ばかりだ。少なくとも、自分のような凡人にはまったく理解できない。ということで、ここに何を書いていいのかすらわからない。



IN THE PENAL COLONY  09/08/01 更新

 読み易さ 
 面白さ   

一人の研究家が、とある流刑地で行われる処刑の立会いに招かれる。その処刑を執行する担当者は、処刑に使用する機械を研究家に対して熱心に説明する。それは、囚人を台座にうつ伏せに固定し、その背中に上から針を突き刺し、あらかじめ機械にプログラムされた複雑なパターンを時間をかけて自動的に囚人の身体に刻み込んでいくという残酷な拷問器具だった。処刑担当者はこの方法の正当性を固く信じているが、あまりにも残酷だという理由で現地では批判を受けていた。この処刑方法を存続させるため、現地の総督を説得してくれという依頼をこの担当者から受けた研究家は、これをきっぱりと拒否する。この返事を聞いた処刑担当者は、思いがけない行動に出る。

 とにかく、この拷問器具が強烈だ。12時間という長い時間をかけ、罪人を衆人環視のもとで見世物にしながらじっくりと殺していく。こうした機械が実在したのか、それともカフカの想像の産物なのかはわからないが、少なくとも似たような機械は存在したのだろうと思う。
 自分もこうした拷問器具に興味を持った時期があり、日本や西洋の拷問器具などを調べたことがあるが、よくもこれほど残酷な方法を考えられるものだと感心するくらいにいろんな器具が考案されていたという歴史は確実に存在する。人間が同じ人間に苦痛を与えるために注ぐ情熱というものは、その動機が動機なだけに、ものすごく陰惨で巨大な力を持つのだろう。ある意味、人間の本能のようなものなのかもしれない。



THE TRANSFORMATION  09/08/01 更新

 読み易さ 
 面白さ   

セールスマンとして毎日忙しく働くグレーゴル青年は、ある朝目覚めると自分が巨大な虫に変身していることに気付く。なんとかベッドから起き上がって出社しようともがくが、どうしても身体を起こすことができない。そうこうするうち、いつまで経ってもグレーゴルが出社してこないことを訝った上司がグレーゴルの家を訪ねてきたため、家族は大混乱となる。ようやく身体を起こして上司と家族の前に姿を見せたグレーゴルだったが、その異様な姿に皆は驚いてグレーゴルから逃げようとする。

 説明不要のカフカの代表作。大学生の頃に文庫本を買って読もうとしたが、そのあまりの翻訳臭に3ページ読んだだけで放り出したことがある作品だ。今回改めて英語の翻訳を読んでみたところ、面白かった。特に第1章が面白い。虫の姿になってベッドから起き上がることさえできないのに、いまから急いで仕度をすれば7時の電車に間に合うなどと考えるグレーゴルの姿に思わず声を出して笑った。これは読者を笑わせる作品ではないのだろうが、このグレーゴルの滑稽なまでの必死さにはつい笑ってしまう。
 しかし、これ以降はまったく笑えなくなる。いままでは自分が家族を養ってきたのに、虫に姿が変わってからは家族からも冷たく扱われ、それでも家族のことを思うグレーゴルが不憫だ。このラストも、かなり残酷というかドライな結末だが、これはこれで真理を描いていると思う。人間というものは、どんなに大事なものでも、どこかで割り切って切り捨てていかないと先には進めない。そんなことを考えさせられた。



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