JOHN IRVING 




 重厚な作風で知られるアメリカの作家。
 1942年にニューハンプシャーに生まれた著者は、高校時代にレスリング部の部長として活躍し、ピッツバーグ大学にレスリング入学をするが、その後ウィーン大学に留学し、最後は地元のニューハンプシャー大学を卒業する。学生時代から文学に興味を示し、いくつかの短編を書いていた作者は、1968年に発表した長編小説 "Setting Free the Bears"(邦題:熊を放つ)で作家デビューを果たす。1978年に発表された "The World According to Garp"(邦題:ガープの世界)が世界的なベストセラーとなり、人気作家の地位を不動のものにする。
 比較的凝った文体で独特の世界観を描き出す著者の作品は、決して読みやすいとは言えない。1冊のボリュームも相当あるため、ペーパーバック初心者にはお勧めできない。ちょっとした暇つぶしに読むよりも、じっくりと腰をすえて文章を味わいながら読みたい作家。




A WIDOW FOR ONE YEAR  05/02/16 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

作家志望の16歳の少年エディは、著名な童話作家のテッドのもとで夏休みの間アルバイトをする。やがてテッドの妻であるマリオンと深い仲になるエディ。そんな二人がベッドの上で抱き合う姿を、4歳の娘ルースに見つかってしまい、マリオンはテッドとルースを残して姿を消してしまう。それから三十数年後に、エディとルースは再会をはたす。売れない作家のエディと売れっ子作家のルースの心には、恋人としてのマリオンと母親としてのマリオンが、それぞれ消えずに残っていた。

 この作品は三部構成になっていて、第一部は文句なしに面白い。とにかく各キャラクターが生きていて、「これは久しぶりに面白さの評価で つけられそうだな」と感じるくらいに面白かった。しかし、その後がイマイチ。まず、とにかく長い。主要な登場人物は何人もいないのに、ここまでストーリーを引っ張られると、読んでいる途中でダレてくる。それに、ストーリー展開も後半になるにつれて失速している感じがする。
 ただ、このラストはいい。ラストと言うより、最後の一行がいい。このラストの一行を書きたいがために、ここまで引っ張ったのかと思うくらいに効果的な一行だと思う。ただ、このラストを味わうためには、かなりの時間を費やさないといけないのが少しだけ困る。



SETTING FREE THE BEARS  04/10/19 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台はオーストリア。公園で知り合った二人の若者シギーとグラフは、中古のオートバイに乗りあてのない旅に出る。旅先で立ち寄った動物園で、檻に入れられた動物たちを解放したいと言い出したシギーは、深夜の動物園に忍び込み、園内を偵察する。しかしシギーは事故で命を落としてしまい、旅先で知り合った少女ガレンとともにシギーの遺志を継ぐべく動物園に忍び込むグラフ。はたしてその結果は?

 作者の記念すべきデビュー作だが、さっぱりわけがわからない。文章も難解でストーリー展開も突飛だから、読んでいてもさっぱりついていけなかった。大したストーリー展開があるわけでもないが、いきなり動物園の動物を解放すると言われても困る。つまらない上にやたらと長いので、読んでいて苦痛だった。途中からは思い切り斜め読みだった。



THE HOTEL NEW HAMPSHIRE  04/07/08 更新

 読み易さ 
 面白さ   

廃校になった女子高を買い取ってホテル経営を始めるベリー一家。やがて経営に行き詰まった父親のウィンは、古い友人であるフロイトを頼って、一家を引き連れてウィーンへと移住する。しかしフロイトの経営するホテルは、売春婦や過激派左翼がたむろする危険なホテルだった。それぞれの内面に問題を抱えるベリー一家は、ホテル経営を通して様々な出来事に遭遇し、家族としての絆を深めて行く。

 とにかくキャラクター設定が凄い。長男がホモで、長女と次男が愛し合っていて、次女が小人症を患っていて、三男が耳が不自由という設定だ。その上、ストーリー展開がそれに輪をかけて凄い。事故死あり、自殺あり、殺人あり、レイプあり、近親相姦ありで、まさに何でもあり。しかし、個人的に一番強烈だったのが、熊の着ぐるみをかぶったスージーという女子キャラクター。なぜに熊の着ぐるみなのか、さっぱりわからない。
 もうここまでくると半分ギャグみたいなもので、いつストーリーが破綻してもおかしくはないくらいだが、つい最後まで読まされてしまった。結局のところ、この作品の意味することろはよくわからなかったが、現代のおとぎ話として読めばそれなりに楽しめるかもしれない。



THE CIDER HOUSE RULES  04/05/13 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公はメイン州の孤児院で生まれ育ったホーマー・ウエルス。ラーチ医師の助手として出産の医療技術を学ぶ一方、非合法の堕胎についても経験を積むホーマー。ある日堕胎のためにウォリーとキャンディという若い男女が孤児院を訪れる。ラーチ医師の薦めにより、ホーマーは孤児院を出て、ウォリーの両親が経営するリンゴ園で働くことになる。やがてウォリーが第二次世界大戦に出征し、行方不明に。一方ホーマーはキャンディと深い仲になってしまい、望まぬ子供が二人の間に出来てしまう。そんな二人のもとに、ウォリーが救出されたというニュースが舞い込む。罪悪感に悩むホーマーとキャンディは苦しい決断を迫られる。

 とにかく長い作品だ。大したイベントが発生するわけでもなく、ただ淡々とストーリーが続いていくので、途中で思い切り飽きた。しかし、ラストはよかった。ほのぼのと暖かく、でも少しだけ悲しさをにじませるこのラストはいい。キャラクターとしては、主人公のホーマーよりもエーテル中毒の心優しいラーチ医師の方が好きだ。



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