THOMAS HARRIS 




 サイコスリラー小説を得意とするアメリカの作家。
 テキサス州生まれの作者は、地元の大学を卒業後、ヘラルド・トリビューン、AP通信社の記者を経て、1975年に "BLACK SUNDAY" で作家デビューを果たす。非常に寡作な作家で、長編小説はデビュー作を含めて "RED DRAGON" (邦題:レッドドラゴン) "THE SILENCE OF THE LAMBS" (邦題:羊達の沈黙) "HANNIBAL" (邦題:ハンニバル)の4作のみだが、そのいずれもが超話題作となり、高い評価を得ている。2作目以降は狂気の医師、DR. HANNIBAL RECTER を物語の主題に据えているため、レクター博士3部作と言えそう。
 文章の難易度としてはかなり高いので、読み進めるにはかなりのストレスを感じる。充分な鍛錬を積んでから挑戦すべき作家。




HANNIBAL  02/02/02更新

 読み易さ 
 面白さ   

レクター博士脱走から7年後。整形手術を施し、優雅な脱走生活を送るレクター博士。その一方で、博士に瀕死の重傷を負わされ復讐に燃えるアメリカの大富豪メイスンが、その資金力と政治力にものを言わせて、博士を生け捕りにし、飢えた豚の餌にするという戦慄の計画を実行に移す。メイスンと手を組むアメリカ当局上層部クレンドラーの罠により FBI を休職させられたスターリングは、レクター博士をおびき出すためのおとりにされてしまう。互いに不思議な力で引き寄せ合うレクター博士とスターリングの運命は?

 前作は本作のイントロに過ぎなかったのでは? と思わせるような内容。前作が本作に比べて劣っているという意味ではなく、前作で提示された暗示的な伏線が、本作によってすべて解き明かされるという構成になっているからだ。それにしても、このラストには驚いた。決してしょぼいオチだとかずるいオチだということではなく、本当に意外なオチだった。
 それにしても、レクター博士の次回作はあるのだろうか。本作を読んだ限りではこれで完結という気がする。いずれにしろ、極端に筆の遅い作者のことだから、次回作がもし出るとしてもまだ何年も先のことだろう。



THE SILENCE OF THE LAMBS  01/06/30更新

 読み易さ 
 面白さ   

若くて太った女性ばかりが誘拐され、皮を剥がれて遺棄されるという猟奇殺人事件が連続して発生する。捜査の指揮をとるクロフォード警部は、「バッファロー・ビル」とあだ名される犯人像を掴むために、FBI の女子研修生 クラリス・スターリングをレクター博士のもとへと向かわせる。スターリングに興味を持ったレクター博士は、事件についての暗示的なアドバイスを与える。そんな折、アメリカ上院議員の一人娘キャサリンがバッファロー・ビルに誘拐されるという事件が起こった。レクター博士との会見を重ねて犯人像を絞り込んで行くスターリングはキャサリンを救出することができるのか?

 「ハンニバル・レクター」の名前を世に知らしめた作品。とにかく難しい。文章自体の難しさに加えて、レクター博士とスターリングのやり取りがあまりにも抽象的な会話なので、何を言わんとしているのかがよくわからない。作品の後半部分でレクター博士が脱走に成功して、スターリングとクロフォード警部に宛てたレクター博士の手紙がラストを締めている。この手紙により、次作もレクター博士をメインに据えた作品になるであろうことを匂わせている。



RED DRAGON  01/06/15更新

 読み易さ 
 面白さ   

満月の夜に平和な家族が惨殺されるという事件が続けて発生する。サイコパスによる事件と見たFBI は、殺人犯の心理が読めるという特殊な能力を持つ元 FBI 捜査官のウィル・グラハムに捜査協力を要請する。手掛かりのない事件に行き詰まったグラハムは、自らが逮捕した獄中のシリアル・キラー、レクター博士にこの事件の犯人像についての意見を求める。グラハムの質問に答える一方で、新聞広告という手段により殺人犯にグラハムの住所を伝えるレクター博士。生命の危機に晒されながらも、その特異な能力でグラハムは徐々に犯人を追い詰めて行く。

 この作品により、「ハンニバル・ザ・カンニバル」の異名を持つレクター博士が一躍有名になったわけだが、本作でのレクター博士はあくまでも重要な脇役の一人に過ぎず、決して主人公ではない。この作品の犯人も相当に強烈なキャラクターであるにも関わらず、単なる脇役のレクター博士がそれ以上に読者からの支持を受けのたが不思議な気がする。
 本作では合計で13人もの人間が殺害されてしまうが、凄惨な殺害シーンよりも各人物の心理描写に重点を置かれているため、特に残酷といった読後感はない。あっと驚くラストが用意されていて、最後まで飽きることなく読むことができる。



BLACK SUNDAY  01/06/05更新

 読み易さ 
 面白さ   

アメリカのイスラエルへの武器供与に強く反発するパレスチナゲリラの"BLACK SEPTEMBER"。このゲリラ集団は、アメリカ大統領が観戦するスーパーボウルをテロの標的に定める。8万人を超える収容人員を誇る巨大スタジアムを、上空からプラスチック爆弾で襲撃するという戦慄の計画を練り、着々と準備を進める"BLACK SEPTEMBER"。一方、その計画をキャッチしてなんとか阻止しようと奔走するアメリカ当局とイスラエル工作員。巨大スタジアムの上空で繰り広げられる壮絶な空中戦。はたして勝利はどちらに?

 文章の難しさもあって、途中はちょっとダレ気味だったが、さすがにラストは読ませる。このラストだけでも一読の価値のある作品だと思う。
 それにしても、ソ連の崩壊後、世界唯一のスーパーパワーとなってしまったアメリカは、テロの格好の標的になってしまうため、ちょっとかわいそうな気がしないでもない。軍備を増強すればするほどテロの手口も巧妙になっていく、というイタチゴッコも皮肉なもの。これも超大国に課せられた宿命ということだろう。



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