ERNEST HEMINGWAY 




 言わずと知れた、アメリカ文学を代表する文豪。
 1899年にイリノイ州に生まれた作者は、高校卒業後に記者生活を送った後、志願兵として第一次大戦に出征する。その後移り住んだパリで執筆活動を始め、売れない作家志望の青年として20代を過ごす。その後はアメリカに戻り、「老人と海」「日はまた昇る」「誰がために鐘は鳴る」など数多くの作品を発表し、55歳の時にノーベル文学賞を受賞する。晩年はうつ病に苦しみ、猟銃自殺により61年の人生を終える。
 ハードボイルドで乾いた感じのする文章は、決して読みやすいとは言えないが、このドライな文体こそが、作者の作品の大きな特徴となっている。ノーベル賞作家の作品は、話のネタにひとつくらいは読んでおきたい。




A MOVEABLE FEAST  08/05/03更新

 読み易さ 
 面白さ   

作者が20代を過ごしたパリでの回顧録。

  貧しかった青年時代の回顧録、といった趣ではあるが、それなりに美味い料理を食べて美味いワインを飲んでいたらしく、悲壮感はほとんどない。暇なときはカフェで小説を執筆する生活スタイルは、優雅でさえある。
 この作品ではいろんな作家や詩人などとの交流が描かれているが、中でも一番多くのページ数を割いているのがフィッツジェラルド氏のこと。フィッツジェラルド氏の生前には深い親交があったことがうかがえるが、この作品では、フィッツジェラルド氏はかなり情けない人間として描かれている。とりあえずこの作品でわかったことは、フィッツジェラルドのアルコール依存は妻のゼルダに振り回された結果であるということ。性格破綻者ともいえるゼルダのことを、フィッツジェラルドがいかに深く愛していたのかがわかる。フィッツジェラルドの作品を何冊か読んでからこの作品を読むと、一層興味深く読むことができると思う。



TO HAVE AND HAVE NOT  07/04/15更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公のハリー・モーガンは、フロリダで釣り客にボートを貸して生計を立てていた。しかし、一人の釣り客に料金を踏み倒されたことが原因で、たちまちのうちに生活に困窮する。なんとかして金を作ろうと考えたハリーは、キューバとフロリダ間の密輸と密航に手を染める。さまざまな危険に遭遇し、片腕までも失うが、他に生活の手段がないハリーは、危険を覚悟で密輸と密航の仕事を続ける。そんなハリーに持ちかけられた次の仕事は、銀行強盗を企てるキューバ人グループの密航という、これまでで一番危険な仕事だった。

 ヘミングウェイの作品の中では、比較的わかりやすくて面白い作品だと思う。主人公のキャラクターがヘミングウェイ独特のハードボイルドな文体によくマッチしていて、ストーリー全体がよく締まっている。さすがはヘミングウェイ、こういうキャラクターを書かせたら彼の右に出る者はいない。
 タイトルにもあるように、富裕層と貧困層との格差をテーマとして書いているのだろうと思うけど、そのあたりのことは気にせずに、ハリーのハードボイルドなカッコよさを読むだけでも十分に楽しめる。というか、文学的な小難しいことを考え始めると、ヘミングウェイの作品はとことこん難しくなってしまうので、楽しめるところだけ楽しむのが、自分のような高尚な文学的センスを持っていない人間としての正しい読み方だと思う。



ACROSS THE RIVER AND INTO THE TREES  07/03/17更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は第二次世界大戦後のイタリア。元アメリカ陸軍大佐のリチャードは、若き恋人のレナータに会いにベニスを訪れる。51歳のリチャードと19歳のレナータは年齢差を超えて愛し合うが、お互いの将来を考えて別れることを決意する。

 リチャードがぐだぐだと戦争の思い出話をレナータに語り、その合間にお互いが "I love you" を連発してストーリーが進んでいくというなんとも退屈な作品。とにかく "I love you" が多すぎて辟易する。51歳のオヤジが19歳の女子に鼻の下を伸ばして「愛してる」なんて語りかけるシーンを想像するだけで鳥肌が立つ。こういうのを世間ではバカップルというのだろう。
 ヘミングウェイの作品は、自分には理解できないくらいに高尚でつまらない作品が圧倒的に多いけど、作品のタイトルだけはどれもカッコいい。この "Across the river and into the trees" というタイトルも激しくカッコいいが、またしてもタイトルにだまされてしまったようだ。



MEN WITHOUT WOMEN  06/05/17更新

 読み易さ 
 面白さ   

18編から成る短編集。

 やっぱり何回読んでも、ヘミングウェイの短編はよくわからない。こんな書きっぱなしの小説のどこが面白いのだろう。などと言いつつも、ヘミングウェイの短編を読むのは、何からしら心に引っかかるものがあるからだろう。それは、孤独の中の心地よさだったり、ちょっとしたおかしさだったり、何気ない会話に見える心理だったり。実際のところは、あまりにもストーリーがつまらないから、無理にこうしたものを見つけようとしているだけなのかもしれないが。
 この短編集では "Fifty Grand" がなかなか面白かった。ボクシングをテーマにした作品で、オチもしゃれている。ヘミングウェイの作品には闘牛シーンがよく出てくるが、ボクシングシーンもいけるんじゃないかと思った。



THE SNOWS OF KILIMANJARO  06/05/13更新

 読み易さ 
 面白さ   

表題作を含む18編から成る短編集。

 ヘミングウェイの短編は本当にわけがわからない。短編というよりは、むしろ散文詩を読んでいる感じに近いだろうか。唐突に終わるラストにもなじめない。
 ただ、"Big Two-Hearted River" だけはなかなかよかった。男が一人で川原でキャンプして釣りをする、というだけのストーリーだが、読んでいてなんとも気持ちがよかった。孤独だけれど自由、という感覚が心地いい。アウトドアが大好きな人にはツボだと思う。特にアウトドアに興味がなくても、男子ならばこの心地よさはきっと理解できると思う。



THE TORRENTS OF SPRING  06/03/25更新

 読み易さ 
 面白さ   

ある日突然妻子に逃げられたスクリップスは、住みなれた街を離れてシカゴへと旅立つ。旅の途中で見つけたポンプ工場で職を得たスクリップスは、レストランで知り合ったウェイトレスとその日のうちに結婚し、新しい生活を始める。その一方、ポンプ工場の責任者であるヨギのストーリーも並行して展開されるが、よくわからないままにグダグダとストーリーが進む。

 まったくわからなかった。スクリップスとヨギのストーリーは結局最後まで絡んでこないし、ラストも意味がわからない。裏表紙を読んでみると、どうやらこの作品は別の作品のパロディらしい。ということは、オリジナルの作品を読んでいないと意味がないということか。貴重な読書時間がすべて無駄に終わってしまって、若干腹立たしい。
 唯一の発見は、ヘミングウェイとフィッツジェラルドの間に親交があったということ(作中でフィッツジェラルドがヘミングウェイを訪ねてきたことが書かれている)。破滅型の二人だけに、何か気心の通じるところがあったのかもしれない。



FOR WHOM THE BELL TOLLS  06/03/10更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は内戦に揺れる1936年のスペイン。主人公のアメリカ青年ロバートは、ファシストと闘うゲリラ部隊とともにこの内戦に参加する。ゲリラ部隊に助けられ、彼らと行動をともにする美少女マリアとたちまち恋に落ちるロバート。しかし彼には、鉄橋の爆破という使命が課せられていた。ゲリラのメンバーとの友情やマリアへの愛情に揺れながら、ロバートは自らの死を予感しつつ、鉄橋の爆破へと向かう。

 どうせヘミングウェイのことだから、わけのわからない小難しい作品なんだろうと思って読んでみたところ、意外にも面白かった。
 戦争と悲劇の恋愛というテーマにおいては"A Farewell to Arms"と同じだが、あの作品ほど描写が淡白ではないところが大きく違う。悩めるロバートの心中を覗き見ることができるため、読んでいても感情移入しやすい。人殺しの嫌いなゲリラ、残酷非道なゲリラ、怠け者のゲリラなど、ゲリラのメンバーたちも個性的に描かれていて、こちらも読んでいて面白い。
 しかし、一番魅力的なキャラクターはやっぱりヒロインのマリアだろう。純粋で強くて可愛らしいマリアには、ロバートでなくても惚れる。



A FAREWELL TO ARMS  04/11/18更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は第一次世界大戦中のイタリア。イタリア軍の士官として前線で任務にあたるアメリカ人のフレデリックは、イギリス人の看護婦キャサリンと恋に落ちる。いつまでも終わらない戦争に嫌気がさしたフレデリックは前線から逃亡し、キャサリンとともにスイスへと脱出する。つかの間の幸せの後に二人を待っていたのは、あまりにも悲しい結末だった。

 主人公の一人称でストーリーが展開していくが、フレデリックがあまりにも淡白すぎる。綴られるのは客観的な情景描写と会話だけで、フレデリックの内面の描写がほとんどない。フレデリックが危うく銃殺されそうになる場面でさえ、客観的な描写だけで淡々と描かれる。しかしその分、ラストでフレデリックの素直な感情が描かれる場面では、ほんの少しだけ心を打たれた。
 いずれにしろ、戦争と悲劇の恋愛というウェットなテーマをここまでドライに描くというのも、ある意味すごいことなのかもしれない。



WINNER TAKE NOTHING  04/06/13更新

 読み易さ 
 面白さ   

17編の短編から成る作品集。

 さっぱり理解できなかった。何を言いたいのか、テーマは何なのか、そもそもテーマ自体があるのかすらもわからない。この作品のタイトルが "A winner takes nothing" あるいは "Winners take nothing" ではなく、なぜ "Winner take nothing" なのかという疑問と同じくらいわからない。ということで、感想も書きようがない。



THE SUN ALSO RISES  02/12/24更新

 読み易さ 
 面白さ   

パリに住むアメリカ人新聞記者のジェイクは、休暇を利用して作家の友人達とスペイン旅行に出かける。旅の間に、ジェイクの永年の恋人であるブレットを巡って、友人同士の間でいさかいが起こる。スペインの開放的な空の下で、それぞれの思いが激しくぶつかり合う。

 とにかく会話部分の描写が難解。何を言わんとしているのかがよくわからないので、まったく楽しめない。それに加えて、登場するキャラクターもまったく好きになれない。特にヒロイン役のブレットが最悪だ。彼女の放埓ぶりは読んでいて頭にくるし、それを許してさらに増長させてしまう周囲の男性たちにも腹が立つ。この作品のどこに小説としての面白さを見出せばいいのか、なぜにこんな作品が名作として賞賛を得ているのか、理解に苦しむ。読む人により、極端に好みの別れる作品だと思う。



THE OLD MAN AND THE SEA  02/12/06更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公はある老いた漁師。不漁続きの老人ははるか沖合まで船を出し、巨大なカジキマグロを釣り針に捉える。3日間の死闘の末、ついにカジキマグロを仕留めた老人。しかし安心する間もなく、カジキマグロの血の匂いに群がってくるサメとの闘いが老人を待ち受けていた。

 著者の代表作ということでかなり期待して読んだが、どこで感動すればいいのかよくわからなかった。決してつまらないわけではないが、それほどありがたがるほどのものでもないと思う。少なくとも、自分のツボからは遠く離れた作品だということだけは間違いないと思う。



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